第40話:欠陥品
「生まれてこなければ良かった。」なんて、思ったことは、ありますか?
私は、今回がそうでした。
でも、すぐに、そんなことを、思うことは間違いだと気付きました。
人生、嫌なことでも、楽しめれば、大人だと思います。
1度だけの命、泣いていても、笑っていても、時間は同じに過ぎていきます。
だから、私は、なるべく笑っていたい。
彼は、意外に早く出てきました。
それも、腰にバスタオルだけを巻いた状態。
「どうしよう。」
そんなことを考えている間も無く、彼は、近づいて来ました。
私は、初めての娘のように、彼に背を向けて、布団にくるまっていました。
そう、もうすぐ訪れる結果に怯えて、震えていました。
彼は、ベットに来るなり、私がくるまっていた布団を払い除け、床に落としました。
私は、バスローブ姿で「く」の字になったまま動けないでいました。
彼は、私の後ろから、包むようにのしかかってきました。
『どうしたんだい? やっぱり、初めてなんだろ?
恥ずかしくなんてないから、こっちを向いて、見せてごらん。』
私は、仕方なく仰向けになり、彼の顔をみました。
彼は、バスローブのひもをほどき、私のからだを包んでいたタオル地のそれを広げました。
私の傷ついたおっぱいが、彼の目に映りました。
私の気持ちは限界に達し、涙がこぼれてきました。
『何だよ! その胸! 化け物みてぇ!
それで、そんな神妙な態度してたのか。
よくそれで、俺に抱かれようなんて、思ったよな。
まったく、よくも、今まで騙してくれたもんだ。』
私は、蚊の鳴くような声で言いました。
「違う! そんなんじゃないの。」
『まーいいや。賭けもしてるし、ここまで来てしないのも変だ。
入れてやるから、パンツ脱げよ!』
「嫌だー。もうイヤー。」
『何言ってんだよ。 欠陥品のくせに!
証拠写真撮るんだから、早くパンツ脱げよ!」
そう言うと、彼は、私のパンツに手を掛けてきたので、
私は、その手を振り払い、ベットから降りて、立ちすくみました。
「ひどい、ひどいよー。」
彼は、そばに置いて有った携帯電話を掴み、写真を撮ろうとしたので、
私は、パンツ姿のまま、自分の服を掴み、靴を引っ掛けて、廊下に飛び出しました。
放心状態の私は、そのまま廊下を走り、エレベーターボタンを押し、
開いたエベーターに飛び乗りました。
1階に着いて扉が開くと、この場から逃げ出したい私は、
何も考えることが出来ないまま、外へ向かって走り出しました。
目の前が涙でぼやけている私の前に、突然ドアが開き、
危うくぶつかりそうになり、しゃがみ込んでしまいました。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)