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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
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第75話:遺書

有料道路を抜けるとすぐに道が分かれています。


私は、絶壁のある展望台公園の方へ向いました。


少し行くと駐車場が有り、中へ入いろうとしたところ、パトカーが止まっていました。


あとで聞いた事ですが、兄が警察に連絡したので、警戒のために来ていたものでした。


私が病院から居なくなってすぐに母が来て、手帳に書かれた遺書を見つけていました。



「20歳になって、お父さんが急死して、悲しみも癒える間もなく、乳がんになって、


否応無く手術をして、その傷跡に悩んで、結婚の約束をした彼も離れて行って以来、


ずっと辛かったよ。 


みんなのお陰で何とか立ち直ったけど、本当は嫌な事ばっかりで、毎日逃げ出したかった。


ある日、隆志が現れて、結婚なんて言葉も忘れていた私に、一緒に暮らしたいと、


言ってくれました。


そして、結婚に向けて、やっと、幸せな日々を送ってきたのに、


何で? 何であんな事故が起きるの?


大切な赤ちゃんまで、私の不注意で死なせてしまって、もう限界だよ。


もうこれ以上苦しむのなんて、嫌だよ。 無理だよ。


これから先、生きてても、いいことなんてないよ。


お母さんも辛いのに、苦しめるような事ばかりして、本当にごめんね。


今まで、我ままな私を、育ててくれてありがとう。


楽しい事もいっぱい有ったし、充実した成人を迎えられて、産んでくれたことは、


感謝しています。


家族の思い出、いっぱいあったね。その一つ一つ、決して忘れてないよ。


もう一つだけ、たかこの我まま許してください。



お兄ちゃん、いつも助けてくれて、ありがとう。


いつも優しくしてくれるのが分かってて、逆らってばかりの私でごめんなさい。


本当に辛い時、いつも気付いてくれて、傍に居て見守ってくれたね。


お兄ちゃんが、居てくれたお陰で、今まで生きてこれました。


隆志と別れたほうがいいというお兄ちゃんの気持ちも、ちゃんと受け止めているから、


私の気持ちの整理が、自分でつけれないだけだから・・・逆らってごめんね。


最後にもう一つ、怒らせちゃうの承知で、先に逝きます。



隆志には、あえて何も言いません。


きっと、分かってくれると思うから・・・


ただ、一言。 愛してるよ。」


この遺書を読むと、母は慌てて、兄に連絡したそうです。


兄は、それを聞くと、すぐに病院に飛んで来て、これを読むと、


行き場所の心当たりを聞くために、池田君にも連絡して来てもらい、


アパートに行ったそうです。


兄が隆志のバイクが無いのに気が付き、そして、以前行った海岸で、私のつぶやいた


言葉を思い出して、あの場所だと思い、警察に捜索依頼をしたそうです。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)



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