第30話:ドライブ
悪い事だと分かっていながら、ついしてしまう事、
悪い予感がするのに、止めることが出来ない事、
人にはそんな時があると思いますが、
私の丸山さんとのお付き合いも、そんな感じでした。
夜1人になって考えてみると、丸山さんの後ろには何人もの女性を感じましたし、
中根君からの忠告も有りました。
私は、人を押しのけて、欲しいものを得るような性格ではありません。
どちらかと言うと一歩後ろで、待っているような感じです。
つまり、この恋は、間違いでした・・・。
してはいけない、お付き合いだったのです。
ライブが終わったので、私たちは、丸山さんのところに、行きました。
みんなもバンドのメンバーに、ねぎらいの言葉を掛けていました。
そして丸山さんが、私に話し掛けて来ました。
『これから、片付けをして、少し遊んでから、居酒屋で飲むんだけど、来ない?』
「ん〜。今日は、仕事のみんなと来たし、友達の涼子を一人に出来ないから、ごめん。」
『そ〜っか。 それじゃ、あした、ドライブ行かない?』
「えっ? あした?」
突然の誘いに、私は一瞬ためらいました。
でも、断ったら、次は無いなと、思い・・・。
「うん、いいよ。」
『それじゃ〜、8時に横浜駅東口の交番のところに来て!
すっぽかすなよ! じゃーな!』
「うん。今日は、ありがとう。」
そして、私たちが、行こうとした時でした。
横から可愛らしい女の子達が、缶コーラを2本持って、
『お疲れ様でした。これどーぞ!』と言って来ました。
涼子が『ありがとう。』と缶コーラを2本受け取ると、女の子達は行ってしまいました。
みんなも自販機でジュースを買ってきました。
そして、近くのベンチに腰掛けて、缶を開けた時です。
「ジョバーー!!」
私と涼子の缶コーラから、中身が勢い良く噴き出したのです。
「きゃー、何これー、ひどーい!」
私と涼子は、服を濡らしてしまいました。
『きっと、ファンの子だよ。遥が歌ったから、ヤキモチ焼いて、こんなことしたんだよ。』
「う〜ん、そうかもね。でも、ごめんね。
私のせいで、涼子まで、こんなことになって・・・。」
私と涼子のジーンズとシャツは濡れたけど、気にしないでそのまま、遊ぶことにしました。
久々の遊園地。みんなで思う存分、遊びました。
陽も傾き、閉園の時間も近づいて、私たちは、引き上げることにしました。
帰りにカラオケ店によって、例のごとく、池田君が中心になって騒ぎました。
小林君が、やたらと涼子に話し掛けていました。
涼子も、嫌な顔もせずに、笑顔で対応していました。
もしかして、カップル誕生?
朝から、遊んだこともあり、早めにお開きになりました。
そして、次の日がやって来ました。
私は約束の横浜駅東口の交番の前で待っていました。
交番の前で待ち合わせというのも、何だか変な感じもしましたが、
逆に何が有っても大丈夫と、安心感が有り、
それがなんとなく、丸山さんへの安心感にも繋がりました。
時間通りに、丸山さんがやって来ました。
『おはよう! 車、あっちに止めてあるから、行こう!』
「おはよう。きのうは貴重な体験させてもらって、ありがとう。」
『楽しかったみたいだね。良かったら、うちのスタッフになれば?
また、歌わせてあげるよ。』
「う〜ん、考えておくわ。」
私は、丸山さんの後ろに付いて行きました。
すると、目の前に車が・・・。
「おお〜〜っ!」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)