72.湯けむりハーレムと、酒池肉林の洗いっこ
「あーッ!! 連れて行かれるぅぅぅッ!!」
わたしはアナとガラに両腕を掴まれ、エリーに背中を押され、ズルズルと『第三の扉』の奥へと引きずり込まれた。
「観念しな、大将。これも家臣の務めってやつさ」
「ええ。リオン様の体は国の宝。隅々までピカピカに磨き上げます!」
扉をくぐると、そこは広々とした脱衣所だった。
桧の香りが漂う、高級旅館のような空間だ。
「ちょ、ちょっと待って! 心の準備が!」
「問答無用です」
シュババババッ!!
銀色の疾風が吹き荒れた。
エリーだ。
彼女の神速の手つきにより、わたしの服が一瞬で分解(脱衣)される。
気づけば、わたしは生まれたままの姿になっていた。
「ひゃうっ!?」
「ふふっ……主の素肌……スンスンッ(深呼吸)」
「嗅がないで、そして見ないで!」
抵抗も虚しく、わたしはそのまま湯気の中へと放り込まれた。
てゆーか、エリー! 君、元々男なのに、女の子に染まりすぎじゃない!?
カポーン……。
湯気が晴れると、そこには酒池肉林の光景が広がっていた。
大理石と岩で作られた広大な浴場。
そこに、わたしの自慢のSSR家臣団(全員全裸)が待ち構えていたのだ。
「リオンくん。いらっしゃ~い」
豊満な肢体を惜しげもなく晒しているのは、セイレーンの真魚美さん。
その横で、タオルで前を隠しながらも上目遣いでこちらを見ているのは、職人のトールだ。
「お、お待ちしておりましたのじゃ……その、り、リオン……」
「はぁ……はぁ……主様……♡」
そして、湯船の縁で四つん這いになり、発情期の犬のように荒い息を吐いているのは、鬼族の桜香。
彼女は腰をカクカクと揺らしながら、充血した目でわたしをロックオンしている。
「主様の……ナマ……はぁはぁ……」
「桜香、ステイ。まだ早いのじゃ」
それを冷ややかに制するのは、人型の魔剣・グーラだ。
彼女は大人の余裕を感じさせる妖艶な笑みを浮かべ、舌なめずりをした。
「まずは『下ごしらえ』からよ。……ふふっ、美味しそうな体」
目が捕食者のそれだ。
わたしは直感した。ここは風呂ではない。調理場だ。
「さあ主よ! まずは体を洗うのじゃ!」
「座りな、大将。王様気分を味わわせてやるよ」
わたしは強制的に洗い場の椅子に座らされた。
四方八方から、温かいお湯と、柔らかい肌が押し寄せてくる。
「背中はあたいが流す! ゴシゴシゴシッ!」
ガラが背中に張り付き、タワシのようなもので力強く擦ってくる。痛いけど気持ちいい。
「お顔はこちらへ~♡」
真魚美がわたしの頭を抱え込む。
洗顔フォームの泡と共に、圧倒的な質量の「果実」が顔面に押し付けられる。
むぐっ、息が……! 甘い匂いがする……!
「手足は私が! 音速で洗います!」
シュルルルルッ!!
エリーの手が残像となってわたしの腕や足を駆け巡る。
摩擦熱で熱い! あと振動がすごくて変な声が出る!
「ボクはお湯をかけるぞ!」
キリカが甲斐甲斐しくお湯をかけてくれる。
「主様……一番汚れるところは……この桜香が……ジュルッ」
桜香が目の前で膝をつき、熱っぽい吐息を漏らしながら、わたしの股間に手を伸ばしてくる。
その手つきは洗うというより、まさぐっている。
「はぁ……はぁ……立派な……カクカク……」
「ちょ、桜香! 顔が近い! 腰を振るな!」
「我慢できません……! 綺麗にして差し上げますからぁッ!」
彼女が暴走しかけた瞬間、わたしは命からがら立ち上がった。
「も、もう十分だ! 湯船に行く!」
わたしは逃げるように巨大な岩風呂へと飛び込んだ。
ザブーンッ!
ふぅ……。
広い湯船だ。ここなら少しは落ち着け――
「失礼する」
「いただきま~す♡」
ザバァッ!
一瞬で包囲された。
広い湯船なのに、なぜか全員がわたしの半径1メートル以内に密集してくる。
「背後はボクが守る。……水中からの敵襲(痴女)に備えてな」
キリカが背中にピタリと張り付いてくる。
警護と言いつつ、その手はしっかりとわたしの腹筋を撫で回している。
「主リオン……出汁が出ていて美味しそうじゃ……」
グーラが正面から抱きついてきた。
彼女はわたしの肩口に噛みつき、甘く吸い上げる。
「んっ……! グーラ、食べないで!」
「ふふっ、冗談じゃよ。……今は、ね」
妖艶な流し目が怖い。魔剣にとって主の魔力は御馳走らしいが、別の意味も含んでいそうだ。
「はぁ……はぁ……主様のエキス入りのお湯……ごくごく……」
桜香に至っては、離れたところでお湯を飲んでいる。
もうダメだこの鬼。
「あー……極楽……(白目)」
四方八方からの柔らかい感触。
熱いお湯。
そして過激すぎるスキンシップの波状攻撃。
わたしの意識は、急速に遠のいていった。
「あ、大将がのぼせたぞ!」
「主よ!? しっかりするのじゃ!」
「人工呼吸が必要ですわね……ジュルリ(桜香)」
薄れゆく意識の中で、わたしは思った。
お風呂は一人で入るに限る、と。




