68.銀竜の乙女は、重たい愛を抱く【Side:エリー(旧キエリュウ)】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
【Side:エリー】
月明かりの下。
新生したばかりの銀髪の乙女――エリーは、水溜まりに映る自分の姿を凝視していた。
(……これが、私か?)
透き通るような白い肌。華奢で折れそうな手足。
そして、夜風になびく銀色の髪。
かつての、岩のようにゴツゴツとした大男の面影は、どこにもない。
エリーは、かつて「キエリュウ」と呼ばれていた頃のことを思い出す。
廃棄都市の暴君。廃棄王。
そんな大層な二つ名は、彼にとって重すぎる鎧だった。
魔族の生き残りとして、人間たちに怯え、仲間を守るために必死で強がり、虚勢を張り続けてきた日々。
弱さは罪。敗北は死。
いつ寝首を掻かれるか分からない恐怖に、彼は毎晩震えていた。
だが、あの方は違った。
『殺さないよ』
『君は、一人で強がらなくていいんだよ』
圧倒的な強さを持ちながら、敗者である自分を蹂躙せず、温かい食事と場所を与えてくれた。
あの瞬間、キエリュウの魂は救われたのだ。
そして――この「変化」だ。
エリーは、自分の豊かな胸元に手を当てる。
ドクン、ドクンと、心臓が高鳴っている。
(主は……なぜ、私を「女」にしたのだ?)
システムのエラー? 名前のせい?
表向きはそう言っていた。
だが、本当にそうだろうか。あのような規格外の力を持つ主が、単なるミスでこれほどの「創造」を行うだろうか。
(いや、違う。……これは「意志」だ)
エリーの思考は、斜め上の方向へと加速していく。
主は、私の本質を見抜いていたのだ。
無骨な男の肉体など、仮初めの姿に過ぎないと。
そして、彼の手によって、私は最も美しく、最も機能的な姿へと作り変えられた。
(男だった私を、わざわざ「女」に変えた。……つまり、主は私に「これ」を求めているということか?)
ゾクリ、と背筋に電流が走った。
それは恐怖ではない。
甘く、痺れるような、未知の感覚。
(主は何も言わなかった。愛の言葉など、一つもなかった。……だが、この「結果」こそが全てではないか)
彼は、私を彼好みの形にリメイクしたのだ。
それは、言葉以上に雄弁な「独占欲」の現れ。
自分の所有物として、愛でるための形。
「……あぁ」
エリーの頬が、紅潮していく。
かつて男として生きていた頃には、決して抱くことのなかった感情。
支配される喜び。所有される快楽。
「なんだ、この気持ちは……。胸が苦しいのに……どうしようもなく、気持ちいい……」
彼女は自分の体を抱きしめる。
主のリメイクによって削ぎ落とされたのは、無駄な贅肉だけではない。
「男としての矜持」や「独立心」といった不要な自我もまた、綺麗さっぱり削除されていたのだ。
残ったのは、純粋培養された「忠誠心」と、変質した「愛」。
ヒュンッ!
エリーは地面を蹴った。
風になる。
以前とは比べ物にならない速度で、夜の廃棄都市を駆ける。
(速い……! なんて素晴らしい体だ!)
この速さは、逃げるためのものではない。
主の敵を、誰よりも早く排除するための刃。
そして、主が呼んだ時、誰よりも早く駆けつけるための翼だ。
一頻り駆け回った後、エリーは音もなく拠点へと戻ってきた。
リオンが眠るテントの前に立つ。
彼女はテントの布越しに、中の主の寝息を感じ取り、恍惚とした表情で呟いた。
「リオン様……。このエリー、貴方様の理想の作品として、一生お側におります」
闇の中で、紅い瞳が妖しく光る。
「貴方様の剣となり、盾となり……そしていずれは『妻』となりましょう」
彼女は勘違いしていた。
主はただ、名前を間違えただけなのだと。
だが、一度暴走した愛の機関車は、もう誰にも止められない。
「ふふっ……愛しています、私の創造主様……♡」
廃棄都市の夜風に乗って、銀髪の乙女の重すぎる誓いが溶けていった。
【おしらせ】
※2/13(金)
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