第21話:ヘルメット
『一緒に、帰ろうよ。』
「私、バイクなの。」
『えっ? バイク? そっかー、それじゃ、食堂で、お茶しない?』
「しない。」
『なんだよ。心配してくれてたくせに。』
「心配なんか、してないってば・・・。」
『なっ。少しでいいからさ・・・。』
「ん〜・・・しょうがないな。少しだけだよ。」
私たちは、食堂に行き、ジュースを飲みながら話を始めた。
食堂は夕食を摂ってる人が多く、昼と同じようににぎわっていました。
『渡した早園麻紀のCD聴いてくれた?』
「うん。いい曲だね。」
『ほんとかよ。てっきり、忘れてるかと思ってたよ。
じゃーさ。もう一つ渡したい物があるんだ・・これなんだけど・・・。』
「何これ? えっ? 早園麻紀のライブチケットじゃん。」
『小林と行くつもりだったんだけど、彼、用事が出来て、ダメになちゃって・・』
「これ、3列目の中央席じゃん! すごーい! でも、いいや。」
『えーっ? ただでいいからさ、頼むよ。』
「そんなの、なおさらダメだよ。」
『それじゃ、5000円で! なっ? お願いだよ。』
「ねー、私は、あなたのこと、嫌い。って言ったのよ。分かってる?」
『分かってるよ・・・だから、お願いしてるんじゃんか。」
「そう。分かってるんだー。う〜ん・・・。
そっか・・・それじゃ、5000円 ハイ。」
『おー、行ってくれるんだ。サンキュウー。』
「勘違いしないでよ。早園麻衣に興味を持ったし、
せっかくのいい席だから、行くんだからね。じゃー帰るね。バーイ!」
わたしは1人、バイク置き場に向かった。
すると、わたしのバイクに、誰かがまたがっているのが見えました。
「中根くん?」
『おー! お疲れ! 遅かったなー。』
「待ってたの?」
『あ〜。これ買ちゃった。』
手に持って見せた物は、なんと、ヘルメット!
「えっ? それって、毎日乗るってこと?」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)