第22話:招かざる客
『まさかー、毎日なんて。それじゃ恋人同士に見えるじゃん。』
「違うんだー?」
『もしかして、俺のこと好きになちゃった?』
「何言ってんの?」
『俺も、別に青山さんのこと好きじゃないし、
仕事でドジばかりで、見てられないだけだから・・・。』
「あーそう! じゃー帰る。お疲れ様。」
『おいー? ちょっと待てよ。今日は、教習所まで、乗っけてくれよ。』
「教習所?」
『青山さんにバイク乗せてもらったら、バイクの免許欲しくなってさ。
前から、欲しかったんだけど、なかなか行けなくてさ。
調べたら、畠山自動車学校が、いいかなーと思って、駅から歩くとちょっと遠いし、
青山さんが帰りに近くを通るんじゃないかと思ってさ。』
「あ〜、それでメット買ったんだ。畠山自動車学校か〜。
う〜ん、うちから遠くは無いけど、うちを通り越しちゃって10分くらいかな?
別に用事無いし、いつも助けてもらってるから・・・仕方ない。行ってあげるよ!」
『サンキュウー。』
私は、バイクにまたがり、エンジンを掛けた。
中根君が、例のごとく、後ろに座った。
「ねーっ? それ、ワザとやってるの?」
中根君が抱きつくように、両手を前の方まで持ってきてベルトを掴んだ。
その両手の親指が、ジーンズの中に入っていました。
『えっ? あ〜これ? 知らなかったよ! ごめん!
青山さんもこんなこと気にするんだ?』
「あったり前でしょ! パンツにまで入りそうなんだから・・・。
だいたい、その掴まり方変だよ。完全に抱きついてるじゃん。
ベルトの横を掴んで、寄り掛からないで、まっすぐ座ればいいんだよ!」
『そんなに怒るほど気にしてたんだ?
前の時言わなかったからいいのかなって思ってたよ。ごめん。』
「分かればいいんだけどさ。べつに・・・。」
『だけど、ベルトに摑まると、前傾になっちゃうよ。』
「じゃー、なるべく寄り掛からないで。」
私たちは、工場の門を出ました。
約40分走ったところで、中根君が話し掛けてきました。
何を言ってるのか、分からなかったので、私はバイクを止めました。
「どうしたの?」
『ハラ痛くなちゃったー、どっかにトイレないかな?
コンビにとか? あ〜我慢できない〜。』
「え〜っ! コンビニどこだっけかな〜? ん〜分かんないよ〜。」
『もれる〜、はやく〜。』
「え〜どーうしよう?・・・。しょうがない。うちに来な、そばだから。行くよ。」
2,3分走ると、私のアパートに着きました。
『も〜だめ〜。』
「2階だよ、急ぎな。」
私は、ドアを開け、中根君を部屋に入れました。
この部屋に男をはじめて入れてしまった・・・。
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)