第70話:交通事故
私は、とっさにブレーキを掛けましたが、どう考えても間に合いません。
私は、反射的に空いている対向車線に、少しでも避けようと、重心をかけた時でした。
そこには、運悪くマンホールが有り、ズルっと滑るとそのまま倒れて、
対向車線へと滑って行きました。
バイクと一緒にいると危険なので、何とか離れようとしましたが、
右足がバイクの下にはまってしまい、抜けませんでした。
次の瞬間、なんと!目の前に乗用車のヘッドライト
の明かりが近づいてきました。
私のバイクの滑りは、止まりません!
乗用車は、ブレーキを掛けていましたが、
「ガチャーン!」 衝突しました!
バイクの前輪が、乗用車のフロントの下に潜り込み、
私の身体が、車のバンパーにぶつかりました。
肩から胸にかけて、激痛が走りました。
すぐに、離れようとしましたが、右足が抜けません。
乗用車から、男の人が降りてきて、『大丈夫ですか?』と、
声を掛けてくれましたが、足が抜けないのが分かると、
『これは、バックしたほうがいいな。』
と言い、車に乗り込み、バックを始めました。
バイクが、引っ掛かり、削れるような音がしました。
バイクが動いて、足に当たるのが怖かったのですが、
なんとか、車の下から、バイクが出ました。
バイクを少し持ち上げると、足は簡単に抜けて、立ち上がる事が出来ました。
車の人が、携帯電話で警察に電話を始めました。
私は、道路に出てきた人が、座り込んでいて動かないのが、
心配だったので傍に行ってみました。
「大丈夫ですか? 」
『立てねぇんだよ!』
「でも、ここに居ると危険なので、端に行きましょう。」
乗用車の男の人が来て2人で、抱えて移動させようとしました。
『痛えよ!』 と言われながらも、2メートルくらい横に移動出来ました。
乗用車の男の人が、『救急車を呼んだほうがいいな。』
と、携帯電話で119を掛けました。
私は、段々と寒くなって来て、身体が震えてきました。
乗用車の男の人が、気を利かせてくれて、傘を差し出してくれました。
でも、私は、道路に出てきた人が心配で、その人と傘に入りました。
『ねーちゃん、いい人だな。俺と付き合えよ。』
と、訳のわからないことを言い、私が当事者なのが分からないほど、
かなり酔っ払っていることが分かりました。
サイレンの音が近づいてきて、救急車がやって来ました。
道路に出て来た男の人が救急車に運ばれて、怪我を調べられているようでした。
少しすると、警察官がオートバイで来て、救急車に行きました。
また少しすると、パトカーと、屋根に事故と表示板が出るワゴン車が来ました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)