表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/74

62.黒い土と、希望の種まき


 黄金の種もみ(麦)を手に入れたわたし達は、さっそく拠点の裏手に広がる荒れ地へと移動した。

 瓦礫と有毒な汚泥が広がる、不毛の大地だ。


「土は毒で汚染されてるし、小石だらけのゴミ溜めだ。とても農業には適さない土地だぜ?」


 と、コノア。

 もっともな疑問である。


「大丈夫だぜ! 兄貴がなんとかすんだろ! へい! 兄貴! 最高の田んぼを作りましょうや!」


 相棒のコノワは能天気に張り切って、くわを構えている。

 部下たちもやる気満々だ。


「まずは水を引いてきて、ここを泥沼にしなきゃな!」

「川から水を汲んでこい!」

「ちょっとストップ」


 わたしは慌てて彼らを止めた。


「小麦は『畑』で作るんだよ。田んぼみたいに水浸しにすると、根腐れしちゃうからね」

「へ? そうなんすか?」

「うん。必要なのは水じゃなくて、ふかふかの『土』さ」


 わたしは足元の硬い地面をコンコンと踏み鳴らす。


「まずは、この瓦礫の山をどかそう。……でも、ただ捨てるんじゃないよ」


 わたしは指示を飛ばす。


「君たちには分別作業を任せる。鉄くずやプラスチックは、いつものように資源として回収。そして、腐った木材や生ゴミ……本来なら燃やすしかないゴミは、別にして集めてほしい」


 確かに、遠隔買取で一気に除去するやり方もある。

 でも、あれは結局除去した後に、わたしが一人で分別作業をしないといけないのだ。


 広範囲の買取が可能になり、たくさんゲットできるようになった。

 けれど、たくさん買い取ったものを分別するのに、かえって手間がかかるようになってしまったんだ。


 より資源を効率よく使うことを考えるなら、手分けした方が良いときもある。

 全部じゃないよ? そういう時もあるってことだ。


「生ゴミっすか? そんな汚ねぇもん、何に使うんで?」

「これが、土の栄養(肥料)になるんだよ」


 リサイクルショップの基本だ。

 ゴミをゴミとして捨てず、資源として活用する。


「了解っす! おい、生ゴミを集めろぉ!」


 資源回収部隊の動きは素早かった。

 数百人のマンパワーであっという間に瓦礫が撤去され、一箇所に大量の生ゴミの山が築かれる。


「よし、ここからがわたしの仕事だね」


 わたしは瓦礫がなくなり、剥き出しになった灰色の地面に立つ。

 長年の汚染でカチカチに固まり、所々毒で汚染された死んだ土だ。

 ここに、集めた生ゴミをぶちまける。


「スキル発動――【仕様変更リメイク】!」


 ズズズッ……!


 わたしの魔力が、地面と生ゴミを包み込む。

 イメージするのは『浄化』と『融合』。

 土壌に含まれる有害物質を分解し、生ゴミを有機肥料として土に馴染ませる。

 本来なら数年かかる土壌改良を、魔力で強制的に完了させる。


 ボコッ、ボココッ……。


 灰色の地面が波打ち、変色していく。

 硬く冷たい感触が消え、空気を含んだように膨らんでいく。


「な……土が、黒くなっていくぞ!?」


 数秒後。

 そこには、見渡す限りの「黒土」が広がっていた。

 踏みしめると、ふかふかと柔らかい感触が返ってくる。

 腐敗臭は消え、代わりに森のような甘く芳醇な土の匂いが漂う。


「すげぇ……これがあの汚染された土地かよ……」

「まるで高級な花壇の土だ……」

「これなら、どんな野菜だって育つよ」


 わたしは額の汗を拭い、コノワたちに振り返る。


「さあ、種まきだ。みんな、一列に並んで」


 わたしの号令で、部下たちが横一列に整列する。

 全員の手には、先ほど改良した『リオン小麦1号』が握られている。


「いくよ。自分たちの未来の食い扶持だ。願いを込めて蒔いて」

「おうっ!」


 一斉に、腕が振られる。

 黄金色の種が、黒い土の上にパラパラと舞い降りる。

 それは、死の世界だった廃棄都市に、初めて「生産」という概念が生まれた瞬間だった。


 最後に、みんなで手分けして水やりをする。


 シャワワワ……。


 優しく水を撒いていく。

 すると。


 ポコッ。ポコポコッ。


「ああっ!? 兄貴、見てくだせぇ!」


 コノワが指差す先で、黒土を割って、小さな「緑の芽」が顔を出した。

 一つだけではない。

 次々と、可愛い双葉が大地に生まれていく。


「うおおおおおっ! 芽が出たぁぁぁ!!」

「生きてる! この死んだ街で、植物が生きてるぞぉぉ!!」


 男たちが歓声を上げ、抱き合って喜んでいる。

 ただの芽だ。

 でも、彼らにとっては、明日への希望そのものなのだろう。


「このペースなら、数日で収穫できるね」


 わたしは広がる緑の絨毯を見渡して、ニヤリと笑う。


「よし、収穫祭の準備も始めようか。……小麦ができたら、最高の『ラーメン』を食わせてあげるからね」

「らーめん!? なんだか知らねぇけど、絶対美味いやつだ!」


 湧き上がる歓声の中、わたし達の農場開拓は、最高の結果で幕を開けたのだった。

【お知らせ】

※2/5(木)


好評につき、連載版、投稿しました!



『【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない』


https://ncode.syosetu.com/n8005ls/


広告下↓のリンクから飛べます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ