第51話:意地っ張り
それほどの事でもないのに、
なんとなく、意地を張る事ってありませんか?
そのことで、思わぬ方に事が向いてしまい、
こじれて、こんなはずじゃなかったのにと・・・。
どうも私は、意地っ張りのようです。
手紙を開くと、そこには、
[どうして、電話に出ないんだよ。メールの返事もくれないし。
今日昼休みになったら、すぐにバイク置き場に来てよ。]と、書いてありました。
もしかして、別れ話が書かれているのかなと、心の片隅に思っていた私は、なぜか、
ほっとしました。
チャイムが鳴り、仕事になりましたが、私は、どうしようか考えていました。
食堂での出来事もそうでしたが、西田さんと飲みに行くなんて、ありえません。
それも、私とこんな状態の時に。
そうこうしているうちに、お昼休みのチャイムが鳴りました。
結局、私は、みんながいつも居る定食のフロアではなく、そば&うどんのフロアに、
1人で行きました。
そう、隆志の待っているバイク置き場にも、行きませんでした。
うどんを食べ終わると、席が沢山空いていたのでそのままそこで、
携帯電話をチェックすることにしました。
昨日の夜、見た後にも、入っていました。
PM 11:16
〔遥、どこにいるの?心配です。連絡欲しいよ。〕
AM 12:07
〔許してくれないの? 100%僕が悪いの?〕
AM 1:40
〔返事してくれないと、解決しないよ。〕
AM 3:00
〔もしかして、このまま別れるつもり?〕
AM 4:07
〔付き合い出したばかりなのに・・・。〕
AM 5:36
〔明るくなってきちゃった。一体、どうするつもりなんだよ。〕
AM 7:08
〔そろそろ、仕事に行かなきゃ。なんか、つらいよ。〕
結局、自分のアパートに戻らなかったのか〜。
それに、寝てないんだ・・・。
でも、私が悪いんじゃないもん。
私が、携帯電話に気を取られていると、隣に誰かが座ってきました。
『こんなところで、1人で何してるんだよ。』と、池田君でした。
「ん・・・・・。」
『昨日の事で、みんなに顔合わせるの辛いだろうけど、みんなちゃんと分かってるよ。
それに、中根がひどく落ち込んでるんだよ。
青山を探して、あちこち行って落ち着かないし、会って話してやってくれないかなー。』
「中根君、何か言ってた?」
『電話かけて謝っても許してもらえない。って言ってたけど。』
「それだけ?」
『うん。そうだけど。他に何かあったの?』
「う〜うん。別に。」
『じゃー、行こう。』
「行かない。」
『どーして?』
「どうしても。」
『みんなに何て言えばいいんだよ。』
「適当に・・・。じゃー。」
私は、食堂を出て、隆志が来ないような場所のベンチに座って、
仕事の時間まで考えていました。
そして、お昼休みの終わり3分前になったので、仕事場に向かいました。
仕事場の扉を開けようとしたところ、後ろから誰かに腕を掴まれました。
振り向くと、隆志でした。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)