第53話:仲直り
参ったなー、彼に何て言おう?
でも、そもそも怒ってる原因は、西田さんとの飲み会の事じゃなかったし・・・。
だけど、このまま知らない顔は出来ないし・・・困ったなー。
こんな事を考えながら、仕事をしていると、終了のチャイムが鳴りました。
私は、着替えを済ませると、いつものようにバイク置き場に向かいました。
すると、私のバイクに股がってる隆志がいました。
『よっー。お疲れ様!』
「・・・・・。」
『その顔じゃー、さっき言ってた西田さんとの事が、違うって分かったんだな?』
「・・・・・、うん。」
『それじゃー、もう、怒ってないね?』
「違うでしょ? だって、この事と食堂の事とは、別でしょ?」
『そうだけど、何度も謝ってるじゃん。もう、許してよ!』
「本当に悪かったと思ってるの?」
『思ってるさ。僕には、遥しかいないから。
別れるなんて言われたら、どうしようかとずーっと思ってたよ。』
「そっかー。ん〜、私も誤解してたし、正直、別れたいとも思ってないし・・・。
なんか西田さんとの飲み会のことで、食堂のことが薄れて来ちゃったし、もういいかなー。」
『良かったー。よし、仲直りということで、飲みに行こう!』
「何言ってるの? バイクでしょ?」
『一旦、家に帰って、ほら、そばに居酒屋あるじゃん!
クリーニング屋のそばに、赤ちょうちんがぶら下ってて・・・。』
「あ〜、有った気がする〜。」
『自分ちのそばなのに、覚えてないの?』
私たちは、彼の言うように、一旦アパートに帰り、バイクを置いて、
歩いて5分ほどの居酒屋に行きました。
彼は、うれしかったのか、相当酔っぱらって、まともに歩けなくなり、
連れて帰るのが大変でした。
何とかたどり着き、部屋に入ると、彼は、そのまま倒れこみ、寝てしまいました。
抱えてベッドに寝かせようとしましたが、重くて動きません。
仕方なく私は、その場で彼にタオルケットを掛けると、お風呂に入りました。
お風呂から出ると、パジャマを着て、ベットで寝るつもりでしたが、
あどけない顔で眠っている彼を見ると、自然に、「ごめんね。」と言いたくなり、
彼の耳元でつぶやきました。
そして、彼に掛けたタオルケットに入り込んで、寄り添い、
一緒に畳の上で寝てしまいました。
私たちは、これから1ケ月程は、毎日仲良く楽しい日々を送りました。
ただ、私には、一つ気になる事が有りました。
予定の日が、とっくに過ぎているのに、アレが来ないのです。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)