52.廃棄族と廃棄王
【※おしらせ】
本日20時に、もう1話投稿します。
優雅なティータイムを楽しみながら、わたしはガラからこの都市の詳しい事情を聞くことにした。
これからここを改革するにあたって、現地の勢力図を知っておくのは基本だからね。
「この都市の構造は、ドーナツ型になってるんだ」
ガラがテーブルに置かれたクッキーをサクりと齧りながら、指で輪っかを描く。
「アタイらがいた入り口付近や、外周部分は『外街』って呼ばれてる。ここには、比較的小規模なゴロツキや、弱小グループが群雄割拠してる状態さ。さっきの連中も、その一つだね」
なるほど。
まあ、あの程度の連中なら、わたしたちの敵じゃない。
「じゃあ、真ん中の穴の部分は?」
「『中枢街』。……そこは別世界だ」
ガラの声のトーンが、急に低くなる。
ふざけた雰囲気は消え、その瞳には明らかな「畏怖」が浮かんでいた。
「そこには、都市最強の支配者――『廃棄王』が君臨してる」
「廃棄王……? 王様がいるの?」
「ああ。奴が率いているのは『廃棄族』と呼ばれる連中だ。人間じゃねぇ。どこからかこの都市に流れてきた、人外の化け物たちさ」
廃棄族、かぁ。
人間じゃないとなると、亜人や魔族の類だろうか。
ガラが続ける。
「昔、この都市はもっと酷い無法地帯だったらしい。毎日殺し合い、奪い合い、死体が山のように積まれていた。……だが、奴らが現れて変わった」
廃棄族たちは、圧倒的な「暴力」で都市を制圧した。
そして、一つのルールを作ったらしい。
それは『廃棄王に逆らうな。上納金を納めろ。さもなくば消す』という、シンプルかつ絶対的なものだ。
「つまり、奴らが恐怖で秩序を作ったってわけさ。……特に王の側近である幹部クラスはヤバい。アタイも遠くから見たことあるが、ありゃ生物としての格が違う」
ふむ。
どうやら、単なるゴロツキの親玉とは訳が違うようだ。
人間離れした強さを持つ、謎の種族。
交渉が通じる相手かどうかも怪しいな。
「会いに行ってみる?」
わたしが提案すると、ガラは「死ぬぞ」と即答した。
「やめときな大将。奴らは人間を『自分たちを捨てた敵』か、あるいは『ゴミ』としか思ってねぇ。いきなり乗り込んでも、問答無用で消し炭にされるのがオチだ」
確かに。
信頼関係ゼロの状態で、化け物の巣窟に飛び込むのはリスクが高すぎるか。
それに、いきなりボスを倒しても、外周の治安が悪いままじゃ、物流も確保できないしね。
「分かった。じゃあ『オセロ作戦』でいこう」
「オセロ?」
「うん。まずは外側の弱いグループから順番に攻略して、わたしの傘下に収める。そうやって外堀を埋めて、力をつけてから、堂々と王様に会いに行くよ」
まずは地盤固めだ。
わたしがそう方針を決めて、香り高い紅茶を飲み干した、その時だった。
ドォォォォォォン!!
突然、窓の外で凄まじい爆音が響いた。
ガタガタと拠点が揺れるほどの衝撃。
警報装置が作動する暇すらない、唐突な破壊音だった。
「な、なんだ!?」
トールが血相を変えて立ち上がる。
わたし達は急いで窓から外を覗いた。
そして、目を疑った。
「嘘……でしょ……?」
家の前で、仁王立ちしていたはずのスクラップ・ガーディアン。
天才トールが作った、鉄壁のゴーレムが。
粉々に砕け散っていたのだ。
まるで、積み木を蹴り飛ばしたかのように、鉄屑の雨となって散らばっている。
「ば、馬鹿な! わしの最高傑作が……一撃じゃと!?」
トールが悲鳴を上げ、ガクリと膝をつく。
その瓦礫の中心に、一つの影が立っていた。
全身を漆黒の鱗に覆われた、二足歩行の竜人。
背中からは太い尻尾が伸び、鋭い爪は鉄骨を豆腐のように引き裂いていた。
そして、その額からは一本の鋭い角が生えている。
「……脆い。これが新入りの自慢の兵器か?」
竜人がつまらなそうに呟く。
その体から放たれるどす黒いプレッシャーは、先程の盗賊たちとは次元が違った。
本能が警鐘を鳴らす。
あいつは、ヤバい。
「あ、あいつは……! 廃棄族だ!」
ガラが顔を青くして叫ぶ。
「廃棄王の側近……廃棄族の幹部だ! なんであいつがここに!?」
竜人が、ゆっくりとこちらを見上げる。
その爬虫類のような縦に割れた瞳と、視線が合った。
「報告通りだな。……我が領土に巣食う、新たなゴミ溜めというのは」
どうやら、さっき追い払った盗賊たちが、中央に泣きついたらしい。
変な奴が城を建てて暴れている、と。
その「始末」のために、わざわざ幹部自らが出張ってきたというわけか。
「名乗らせてもらおう、余所者よ。我名は【キエリュウ】。【ソクザ・二・キエリュウ】!」
「ソクザ・二・キエリュウ……だって?」
どうしよう、なんかあんまり強そうに聞こえないや。
即座に消えるって、ネタキャラみたいな名前だ。
でも、ゴーレムを倒したのは間違いなく、あのキエリュウとかいうおかしな名前の廃棄族だ。
「この鉄屑人形の次は貴様らが、このゴミのようになる番だぞ」
キエリュウがニヤリと笑う。
圧倒的な暴力の化身が、わたし達に牙を剥いた。
【※おしらせ】
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