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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
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第5話: 2度目の面接

工場見学が終わると、私たちは、会議室に案内されました。


部屋の中央に幾つか長机をくっつけて、両側に椅子が並べてある普通の会議室。


『15分間、休憩します。』


地域管理者の中村さんは、こう言うと、面接官を呼びに部屋を出て行きました。


みんなはトイレに行き、戻ってくると仲良くなった人同士で、おしゃべりをしていました。


しばらくすると、中村さんと面接官が部屋に入って来ました。


中村さんは、窓側に私たち7人が座るように指示して、


面接官4人と中村さんは、反対側に座りました。


『それでは、面接を始めます。こちらは、総務係長の山村さん・・・』


と、中村さんが紹介を始めました。


『では、名前を呼ばれたら、手を上げて返事をしてください。』と、続けました。


まさか? このまま面接をするの? 


プライバシー無いじゃん。 うっそー!


と、私は、何か悪い予感がしました。


そして、そのまま面接が始まりました。


『では、池田さん』


「はい」


面接官4人が、履歴書を見ながら、次々と質問を飛ばしました。


『お父様は、おられないのかな?』


「はい。僕が、中学生の時に離婚しました。」


『そうですか、前の印刷の仕事は、半年で辞めてますが、どうしてですか?』


「自分に合ってない気がしたのもですから。」


『どんなところがですか? ここの仕事も、そう感じたら、すぐ辞めてしまいますか?』


と、いった具合に、皆の前で遠慮なく進められました。


住んでいる場所、趣味特技、資格、職歴など・・・


みんな答えているけど、平気なの?


変な質問されたら、どうしよう・・・ と、私は心配しました。


そして、とうとう、私が呼ばれました。


幾つかの質問があり、気にしていた質問がされました、


『大学出てYTT会社に就職したんですね。どうしてこんないいところ辞めちゃたの?』


私は、なんて言おうか、すごく迷ってしまいました。


色々嘘も浮びましたが、何かせかされている様で、結局本当の事を言ってしまいました。


「上司にセクハラをされて、続けるのが嫌になりました。」

 

みんなが、私を見ている気がして、逃げ出したくなりました。

 

うつむき加減の私に、その面接官は続けて


『どんなことを、されたんですか?』  


もーいい加減にしてよ。心の中で叫んだのでしたが・・・


言葉が出てきません。 


答えなきゃいけないの? 


私が、答えに困っていると、


『こんなみんなの居る前で、そんなことを聞くのは、セクハラじゃないんですか?』


昨日、派遣会社の面接控え室で、私をちらちら見ていた人(池田さん)が、


そう言ってくれました。


でも、そんなこと言っちゃたら、君、面接落ちちゃうよー。

 

すると、面接官は、質問を次の仕事のことに変えました。


『では、次に配達の仕事をして、半年くらいで辞めてるのは、どうしてですか?』


えーっ。またこんな質問・・・。みんなの前で、やめてくれ〜


そして、いくつかの質問が続き、私の番もやっと終わりました。


次の人にも、その次の人にも、同じような質問を繰り返しました。


面接が始まって1時間半程が経ち、時間以上に息苦しかった面接も全員が終わりました。


面接官は相談のために別室に出て行きました。


私は、池田さんのところに行って、

 

「さっきは、どうもありがとうございました。」と、お礼を言いました。

 

『あんなこと言うなんて、どうかしてるよな。』と、池田さん。

 

「でも、あたしのせいで、落ちちゃったらどうしよう。」


『そんなの気にすんなよ。こんなとこ、こっちが願い下げだね。』


隣にいた小林さんが、同感したように言いました。


『みんなの前で、面接なんておかしいよな。』


何人かが、『そうだよ。こんなの聞いたこと無いよ。』と、言ってくれました。


私の目に涙が浮かびました。

 

『今日終わったら、みんなでカラオケ行って、スカッとしない?』と、池田さんが言うと、

 

『そうだね。』 『1日かかると思ってたし。』


『俺も暇だし。』と、あっさり決まってしまいました。



しばらくして、ドアが開き、面接官が入って来ました。

 

そして、全員の合格が告げられました。


「良かったー。」と、私は胸を撫で下ろしました。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)

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