第81話:新しい彼氏
それから、私は、横浜でまた、派遣の仕事を始めました。
事務の仕事のように、頭だけ疲れてイライラがつのるのは私の性格に、
向いていないので、男勝りに、また工場の仕事です。
毎日、機械を操って、物作りで汗を流す方が、私には合っています。
えっ? 恋愛はしてないのかって?
相変わらず、付きまとってる男が1人。そう、池田君。
毎週休みの度に誘われて、遊んでいるうちに、情が移ったというか、
結局、彼の強引な希望通り、付き合いだしてしまいました。
池田君と付き合いだして、初めての夏。
私のうちに遊びに来て、テレビを見ていた池田翔太は、言い出しました。
『明日の休み、どっか行かない?』
「どっかて? どこ?」
『ん〜???』
「海水浴に行きたいなら、行きたいって言えばいいじゃん!」
『いや、そんなつもりじゃ・・・』
「テレビに、海水浴の様子が写ったから、言い出したって、バレバレ。
だけど、私、水着になるの嫌だからね。
誰かかわいい子でも誘って、海でもプールでも行ってくれば!」
『遥じゃないと、意味ないんだなー。水着も、うまく着れば分かんないんじゃないの?』
「・・・。」
『遥ってさ、スタイルいいじゃん。かわいいしさ〜
砂浜とか連れて歩きてーんだよ。ぜってい、みんな見るしさ。』
「バッ・カ・じゃないのー!それに、そんな自慢大会興味無いし、
あたしに、水着なんて、対象外だし。」
『今から、水着、買いに行こうよ。』
「ハァ? 私の胸の悩みのこと、分かってないの?」
『分かってるつもりだよ。』
「ん〜、ん〜、分かってないよ。どれだけ、悩んでいるのか。」
『でもさ、丸山とは、海に行ったんだし、俺と行ってくれてもいいじゃん。
今更だけど、俺、遥がどんな胸していようと、好きな気持ちは変わらないし、
中根にだって負けない。』
「そういうことは、見てから言わないと、後悔するよ。
いい機会だから、思い切って、今見せるよ。このまま付き合って、私も本気で
翔太のこと好きになったら、怖くて見せれなくなるし、今ハッキリさせれば、
これから先の不安も解消できるしね。
かっこいいこと言っちゃったからって、無理しないで正直に言ってよ。
中途半端な気遣いが一番傷付くんだからね。」
私はこう言うと、前に、職場の山口さんに言われた事を思い出しました。
『相手が気に掛ける前に、自分から言ちゃうと、気が楽だよ。相手がどう思おうとね。』
ニュアンスは違うけど、お互い本気になる前に、気になってることをオープンにした方が
気が楽くなると思って、実践しようとしていたわけです。
軽い感じで、翔太には言いましたが、実は心臓、バクバクでした。
思い切ってTシャツを脱ごうとしましたが、そんな私の行動を翔太は、止めました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)