第82話:水着
『やめろよ。こんな雰囲気の中で、そんな大事なところ、見れないよ。』
「そっか、見ても、好きでいられる自信ないんだ〜。」
『ちゃかすなよ。自信ないとか、そんなんじゃない。
そんなレベルで遥を愛してるんじゃない。
遥が、俺を本気で好きになってくれた時、俺の愛を受け入れてくれた時に、
そうしたいんだよ。
だから、こんな俺の気持ちをテストするようなのは嫌だし、無意味だよ。』
「そっか。分かったよ。海、行こうか。」
『やったね! ほらさ、この雑誌に載ってるこれなんていいじゃん!』
「今話してた真剣な態度と、全然ちがうんだけど・・・。」
『決めた。これに似てるの買いに行こう! 俺、プレゼントするからさ。』
「聞いてないし。こんな小さいの・・・。ねぇ? 本気で私の気持ち考えてくれてるの?」
『ジョーダンだよ。俺の好み言っただけ。
じゃーこれなんて、割と大きいし、隠れるんじゃないの?』
「こんなの上から見たら、分かっちゃうでしょ。ビキニなんて、落ち着かないよ。
泳いでて取れちゃったら、海水浴どころじゃないし。
ワンピースしかありえなーい。」
彼は、私の手を引っ張って、だだっ子のように、
『行こう、行こう。見に行くといいのあるかもしれないしさ。』と、繰り返しました。
結局、強引に彼の手に引かれて、デパートに・・・。
販売時期も終わりのせいか、安くなっていて、中には半額の札も。
見ているうちに、楽しくなってきて、
胸があれば、こんなの着て楽しく遊んでいたんだろうな〜と、思ったり。
なかなか2人の意見が合わずに、何店も回ることに。
たまに、彼から試着の要請。こんなの着れるわけないっしょ。拒否〜。
どうも、彼の頭には、ビキニ以外有り得ないらしい。
私は、何だか、諦めモードに。
「こんだけ見ても無いなら、スクール水着でいいじゃん。」(冗談)
『えっ? なんかそれって、想像すると、逆にそそられる〜』
「ば〜〜〜か!!」
そして、私も根負け気味になり、ビキニもありかなっと。
気持ちを切り替えて見ると、案外、包み込むようなのもあったりして・・・
「これなら、ビキニでもいいよ。」
『ん〜〜。俺の好みじゃないけど・・・もう仕方ないか。』
「あたしも、折れたんだから、妥協してくれないとね。」
『ん〜それじゃ〜。これ!』
やっと、決まった。
『遥は気にし過ぎだよ。
俺、友達にだって、胸張って、本当のこと言って紹介できるけどな。』
「分かってないよ! 全然、分かってないよ。ばか!」
でも結局、買ってもらったからには、行かないわけにいかないな〜。
私の脳裏には、丸山さんとの記憶が甦っていました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)