60.早朝の大行列と、黄金のコロッケ
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
コノワたちを餌付けした、翌朝のこと。
外の喧騒で目を覚ましたわたしが、拠点の入り口を開けると――そこには異様な光景が広がっていた。
「おい! 列を乱すなよ! 順番を守れねぇ奴は、この『警備隊長』様が許さねぇぞ!」
「へ、へい! すんませんコノワさん!」
コノワが張り切って仕切っている先には、なんと百人もの薄汚れた男たちが長蛇の列を作っていたのだ。
「だれこれ……?」
「全員、キエリュウの縄張りに住む、弱小グループやホームレスたちですわ」
そう答えたのは、アナだ。
彼女は本日の『リオン担当』当番である。どうやら朝から情報収集をしてくれていたらしい。さすが有能秘書だ。
並んでいる彼らの目は、まるで餓えた野獣のようにギラギラと輝いている。
「……すごい数だね」
「あ、リオンの兄貴! おはようございます!」
わたしに気づいたコノワが、直立不動で敬礼する。
「昨日の『マヨネーズ芋』の噂を聞きつけて、こいつら集まってきやがって……追い返しますか?」
「ううん、いいよ。来る者は拒まずだ」
わたしは列を見渡す。
これだけの人数だ。ただの蒸かし芋だけじゃ、少し味気ないし、満足度も低いかもしれない。
せっかくなら、もっと強烈なインパクトを与えて、完全に心を掴みたい。
「よし。今日は、とっておきのメニューを作ろう」
わたしはキッチン(と言っても野外だが)へ向かい、以前この廃棄都市で【買取】し、貯蔵していたアイテムリストを眺める。
目についたのは、昨日回収した「廃棄されたパン」の山だ。
カビが生え、石のようにカチカチに乾燥している。普通なら食べられないゴミだ。
「まずは、これを……スキル発動【商品修繕】!」
わたしの手から光が溢れる。
カビが消え、硬直したパンが、焼きたてのようなふっくらとした状態に戻っていく。
「おお、美味そうなパンじゃの」
匂いに釣られて、トールがやってくる。
「あ、トール。実はこういうのが欲しくて……」
わたしは作りたい物のざっくりとした概要を話す。
すると彼女はすぐに「こんな感じ?」とサラサラと図面を引いてくれた。
その図面を元に、手近な廃材を【仕様変更】し、即席の『粉砕機』を作成した。
なお、資材については心配ない。この場にいない『少年の部』のみんなが、遠隔でジャンジャン買取してくれているので、ポイントと在庫は常時貯まっていくのだ
わたしはパンを、トールに作ってもらった粉砕機に投入した。
ガリガリガリ……ッ!
瞬く間に、粗目の「生パン粉」が大量に生産される。
「次は、油だね」
わたしは、あの『イキリ太郎』たちから回収した、ドロドロの黒い廃油が入ったドラム缶に手を触れる。
「【商品修繕】!」
不純物が取り除かれ、酸化した油が還元される。
黒い液体は、透き通るような黄金色の「サラダ油」へと生まれ変わった。
「準備完了。ガラ、芋を潰して!」
「あいよっ!」
ガラが蒸した芋を豪快にマッシュする。
そこに、昨日好評だったマヨネーズを少し混ぜ込み、コクを出す。
さらに、廃棄肉を加工したミンチを混ぜて、小判型に成形。
パン粉をたっぷりとまぶせば、あとは揚げるだけだ。
ジュワァァァァァ……ッ!!
高温の油に種を投入する。
心地よい音と共に、香ばしい匂いが爆発的に広がる。
油の匂い。
それは、飢えた人間にとって、理性を破壊する最強の兵器だ。
「な、なんだこの匂いは……!?」
「脂っこい、すげぇいい匂いがするぞ!?」
列に並ぶ男たちが、鼻をヒクヒクさせてざわめき始める。
わたしは家臣たちと共に、作り上げた『それ』を持って、彼らのもとへ向かった。
「はい、おまたせ。揚げたての『コロッケ』だよ」
きつね色に揚がった熱々のコロッケを、わたしは彼らに配給した。
彼らは震える手でそれを受け取り、恐る恐る口へと運ぶ。
サクッ……!
軽快な音が響く。
その直後、衣の中から熱々の芋と肉汁が溢れ出す。
「――ッ!!?」
男たちの目が飛び出さんばかりに見開かれた。
「あ、あつっ、うめぇぇぇ!! なんだこれ!? 外側がサクサクで、中がトロットロだ!!」
「脂だ! 久しぶりの脂の味だぁぁ!!」
「ううっ……こんなご馳走、夢じゃねぇよな……!?」
あちこちで慟哭が上がる。
揚げ物という、カロリーの暴力。
それは彼らの心身に染み渡り、生きる活力を呼び覚ます味だった。
「兄貴ぃぃ!! 一生ついていきますぅぅ!!」
「おかわり! おかわりくだせぇ!!」
殺到する男たちに、わたしはニヤリと笑って条件を突きつける。
「おかわりは大歓迎だけど、タダじゃないよ」
「えっ……金ならねぇっすよ……」
「金はいらない。その代わり――『ゴミ』を持ってきて」
わたしは周囲のガレキの山を指差した。
「壊れた機械、鉄くず、謎の植物……なんでもいい。この街に落ちている『ゴミ』を拾ってきてくれたら、その対価としてコロッケをあげる」
その瞬間。
彼らの目の色が変わった。
「ゴミで……このご馳走が食えるのか!?」
「うおおおおお! ゴミだ! ゴミを探せぇぇ!!」
「この街のゴミは全部俺のもんだぁぁ!!」
ドワーッ! と数百人の男たちが、蜘蛛の子を散らすように駆け出していく。
彼らはもはや、ただの浮浪者ではない。
わたしの忠実な「資源回収部隊」だ。
「ふふふ。これで、座っているだけで資源が集まるようになったね」
わたしは揚げたてのコロッケを齧りながら、満足げにその光景を眺めるのだった。
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