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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
35/100

第35話:不安な心

デートを重ねるたびに、ますます、彼を好きになっていく私。


今まで、自分の好みの女を、落とすことを楽しんできた彼。


私には、賞金も懸かっている。


5回目で落ちたら、数万円。


彼にとって、私は、単なる遊び、それとも・・・。



4回目のデートの日が、来ました。


例によって、私は、いつもの場所で、彼を待っていました。


待ち合わせ時間よりも、少し早く黒いワゴンがやって来ました。


『おはよう! さぁ、乗って!』


「うん! おはよう!」


今日の行き先も昨日のメールで決まっていました。


ズーラシア横浜動物園です。


そして、夏の暑い陽が差し込む中、私たちは、汗をかきながら広い園内を歩きました。


時折、動物のかっこうをまねして、私を笑わせようとする彼。


いつも気取って、かっこいい彼が、私の前では、陽気なピエロ。


こんな姿に、私はまた、いっそう彼が好きになっていきました。


名物のオカピーも見て、楽しく過ごしましたが、とにかく、暑かったー。


そのせいか、帰りの車に乗ると、彼が言い出しました。


『汗いっぱいかいた?』


「うん、暑かったもんねー。もう、びちょ、びちょ。」


『そのままだと、風邪ひくから、流していかない?』


「えっ? ・・・それって・・・。」


『そろそろ、いいかなーって思うんだけどさ。』


「そんな〜、まだ、あたしは・・・・・困るよ。」


『そっか。そうだよな、まだ、ダメだよな。それじゃ、また今度な。』


〔ついに、言い出したか〜、こんなに早くこの時が来るとは・・・。〕


「それじゃーさ、来週、海、行かない?」


「えっ? 海? ん〜」  


〔たて続けに、困る事言うなよー〕


『都合悪い? 』


〔どーしよう・・・困ったー。都合悪いと言うのは簡単だけど、


次の週は?と聞かれると、また都合悪いと言うのも、おかしいし・・・。〕


『ねぇ? どうかした? もしかして、泳げないの?』


「泳げるわよ! 少しだけど。」


『じゃー、決まりね! 来週は湘南だ!』


「待ってよ。 行くなんて、言ってないよ!」


『なんだよ、それ。何でダメなんだよ!』


「・・・・・」


『理由言わなきゃ分かんねぇじゃん!』


「分かったわよ。行くわよ、行けばいいんでしょ。」


『そんな怒ることじゃねえじゃん! 夏なんだから、海行くの普通だろ?』


「いいわよ、もう。」


私が怒っていると思った彼は、車を端に寄せて止めました。


そして、私の首に腕を回し、頭を引き寄せて、自分の頭と私の頭をくっ付けて話し始めました。


『俺さ、お前のこと好きでたまらないんだよ。


毎日お前のことばかり考えてるんだ。


昨日、バンドの奴が、彼女と海に行ってきた話を楽しそうにするからさ、


俺もお前と行きたくなってさ、やっぱし、男なら、彼女の水着姿とか見たいじゃん。


そういうのって、ダメなのかな〜。』


「いいよ、分かったよ。」


『ありがとう。』彼は、軽くほっぺにキスをすると、車の運転に戻りました。


〔まずい。あんな風にして言うから、つい、いいよなんて、言っちゃった。どうしよー。〕


そして、別れ際に、いつものように車の中で、キスをしましたが、


回を重ねるごとに、激しく長くなる彼。


『それじゃー、来週は、湘南。絶対晴れだぜ!』


なんで、いいなんって言っちゃったんだろー。


そう、私は、胸の傷のせいで、水着になるのが嫌だったのです。


ここ数年、海には行っていませんでした。


困った〜雨降るといいな〜。



(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)

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