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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
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第68話:選択

お父様は、続けました。


『隆志は、意識も戻っていないが、たとえ戻っても、もう、歩けないし、


まともな仕事なんて出来はしない。


これから、2人が結婚して、子供が生まれても、車椅子ならともかく、


寝たきりになってしまったら、幸せな生活が送れるとは思えない。


どうだろう、ここは、良く将来のことを考えて、


別れた方がいいんじゃないかと思うんだが・・・。


子供は、もちろん産んでもらってかまわないし、


隆志の子として、こちらで引き取って、きちんと育てます。』


私は、思いもしなかったお父様の言葉に、返す言葉が有りませんでした。。


しばらくすると、お父様は、車でお母様を連れて、


栃木へ帰って行かれました。


お二人が居なくなっても、私は、ずっと、お父様の言葉を考えていました。


確かに、結婚前だから、将来のことを考えて、別かれるのは自由です。


でも、それでは、私の病気の事を知っても、結婚したいと言ってくれた


隆志を、裏切る事になるし、そんな計算で簡単に割り切れるものではありません。


しかし、隆志の意識がこのままずっと、回復しなかったら?


意識が回復しても、ずっと寝たきりだったら?


このことが、重く私にのしかかってきました。


いくら考えたところで、答えは出てきません。


だって、私1人で決めることじゃないし、


相談すべき相手は、意識が無いのですから・・・。


私は、兄に相談する事にしました。


電話をすると、すぐ来てくれて、話を聞いてくれました。


兄も、その事については、色々と考えていたようでした。


そして、兄の口から、ハッキリとした口調で、「別れなさい。」の言葉が・・・。


私が、期待していた言葉とは違うものでした。


いつも、私の期待通りの言葉を、言ってくれた兄。


親とけんかをしても、いつも私の味方をしてくれた兄。


一瞬、私の脳裏には、「裏切られた」との思いが、浮かびました。


「もういいよ! 兄貴は、分かってくれると思ったのに!」


私は、ヒステリックになり、兄を追い帰してしまいました。


もちろん、分かっています。


みんなが私の事を考えて別れた方が良いと、言ってくれているのは。


でも、人間って、感情抜きに物事を進めるのは無理な生き物。


私は、お腹に隆志との赤ちゃんがいる以上、別れる訳にはいかないのです。


無論、産まれても、隆志のご両親に、お渡しする気などありません。


隆志が、あれほど欲しかった私との子、


何が有っても、2人で育てるって、約束したんですから・・・。


そして、次の日、いつものように午後2時頃病院に行くと、お母様も来られました。


隆志の意識は、この日も戻らぬままでした。


結局、事故が起きてから、1週間が経っても、隆志の意識は戻りませんでした。


先生の方からも、脳神経外科的にも異常は無いので、意識が戻らない理由が


分からないと言われて、また、意識がいつ回復するのか、


明日なのか、1ケ月先なのか、1年先なのか、それ以上先なのか・・・


必要な準備を考えておいた方が良いかもしれませんとも。


日曜日になり、お父様が来られましたが、私は、また、


別れ話をされるのではないかと、気にして接していました。


お父様は、私の気持ちに気付かれたのか、その事については、話されませんでした。


しかし、お父様の口から、また、ショックな事がお話がありました。


『隆志を、栃木の実家近くの病院に移す。』と、いうのです。


ご両親のご苦労からすると、当然のことなのですが、


また1つ、私の悩みの種が増えました。


「隆志、お願い、目を覚まして!」


(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)



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