第54話:池田君との約束
ある日、食堂で、池田君が話し掛けてきました。
『あしたの約束、忘れてないよね?』
「えっ? 早園麻紀のライブ、あしただっけ?」
『そうだよ! 行けるよね!』
「うん! 大丈夫、行こう!」
『良かったー。最近、中根と仲いいから、行けないと言われるかと思ったよ。』
「約束は、ちゃんと守るよ!」
『忘れてたくせにー。』
「忘れてないよ。この前だって、話してたよね。中根君?」
隆志が、少し曇った顔で、答えました。
『あ〜、楽しんできなよ。』
「ありがとう! じゃー池田君、どうしたらいい?」
池田君は、しっかりと予定を考えていたようで、朝10時の待ち合わせとなりました。
ライブは、夕方からなのに、いったいどうするつもりなのか・・・?
それと、おかしな注文が・・・ジーンズをはいて来てだと。
別に、それは、大したことじゃないので、気軽にOKしましたが・・・。
次の日に、待ち合わせの場所に行くと、満面笑みの池田君が待ってました。
「おはよー!」
『やったー! 青山とまる1日、2人きりのデートだ!』
「デートじゃないでしょ? ライブ行くんでしょ? そんなに、はしゃぐかな〜?」
『はしゃぐさ。初めて会った時から、好きだって言い続けてきて、
大好きな麻紀ちゃんのライブに、一緒に行けるんだぜ。』
そして、彼に連れられて行った場所は、コスモワールド遊園地でした。
「早くから待ち合わせするから、どこに行くのかと思ったら、遊園地ですか〜。」
『遊園地、嫌い?』
「ん〜ん、好きだよ。」
『そうだよね。この前も、楽しそうだったから。
俺さー、好きな人と観覧車に乗って、キスするの夢だったんだ。』
「あ、そっ! でも、勘違いしないでよね。私は、あなたの彼女ではありませんから。
変な事しようと思ってるなら、帰るからね。」
『違うよ! そんなことしないよ。 一緒に楽しんでくれれば、それでいいんだ。』
彼は、子供のように私の手を引き、次々と乗り物に乗りました。
隆志に対して、ちょっと後ろめたい気持ちも有りましたが、
私も、遊園地は好きで、楽しく過ごしました。
少し遅いランチも摂り、そろそろライブを行う有楽町の国際フォーラムに向かうのかな
と思いきや、ベンチに座り、彼はカバンから何かを取り出して、私の後ろに立ちました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)