53.剣聖vs瞬速の竜人! 垂れ流しの魔力は『資源』です
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「まずは、貴様からだ」
キエリュウが、わたしを見た。
そう認識した瞬間、彼の姿がかき消えた。
速い、なんてレベルじゃない。
ガラやトールの動体視力では、動いたことすら認識できていないだろう。
瞬きするよりも速く、死の爪がわたしの首に迫る。
キンッ!!
耳をつんざくような金属音が、室内に響き渡った。
わたしの目の前で、火花が散る。
「……ッ、させないぞ!」
「ほう? 俺の速度についてくるか」
キエリュウの鋭利な爪を、キリカが剣で受け止めていた。
神速の抜刀。
間一髪で、わたしと敵の間に割り込んだのだ。
だが、キリカの表情は険しい。
「はっ、はっ、はっ!」
キエリュウが連続攻撃を仕掛ける。
そのすべてが、目に見えないほどの超高速だ。
キリカは防戦一方となり、じりじりと後ろへ下がっていく。
壁が切り裂かれ、床が抉れ、優雅なティールームがあっという間に戦場へと変わる。
「キリカ! 魔剣を使うのです! 『暴食』なら、あんな奴一撃でしょう!?」
アナが叫ぶ。
けれど、わたしは冷静に首を横に振る。
「多分、できないんだ。グーラの『捕食』にしろ、『暴虐なる暴食』にしろ、発動には一瞬の『タメ』がいるからね」
「! なるほど……隙ができてしまうと。それを見抜くとは、さすがリオン様」
キリカの持つ魔剣『暴食のグーラ』は、空間ごと敵を喰らい尽くす最強の武器だ。
あれを使えば、こんなトカゲ野郎に後れを取るはずがない。
しかしキエリュウの速度は、その一瞬すら許さないのだ。
能力を発動しようとした瞬間に、首を刎ねられる。
「くっ、重い……!」
キリカが純粋な剣技だけで捌こうとするが、徐々に押されていく。
技術はキリカが上だ。
でも、基礎的な身体能力の出力が違いすぎる。
「アナ、あいつの強さの源は、なんだと思う?」
わたしは博識なアナに尋ねてみる。
「おそらく魔力による、強引な身体強化ですわ」
アナが冷静に、しかし焦りを滲ませて解析する。
「あの男、体内で魔力を爆発させ、常時身体能力を限界突破させています。燃費度外視、エンジンの出力を無理やり上げ続けているようなものです!」
「なるほど、デタラメな力技ってわけか」
わたしは改めて、キエリュウを観察する。
確かに、すごい。
何がすごいって、その「無駄」っぷりがだ。
キエリュウの体からは、使い切れなかった余剰魔力が、盛大に噴出していた。
まるで、穴の空いたバケツから水を垂れ流しながら走っているようなものだ。
「うわぁ……すごい垂れ流しだ。なんでああも垂れ流すんだろう」
わたしは思わず眉をひそめる。
「あ? 何を言っている? これは我ら廃棄族の誇り高き魔力だぞ!」
キエリュウが動きを止めずに吠える。
「この溢れ出る魔力の光こそが強さの象徴!」
だから隠さないと。
ふぅん。
でも、わたしには「排気ガス」にしか見えない。
そう、そうだよ。あれは『排気ガス』だ。
ならば!
「もったいないから貰うね!」
わたしは右手をかざす。
対象は、キエリュウから垂れ流されている膨大な魔力エネルギー。
「スキル発動――【買取】」
ギューーーーーーーーン!!
突如、部屋の中に掃除機のような音が響き渡った。
「な、なんだ!?」
キエリュウが目を見開く。
彼の体から噴き出していた黒いオーラが、渦を巻き、わたしの手のひらへと吸い込まれていく。
換気扇なんてレベルじゃない。
ダイソンもびっくりの吸引力だ。
「か、体が重い……!? 俺の魔力が……抜けていく!?」
燃料を抜かれたエンジンが止まるように、キエリュウの動きがガクンと鈍る。
「吸われたくないなら、魔力を体の内に隠せばいいのに。そうすれば買取対象から外れるよ」
わたしは親切にアドバイスしてあげる。
魔力を体内で循環させ、外に漏らさなければ、わたしも手出しできない。
一流の魔術師なら当たり前にやることだ。
だが、キエリュウは血走った目でわたしを睨んだ。
「魔力を隠すだと!? そんなコソコソした真似ができるか! 魔力の大きさこそが強さの証明! 隠すなど臆病者のすることだ!」
「へぇ、プライド高いね。じゃあ遠慮なく」
ギュイイイイイイイ!!
さらに吸引力を上げる。
隠さないなら、それはただの「フリー素材」だ。
無限に湧き出る魔力を、わたしは片っ端からポイントに変換していく。
「ぐ、ぐおおおおおッ! き、貴様ぁぁぁ!」
魔力が枯渇し、強化が解けたキエリュウ。
「今だよキリカ!」
そこに、キリカの剣が閃く。
ザシュッ!
「がはっ!?」
鋭い一撃が、キエリュウの鋼鉄の鱗を切り裂き、胸に深い傷を刻んだ。
キリカの剣技が、速度の落ちた竜人を捉えたのだ。
「(馬鹿な……相性が悪すぎる! このままでは干からびる!)」
キエリュウがたじろぎ、バックステップで距離を取る。
その顔には、先程までの余裕はなく、明確な焦燥が浮かんでいた。
このまま戦えば、魔力を吸い尽くされてミイラになる。
そう悟ったのだろう。
「……チッ! 今日のところは見逃してやる!」
捨て台詞は三流だけど、判断は一流だった。
彼は残った魔力を爆発させると、その名の通り「即座に」姿を消した。
逃走だ。
「あーあ、逃げちゃった」
わたしは手を下ろす。
室内には静寂が戻った。
「ふぅ……助かりました、主」
キリカが剣を納め、額の汗を拭う。
あの剣聖をここまで消耗させるとは、やはり廃棄族、侮れないな。
「でも、すごい量の魔力が貯まったよ。彼、いい資源になりそうだね」
わたしはウィンドウに表示された獲得ポイントを見て、ニマリと笑う。
とりあえず撃退には成功した。
でもこれで、廃棄都市の支配者たちとの全面対決は、避けられないものとなったようだ。
【おしらせ】
※1/30(金)
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