第19話:グループ分け
私は、家に着いて落ち着くと、明日から池田君が来ることを思い出しました。
「そーだ! 池田君に、もらった早園麻紀のCD,聴いてない!」
絶対に、話題にしてくるから、少し聴いておかないと・・・。
CDプレヤーのスイッチを入れると、曲が流れ始めました。
「女性とのデュエット曲なんだー。早園麻紀もなかなかいいじゃん。
池田君は、これが1番好きなんだー、ふ〜ん。
もしかして、私とデュエットする気?
そー言えば、覚えてきてとか言っていたような・・・。」
それから、私は、池田君に言われたからという訳でなく、自然と何度も聴いて、そのまま寝てしまいました。
朝が来て、いつものように忙しく、家を出ました。
朝礼で、今日の仕事を言われたのですが、まだやったことの無い仕事で、部品の検査を言われました。
挨拶くらいしかしたことのない、30歳くらいの女性の西田さんに、教えてもらうことになりました。
「よろしくお願いします。」
『よろしくね。この仕事は簡単だから・・気楽にやって!」
その言葉の通り、一つずつ機械にはめれば、あとは機械が判定してくれるので、
今までで1番簡単でした。
しかし、それが良かったのか? 悪かったのか?
西田さんが、話しかけてくるので、私もつい調子に乗って、ペラペラ・・・
話題が、北村さんのことになりました。
『あの人、頭くるのよねー。しゃべれないからって、楽な仕事ばかりして、それを当然のようにして、係長もそんな仕事ばかりしか、やらせないし、ねーねー、あの2人できてると思わない?』
あ〜あ〜聞きたく無い事、聞いちゃったよー。
こういうところから、グループ分けされちゃうんだよなー
私は、北村さんのことが気に入ちゃったけど・・・。
西田さんは、山口さんや松本さんといつも一緒。
北村さんは、金子さんといつも仲良くしてるし、確かに係長と仲が良さそう。
さ〜困った。とりあえず、良く分からないので、「あ〜そうなんですか〜。知りませんでした〜。」この返事の繰り返しとなってしまいました。
どこの職場でも、あるんだな〜。
私は、みんなと仲良くしたいのだけれど、案外こんなどっちつかずの気持ちが、1番嫌われたりするんだよね〜。
仕事は、楽だけど、こういう話は嫌だよー。
〔キンコーン♪、カーンーコーン♪〕
「お〜お昼だー。」
いつものように食堂に行くと、イター! 池田君。
でも、こっちを見ない。
「池田君、久しぶりー。」とりあえずの、私の挨拶。
池田君は、下を向いたまま、
『あ〜・・・。』の返事。
「うまくいってないの?」
池田君は話したくないのか、仲良しの小林君が答えた。
『朝、仕事場に行ったら、3人に囲まれて、《よくも、係長にちくったなー、お前、絶対に辞めさせてやるからなー。》って、言われたんだとさ。
仕事も教えてくれるのは、係長が居る時だけで、居なくなると前よりもひどくて、《じゃまだ!》《消えろ!》《うざい死ね!》とか言われて、たまに、蹴られたりするんだって・・・』
「ひどいじゃない、本当なの? 池田君!」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)