第45話:同棲
この時、私は、25歳でした。
丸山さんに、「さん」付けしていたのは、私より年上で、27歳。
中根君に、「君」付けしていたのは、私より年下で、22歳でした。
金のわらじは、履いてなかったな〜(笑)
『なっ!俺と結婚してくれよ。俺、頑張るからさ。』
「ん〜〜。でも、ちゃんと付き合いだしたのは、今日からだよ。
だから、半年後にまだ今の気持ちのままでいたら、ちゃんとプロポーズして!」
『え〜、半年? 長すぎない? もっと早くしようよ。』
「半年後まで、今の気持ちでいる自信ないのね?」
『そうじゃないよ。気持ちが変わるはずないのに、待つなんて、時間がもったいないよ。
早く遥と、一緒に住みたいんだよ。』
「別に急がなくたって、いいじゃない?
仕事で毎日会ってるし、帰りにデートだって出来るし。」
『でも、今日もそうだけど、デートの後、帰りたくないんだよ。
2人とも、1人暮らしなんだし、一緒に住んだって、支障ないだろ?
さよならって、別れる時が凄く辛いんだよ。』
「そんなに、同棲したいの?
私は、そんなけじめのない生活は嫌だなー。」
『愛し合うもの同士が、一緒に暮らすのは当たり前のことじゃないか。
遥は僕のこと愛してないの? 愛してないのにHしたの?』
「私の気持ちが不安定になってる時に、嫌だって言ったのに、
強引に隆志がしてきたんじゃない。」
『だって、ずっと好きで、我慢出来なかったんだよ。
遥だって、本気で拒否ったわけじゃないだろ?』
「う〜ん、まーね。
色々有って、混乱して、隆志の言ってくれてることが、
ほんとに嬉しくて、いいかな〜と、思ったんだよ。
今考えてみれば、毎日、隆志が助けてくれたから、
優しくしてくれたから、仕事が続けてこれたんだと思うよ。
もっと早く気付かなきゃいけなかったと思う。
丸山さんの見た目のカッコ良さ、偽りの優しさに騙されて、
隆志が、いつもそばに居てくれてたことに気付かなかった。
丸山さんにひどい事言われて、死ぬほど落込んでいる時に、
隆志に優しくされて、私の心は隆志を求めていたんだとわかったよ。」
『だったら、一緒に暮らそうよ。
僕は遥のこと守るから、遥はいつも、僕のそばに居てくれよ。お願いだよ。』
「でもー。
ん〜、私、正直言って、自信ないよ。
隆志に見られたくないことや、知られたくない事も有ったりするし・・・。」
『え〜何だよ、それ。 俺のこと好きなら、そんなものないはずだろ?』
「でも、好きだから、嫌われたくないから、そういうこともあるんだよ。」
『それって、すっぴん見られたくないとか? いびきかくとか? 料理出来ないとか?
でも、そんな半端な気持ちじゃないんだよ!』
「ん〜、そんなに、責める様に言わないでよ。涙出てきちゃったよ。」
『ごめん。でも、料理なんか俺がするし、教えてあげるよ。
ほかにも、出来ないことあったら、僕がやるし。
僕のこと、信じていいよ。
遥のどんな姿見ても、気持ちは揺るがないよ。』
「う〜ん、そんなに言うなら、分かったよ。
お互いのことを、早く色々知るのにはいいのかもね。
でも、嫌なところ見て、嫌いになっても知らないよ。」
『やったー。ありがとう!
それじゃ、このまま、遥のところに、転がり込むよ。
荷物は少しずつ持って来るし。
とりあえず帰りに、着替えと必要な物取りに行こう?』
「えっ? 今日から? それに私の方で暮らすの?」
『うん、だって、俺んとこより広いし、きれいだしね。
それに、持ち物、俺の方が少なくて済むよ。』
「どうしよう・・・なんか嫌だけど・・・ん〜・・・まーいっか・・・。」
隆志が、またキスしようとしてきました。
私は、目をつぶり、受け入れました。が、やっぱり彼は震えていました。
「そんなに、緊張するかな〜。」
『するする。遥は、自分の魅力に気付いてないんだよ。
ほんとに、かわいいしさ。
俺のものになったと思うと、もう、ドキドキだよ。』
「誰があなたのものになったって言ったの?
私そういう風に言うのって嫌い。私は、物じゃないわよ。」
『ごめん。そんなつもりじゃないんだけど・・・何て言うか・・・。
僕だけに、遥は許してくれているんだと思うと、うれしくてさ。』
「別に言い直さなくたっていいわよ。気持ちは分かるから。
だけど、泣かせたら、さよならだからね。」
『うん。わかったよ!』
「じゃー行こうか。」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)