58.ソウルフレンドと、借り物の威圧感
攻撃の「日本刀」、防御の「自動盾」。
最強の矛と盾を手に入れたわたし達は、さっそく行動を開始した。
最初の目標は、拠点のすぐ隣、廃ビル街を縄張りにしている中規模グループだ。
「おい、お前ら! ここが誰のシマだか分かってんのかぁ!?」
廃ビルの角を曲がったところで、予想通り、チンピラ風の男たちが道を塞いできた。
数は十人ほど。
モヒカンやチェーンソー、鉄パイプで武装した、いかにもな「廃棄族」の下っ端たちだ。
「あ? なんだお前ら。見ねぇ顔だな」
リーダー格らしき男が、錆びた鉈を肩に担いで進み出てくる。
その後ろには、弟分らしき男が一人。
「君たちは?」
わたしが尋ねると、男はニヤリと笑って名乗りを上げた。
「俺は、第十三支部の突撃隊長! 『コノワ・デ・キエリュウ』様だ!」
「俺は、その補佐! 『コノア・ト・キエリュウ』だ!」
コノワと、コノア。
そして、後ろに付く「デ・キエリュウ」と「ト・キエリュウ」の響き。
「……君たち、兄弟か家族なの?」
「あ?」
「名前、そっくりだから」
わたしが素朴な疑問を口にすると、コノワとコノアは顔を見合わせ、二人同時に胸を張った。
「馬鹿野郎! 俺たちは『魂の友』だ! 血の繋がりなんてねぇ!」
「そうだ! 偉大なるキエリュウ様にあやかって、ファミリーネームを頂戴してるだけだ!」
なるほど。
どうやらキエリュウという竜人は、カリスマ性だけは無駄にあるらしい。
勝手に名前を使われているだけかもしれないが。
「まあいいや。コノワ、コノア。わたしたちは争う気はないんだ」
わたしは努めて穏便に、両手を広げて見せた。
「まずは顔合わせと、交渉をしに来ただけだよ。話を聞いて――」
「ハッ! 笑わせんじゃねぇぞ!」
コノワが唾を吐き捨てる。
「そんなガチガチに固めておいて、なにが『争う気はない』だ! やる気満々じゃねーか!」
彼が指差したのは、わたしの後ろに控えるガラたちだ。
手には、ギラギラと輝く抜き身の日本刀。
腕には、怪しく光る魔導リストバンド。
全員が殺気立った目で、臨戦態勢をとっている。
「……あー」
確かに、客観的に見れば「殴り込み部隊」にしか見えない。
説得力ゼロだ。
「問答無用だ! その上等な装備、剥ぎ取って俺たちのモンにしてやるぜ! 野郎ども、やっちまえ!!」
「「「ヒャッハー!!」」」
交渉決裂。
コノワの号令と共に、下っ端たちが一斉に襲いかかってきた。
「き、来た!?」
先頭に立っていたガラが、恐怖で身をすくめる。
勇敢な彼女であっても、びびってしまう。それは、こないだキエリュウとキリカが引き分けたからだろう。
いくら装備が良くても、ガラの中身はまだ素人だ。
彼女に向け、コノワの錆びた鉈が振り下ろされる。
「死ねやオラァッ!!」
「あ、あたい、死――」
ガラが目を瞑った、その瞬間。
カッ!!
腕のリストバンドが赤く発光した。
ガギィィィンッ!!
甲高い金属音。
コノワの鉈は、ガラの鼻先数センチのところで、見えない壁に弾かれていた。
黒い六角形の光――「自動盾」が展開されたのだ。
「な、なんだコリャ!?」
コノワが驚愕に目を見開く。
だが、真の驚きはここからだった。
ズズズズズ……ッ。
展開されたシールドから、重苦しい、どす黒い「気配」が漏れ出したのだ。
動力源となっている『高濃度魔力結晶』。
そこから、圧縮されたキエリュウの魔力が排熱として放出されたのである。
「ヒッ……!?」
コノワの顔色が、一瞬で青ざめた。
「こ、この重苦しいプレッシャーは……ボス!? いや、幹部クラスの魔力だ!」
「な、なんでこいつらから、キエリュウ様の気配がするんだよ!?」
下っ端たちが足を止め、ガタガタと震え出す。
彼らにとって、キエリュウの魔力は絶対的な恐怖の象徴だ。
それが、目の前の敵から漂っている。
「まさか……こいつら、ボスの親族か何かなのか!? 隠し子か!?」
勝手な勘違いをして、パニックに陥っている。
好機だ。
「――今だ。踏み込んで斬れ」
キリカの冷徹な声が響く。
「防御は完璧だ。恐れるな、ただ前に出て刀を振るだけでいい」
「お、おおっ!」
キリカの言葉と、無傷だった事実に勇気を得て、ガラが踏み込む。
へっぴり腰だが、手にした武器は「国宝級」だ。
「や、やぁっ!」
振るわれた日本刀が、コノワの鉈と交差する。
スパンッ!
乾いた音がした。
次の瞬間、コノワの鉈は、まるでチーズのように真っ二つに切断されていた。
「な、俺の『ミスリルコーティング・鉈』がぁぁ!?」
「す、すげぇ……!」
ガラが自分の手を見て驚く。
ただ振っただけだ。それだけで、相手の武器ごと防具を切り裂いてしまった。
「ひ、ひぃぃ! なんだこいつら! ボスの魔力を持ってる上に、武器も化け物だ!」
「か、勝てねぇ! 逃げろ!」
心の折れる音が聞こえた気がした。
武器を壊され、謎の威圧感にビビらされたコノワたちは、武器を放り出してその場に平伏した。
「ま、参りましたぁぁ!! 命だけは助けてくれぇぇ!!」
全員揃って土下座。
圧倒的な完全勝利だった。
「だから言ったのに……」
わたしは呆れつつも、コノワたちの前に歩み寄る。
そして、切断された鉈を拾い上げた。
「スキル発動――【商品修繕】」
瞬時に鉈が元通りになる。
それを見て、コノワたちが目を丸くした。
「なっ……直った!?」
「壊れた武器は直してあげる。……ね、わたしたちの話、聞いてくれるよね?」
わたしはニッコリと、営業用の笑顔を向ける。
恐怖を与えた後の、利益。
これで落ちない相手はいない。
「は、はいぃぃ! なんでも聞きますぅぅ!」
こうして、最初の「オセロの駒」は、あっさりとひっくり返ったのだった。
【おしらせ】
※2/2(月)
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