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胸の傷と心の傷  作者: 乙女一世
23/100

第23話:チャーハンと酢豚

中根君はトイレに入った。


私は、すぐには出てこないだろうと思い、テレビのスイッチを入れました。


10分が経過して、少し心配になった私は、悪いとは思ったけれど、声を掛けてみました。


「大丈夫? お薬もあるよ。」


『うん、ごめんな、もう少し居させて・・・。」


「いいよ、ごゆっくりどーぞ。」


時計の針は、7時を指そうとしていました。


なんかおなか空いたなー。夕飯どうしようかな?


トイレのドアが開き、中根君が、ほっとしたような顔で出て来ました。


「大丈夫?」


『うん、何とか。でも、またトイレに行きたくなると困るから、少しおじゃましてていい?』


「うーん、別にいいけど、教習所はどうするの?」


『うん、また今度にするよ。 もう7時か〜 おなか空かない? いつもどうしてるの?』


「その時によるけど、外食が多いかな。」


『それじゃー、お礼に、俺が作ってあげるよ。』


「えっ? マジで? 作れるの?」


『失礼な。これでも、中華のコックしてたんだぞ!』


中根君は、そう言うと、冷蔵庫と食材棚を覗き始めた。


『結構、色々あるじゃん。そーだな・・・チャーハンと酢豚でも作ろうか?』


「酢豚なんか大変じゃないの? 無理しなくていいよ。」


『30分くらいでなんとかなるよ。まっ、見てな!』


中根君はそう言うと、食材を並べ始めた。


「中華のコックさんって、どのくらいやってたの?」


『高校出てから、2年間料理学校行って、3年くらいやったかなー。』


「結構本気だったんだ?」


『あ〜、自分で店、出したかったんだ。』


「何で辞めちゃったの?」


『勤めてた店がつぶれちゃったんだ。


どうしようかと考えていたら、バンド仲間の丸山が、勤めていた印刷屋に誘ってくれたから


働き出したんだけど、結局、給料が安くて上がんないし、派遣のほうが、良さそうだから、


一緒に辞めたんだ。


でも、成り行きでこうなちゃったけど、まだ、自分の店を出すの諦めた訳じゃないんだ。』


「そーなんだ。ちゃんと目標持ってるんだね。うまく行くといいね。」


話しながらも、お肉を解凍して、野菜を切り始めた。


そのスピードにびっくり!


彼は、紛れもなくプロだ。と実感!


鍋に油を入れて、とんかつ用のお肉を竜田揚げにし始めた。


見る見る間に、酢豚が出来上がっていった。


チャーハンも、あっという間に、出来上がってしまった。


『ま〜ちょっと、変わってるけど、オリジナル酢豚だね。さぁーどうぞ。』


「飲み物は、カクテル缶とビールしかないけど、どうする?」


『俺、酒飲めないから、お茶でいいよ。あれ?青山も、飲めないんじゃなかったけ?』


「あ〜、ん〜、お客さんのために買って置いてあるんだよ。」


『なんか、嘘ぽいなー。隠さなくたっていいよ。』


「飲めないって。それに飲んじゃったら、バイク乗れないよ。」


『飲んじゃったら、泊めてもらおうと思ったんだけどなー。』


「何言ってるの?」


本当は、毎日少し飲んでいました。


ただ、あの事件以来、男の人の前で飲むのを止めただけ。


そんなことを説明するほどの仲でもないし、煩わしいので、ごまかしました。


私たちは、テーブルに着き、食べることにしました。


「いただーきまーす。 モグモグ・・おいしー! 信じらんない!


お肉もカリカリしてるし、野菜も変にやわらかくないし、チャーハンもベトベトしてない。


ほんとおいしいよ! お店みたいだよ!」


『だからー、コックやってたって言ってるでしょー。』


「ほんとだったんだね。びっくりだよ!


そー言えば、おなかは大丈夫なの?」


『なんか、治ったみたい。』


私たちは、料理を食べ終わり、ウーロン茶もジャスミン茶も無かったので、


紅茶を飲むことにしました。


中根君は、部屋の中を歩き出して、キョロキョロあちこち見出しました。


「ねぇー、奥の部屋は、行ちゃだめだよ。」


『寝室なの?』


「別にいいじゃん。」


『だけど、グレーのカーテンに、バイクや車のレースのポスター、それに水槽が3つ有るし、


でかい変な魚がいるし、なんか、女の子の部屋じゃないみたい。』


「あっそー、中根君に好かれようとしてるわけじゃないし、大きなお世話でーす。」


『あっ! ボンバーマンだ! これやろうよ。』


「えっ? 今からテレビゲームするの? もうすぐ9時だよ。」


『青山さんは運動神経良さそうだから、前からこういうので勝負したかったんだ。


まさか、逃げるんじゃないよね!』


「もー、そこまで言われたんじゃ、しょうがないなー。」


私たちは、時間の経つのも忘れて、ギャーギャーと騒いで遊びました。


時計は、11時を過ぎていました。

 


(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)

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