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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
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第8話:カラオケ

私と中根君は、せっかく食券を頂いたので、食堂に行きました。


セルフサービスで、勝手が分からなかったのですが、


なんとか前の人のをまねて、定食を食べる事が出来ました。

 

食堂はかなり広いのですが、人も凄く多く混み合っています。


耳をすませてみると、日本語以外の言葉も行き交っていました。


数カ国のかなり多くの外国人が、働いているようです。



食堂を出て、集合場所に行こうとすると、中根君が帰ると言い出しました。


どうやら、カラオケや宴会は、苦手なようです。


私も、あのタイミングだったので、行く気になったのですが、


あとで考えてみると女の子が1人だけには抵抗を感じました。



集合場所に着くと、池田君、小林君、丸山さん、山川さん が、居ました。

 

『おせーよ! 何してんだよ!40分も待っちまったよ。』


「えっ!そんなに?」


『連絡のしようがないから、待つしかないだろ! メルアドか、番号教えろよ。』


怒ってるような池田君の勢いに負けて、教えることに。


結局、全員の交換をすることになってしまいました。


『もしかして、めし食ってた?』


「うん。」


『カラオケ行くのに?』


「あっ、そっか!」


『まっ、いいけどさ。中根は?』


「カラオケは好きじゃないんだって。」


『あいつ、とぼけやがって。』


「えっ?」


『あー、こっちの話。岩田は、人が足りなくて、


そのまま仕事になったから、来れないってさ。』


「そーなんだ。いきなり仕事なんて大変だね。」  


私たちは、歩いて駅の近くのカラオケ店に向かいました。



カラオケ店に入ると、みんな食べ物の注文を始めました、それも結構沢山。


(おいおい、会計はどうするの? 私も食べなきゃ良かった。)


『飲み物は、どーする? 全員ビールでいい?』


「待って、私は、飲めないから、レモンスカッシュにして!」


『なんだよ。まじかよ。酔っ払って欲しかったんだけどなー。』


「ごめん。ホントに飲めないの。」


(嘘でした、あの日以来、男の人の前では、お酒は飲まない事にした私・・・。)


『それじゃー。みなさん!


あのうっとうしい面接をよくぞ耐えて、合格しましたー。


明日から、少しだけ頑張ってみましょうかね! 乾杯〜!』


乾杯をしてから、配置先や仕事の話で盛り上がり、


料理も来て食べ始めたこともあって、約1時間半は、


マイクを持つ人はいませんでした。


(こんなの、はじめてだー!でも、いいのです。


どちらかと云うと、私は、「歌いたくない派」ですから。)


『そろそろ、誰か歌わない?』 


ついに、山川さんが、言い出してしまったー。


『それじゃー、早園麻紀ちゃん。行ってみよーう!』 


池田君とつるんでる小林君が、言いました。


えっ! みんな、私を見ている?


『分かってないの? 青山さん。


歌手の早園麻紀ちゃんにそっくりじゃん。


なんか歌ってよ。』と、小林君。


(早園麻紀は、兄貴が大好きだったので、知らなくは無いけれど、


自分が似てると言われるとは・・・。)


『何やってんの? 歌ってよ!』と、言いながら、


池田君が隣にやって来て、私の髪を掴んで持ち上げたー!


(何やってんの!!は私のセリフよー!!)


『すげー似てる。』とは、小林君と山川さんの声。


(あー、あの髪型を再現してみたのね。そっか。


そっかじゃーなーい! 会ったばかりで、なれなれしいんだよー!!)


「そこまで、言われたんじゃ、早園麻紀さんの〔夏が来た〕歌いまーす!」


私が歌いだすと、池田君と小林君がノリノリで、踊りだしました。


どうやら、この歌のPVの内容を再現しているとのこと。


2人は、大の早園麻紀ファンで、私が似ているということで、


面接の時に私を見ていたのでした。



私が終わると、隣から順番に歌っていきました。


みんなすんなりカラオケに来るだけあって、すごく上手でした。


そしてこのあと、私はちびるくらい、びっくりしたのです。


「丸山さんの番だよ。 たしか、趣味 バンドだったよねー、聴きたいなー!!」

 

『しょうがないか・・・。』


「わーっ!この曲は、私の大好きなバンドのレインボー!!」


「なっ、なんて、うまいの! まるで、本人が、歌ってるみたいー。」


周囲からも、『すげー』の声。


今の今まで、無口で存在感が薄かった丸山さんが、


マイクを持ったら、スターになっちゃった。

  

「もーほんと、びっくり! 一体この集団は なんなのよ! 


世の中のレベルは、こんなに進化していたのかー。」 



そして、また私の順番が回ってきました。


今度は、自分の好きな歌を思いっきり歌いました。


そしたら、みんながやけに感心して、盛り上げてくれました。


おのおの自慢の歌を披露して、あっという間に、時間は過ぎて行きました。


そして、4時間が経ったところで、おひらきとなりました。



立ち上がる間際に、隣に居た丸山さんが、耳元で、


『案外、歌、うまいじゃん。』


と、言ってくれました。


大好きなバンド・レインボーの曲を、まるで本人かのように歌って、


すっかり聴き惚れていた私は、その言葉に何か熱いものを感じていました。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)

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