第18話:つゆだく
『あそこ! あそこ!』と、急に、彼が指をさすので、私は、その前に、バイクを止めました。
すると、彼は、バイクから降りて、『ここで、食べよう!』と、元気良く発言!
看板を見ると、見慣れた文字☆
【 すた家 牛丼 】
『さあ、入ろうぜ!』
私は、声もなく、付いて行く事に・・・。
実は私、この手のお店は入ったことが、無かったのです。
ファミレスは、1人でも行くのですが、ここは・・・。
なぜか、抵抗あって・・・男の世界のような・・・。
彼は、慣れた感じで、注文をして、私に聞いてきた。
『何にする?』
私も、落ち着いてメニューでも見ればいいものを・・・
「同じでいいや。」
『つゆだく?』
「えっ? そ〜ね・・・。」(なんだそれ? 牛語? 汁抱く?)
「よく来るの?」
『あ〜、吉田家は、最近牛丼無いからね。ん〜、竹屋よりも好みかな。ガス亭は、ちょっと遠いしね。』
ちょっち、質問と答がずれてるような・・・ま、いいけど・・・。
『はい。おまち。』
おー、早い、早い!
ム、ムッ? これは、牛丼ではない!
つゆだくか? いやいや・・・。
カレーだ! いつの間に、頼んだのだ?
私が、カレーを好きだと・・・知っていたのか?
『牛丼が、先が良かった? いつも、僕が、カレー先に食べてるから、お店の人も、一緒だと思ったんだよ。ねっ?』
[あっ、どーも。違ってたらごめんなさいよ。
大将、今日はどうしたんだい? こんなきれいな人連れて、彼女?]と、お店の人。
『違うよ、この人は、丸山が好きなんだから・・・。』
[そーか。あいつは、もてるねー。いいのかい? 中根ちゃん、こんな人、丸ちゃんと仲良くさせて・・・。]
『あー、俺関係ないよ。青山さんが勝手に、丸山のこと好きなんだから・・・。』
[そーなのかい? でも、注意した方がいいよ。青山さん。]と、お店の人。
「えっ? はい〜 、え〜でも、別に、好きなわけじゃ〜。」
何だか分からない私は、しどろもどろの返事・・・。
カレーに牛丼を食べて、おなか超いっぱいで、お店を出てきました。
「いくら?」
『いいよ。安いから。』
「でも〜。」
『あそこに、コンビニあるから、コピーしてくるよ。』
「私も行く。」
コンビニから出てくると、駐車場の柵のような物に腰掛けて、中根君は、仕事のことを説明してくれました。
彼の説明は分かりやすくて、併せてコピーを見ていると、仕事に対して持っていた不安が消えていきました。
気が付いてみると、駐車場で1時間、缶ジュース片手に話し込んでいました。
『あ〜それと、牛丼屋の人も言ってたけど、丸山には気をつけた方がいいよ。彼には、一応ファンクラブみたいなものもあって、ファンの子と結構遊んでるみたいだから・・・。』
「ふ〜ん、そーなんだ・・・。」
『じゃー、駅すぐそこだから、これで・・・。』
「ここでいいの? どうもありがとう。ごちそうさま。」
(つづく)(登場する人物・団体・場所の名前、名称は架空のものです。)