第52話:西田さんの嘘
「嘘」には、ついて良い「嘘」と、悪い「嘘」があると云われます。
本当にそうでしょうか?
人を悲しませない為の「嘘」が、ついて良い「嘘」?
「嘘」が、ばれた時に、その人は、どのように思うのでしょうか?
周りの人を明るくさせる「嘘」は?
今回、私は、西田さんに「嘘」をつかれました、
私は、その「嘘」のせいで、振り回されました。
隆志は、私の腕を掴んだまま言いました。
『何で、来なかったんだよ!』
「もう仕事、始まるから、行かないと。」
彼は、行こうとする私の腕を放しませんでした。
『仕事なんて、どうだっていいよ!』
「放してよ! もう行かないと!」
『放さないよ。また、会えなくなるだろ。』
隆志は、こう言うと、私を引き寄せて、抱きしめました。
「こんな所で、何やってるのよ!」
私は、隆志の胸を押して、すぐに離れました。
『どうすれば、許してくれるんだよ!』
「許して欲しい人が、何で今日、西田さんと飲みに行くのよ!」
『何のことだよ。』
「さっき西田さんと、約束したくせに、とぼけないでよ!」
私は、ドアを開けて、担当エリアに、小走りで向かいました。
隆志は、『ちょっと、待てよ!』と、言いましたが、
考え込んでそれ以上は、追ってきませんでした。
持ち場に着くと、西田さんが、近づいて来ました。
『あなた今日、仲間と一緒に居なかったじゃない。
中根君も居なかったけど、二人で仲良しランチタイム?
いいわねー。仕事は半人前なのに、昼間から、ラブラブで。』
「違います。彼とは、喧嘩していて、そんなんじゃ有りません。」
『あらっ、そう? 』
「今日、西田さんと飲みに行くことで、
余計に変なことになっちゃったんですよ!」
『えーっ? あなた彼に聞いてないの?
ほんとに喧嘩してたんだ。もしかして、昨日の食堂での騒ぎのせい?』
「そうですけど、もういいです。」
『飲みに行くのは、嘘よ。
中根君は、好きな彼女がいるから、他の女性と飲みになんて行けません。
って、きっぱり断ったわよ。ちょっと憎らしくて、冗談で言ったのに・・・。』
「えーっ! 飲みに行かないんですか?」
『何だか、二人はうまくいってないのねー。
こんな冗談で、ガタガタするなんて。
本気でくどいちゃおうかしら? さぁー仕事、仕事。』
「ガァーン! 何て、こったー!」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)