第50話:手紙
けんかをすると、仲直りが大変ですね。
どちらかが、明らかに悪いと、分かっているなら、
折れることもあるのでしょうが・・・。
でなければ、意地の張り合い。
場合によっては、そのまま・・・・・。
私がどんなに悩んでいても、時間は止まること無く、朝が来ました。
自分でどうして良いのか分からないまま、工場に着きました。
職場のミーティングの前に、隆志は私の顔を見るなり近寄って来ました。
私は、気まずい感じがして、逃げたくなりましたが、
彼は、私の手に手紙を渡して、戻って行きました。
もしかしたら、彼も怒っていて、「別れの手紙」かもしれない。
とか、思ってしまい、急に落ち着かなくなりました。
でも、こんな場所で広げて読むわけにもいかずに、
いろいろ考えながら仕事をすることになってしまいました。
仕事は、今日も1日、西田さんと一緒でした。
また、何か言われる気がして、少し凹みました。
そして、持ち場に着くと、早速一言。
『中根君に、飲みに行く話してくれた?』
「え〜、ま〜。」
『何よ、まだしてくれてないの?』
「彼女に悪いから行かないと、言っていましたよ。」
もちろん、昨日は、隆志と話などしているはずもなく、嘘でした。
でも、多分、隆志は、そう答えるだろうと思って答えました。
『そう。でもさー、彼女って、あなたでしょ? 』
「えっ。ま〜。その〜。」
『なんかハッキリしないわね! 本当に行かないって言ったの?
いいわ、ちょっと聞いてくる!』
西田さんは、そう言うと、隆志の方へ行ってしまいました。
(社員だからって、何よ!あの態度。むかつく〜。)
少しすると、西田さんが、なんとなく微笑みながら帰ってきました。
私が気にしているのを、気が付いているくせに、
わざとそのまま何も言わずに、仕事を始め出しました。
(も〜何で何にも言わないのよ!気になる~。)
「あの〜、何て言ってました?」
『彼女じゃないなら、関係ないでしょ!』
「・・・・・。」
『まーいいわ。教えてあげる。 今日、飲み行く事になったわよ。』
「えっ!・・・・・。」
『さぁー。仕事、仕事! 今夜は楽しくなりそうだわ。』
彼の顔も見たくないはずの私でしたが、急に力が抜けてしまいました。
何とか仕事をこなし、待ちに待った5分間の休憩です。
急いで外に出て、隆志から渡された手紙を開きました。
そこには・・・・・。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)