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51.廃棄都市は宝の山!? 優雅な内装と鉄壁の防衛



 ゴーレムという頼もしい番犬もできたことだし、さっそく完成したばかりの拠点の中に入ってみる。

 外見はただの石造りの四角い建物だけど、リメイクで作った壁は分厚く、隙間風も入らない。


「でも、中はがらんどうだね」


 あるのは石の床と壁だけ。

 スキル【商品修繕リペア】はあくまで、壊れた対象を「元通り」にする力だ。

 崩れた建物は直せても、内装――つまり中にあったソファやテーブルまでは戻せない。

 おそらく誰かが盗っていったのだろう。建物の一部ではない残留物は、修繕の効果範囲外なのだ。


 しかし、このままじゃあ、会議どころか休憩もままならない。

 椅子もテーブルも、ベッドもないんじゃ、ただの頑丈な独房だ。


「家具を買いに行くか? 一番近い街まで魔導車ならすぐだろ?」


 ガラが提案してくれるけど、わたしは首を横に振る。


「ううん、その必要はないよ。……だって、この廃棄都市には『材料』が山ほどあるからね」


 わたしは【貯蔵ストック】を開く。

 さっきの整地で回収した「廃棄都市のゴミ」が大量に収納されている。

 空中にウィンドウを開き、収納リストをスクロールして眺めていると、あることに気がついた。


「……これ、使えるかも」


 わたしはストックから、いくつかのガラクタを取り出す。

 出てきたのは、脚の折れたソファー、天板が割れたテーブル、錆びついたシャンデリア……。


「主よ、ゴミなんて取り出して、一体何をするというのだ?」


 キリカが不思議そうに小首をかしげる。

 確かにこのどれもが、ボロボロでカビ臭い。

 けれど、装飾を見るに、元はかなり高価な品だったようだ。

 恐らく、王都や大都市の貴族が、壊れたから捨てたものだろう。

 これらはゴミだ。でも、わたしにとっては『お宝』だ。


 わたしはガラクタの山に手をかざす。

 元の形は分かっている。なら、作り変えるまでもない。

 時間を巻き戻すように、直すだけだ。


「スキル発動……【商品修繕リペア】!」


 淡い光が家具を包み込む。

 折れた脚が繋がり、破れた布地が塞がり、錆が落ちて金色の輝きを取り戻す。

 数秒後。

 そこには、王宮にあってもおかしくないような、ピカピカの最高級家具セットが並んでいた。


「なっ!? なんだこりゃあ!?」

「魔法……いえ、時間を戻したかのようです」


 ガラとアナが目を丸くする。


「元が良いものだからね。直せば新品同様だよ」


 わたしはふかふかのソファーに腰を下ろす。

 うん、最高級の羽毛だ。座り心地も抜群。

 あとは仕上げだ。


「このシャンデリア、魔道具じゃな。魔石をセットすれば普通に使えるぞ!」


 トールが目を輝かせてシャンデリアを点検する。


「キリカ、天井にこれ吊るして」

「わかったぞ」


 キリカが身軽に跳躍し、天井のフックにシャンデリアを固定した。

 カッ!

 魔石の魔力が供給され、部屋の中が一気に明るくなる。


 殺風景だった灰色の石室が、暖かなオレンジ色の光に満たされ、磨き上げられたマホガニーのテーブルや、真紅のベルベットソファーが輝きだす。

 そこはもう独房ではない。

 一泊数十万はしそうな、王都のホテルのスイートルームだ。


「お、おいおい……マジかよ」


 ガラが口をあんぐりと開けて、部屋を見渡す。

 さっきまで瓦礫の山だった場所が、貴族のサロンに早変わりしたのだ。

 彼女が驚くのも無理はない。


「……なぁ大将。もしかして、この都市に捨てられてるゴミって、全部直せるのか?」

「うん。原型があればね」

「マジかよ……。ここには世界中の『捨てられた品』が集まってくるんだぞ? それを全部直せたら……」


 ガラがゴクリと喉を鳴らす。

 そうなんだよね。

 今まで「ゴミ処理」だと思ってたけど、よく考えたら、ここはわたしにとって「タダで仕入れ放題の宝の山」なんじゃないだろうか?


「ふふっ、夢が広がるね。……アナ、お茶にしようか」


 とりあえず拠点もできて、一息つきたいところだしね。


「はい、リオン様。すぐに準備いたします」


 アナが手早くテーブルクロスを広げ、ティーセットを用意する。

 その茶葉も、さっきゴミ山から回収したものだ。

 中身が少し残ったまま捨てられていた高級茶葉の缶。

 わたしはそれにも【商品修繕リペア】をかけ、新品同様の香りと風味を蘇らせておいたのだ。


 こっちでも向こうでも、もったいないことをする人はいるものだ。

 まあ、わたしとしては、そういう存在がいた方が都合が良い。

 わたしのリサイクルの力が、最大限に発揮されるからね。


 さて、優雅なティータイムの始まりだ。

 そう思った、矢先だった。


「ギャァァァァッ!!」

「な、なんだこいつはぁぁ!?」

「剣が通じねぇぞ! ひいいいっ!」


 外から、男たちの悲鳴と、何かが叩き潰されるような轟音が響いてきた。


「……おや? どうやらお客様のようじゃのう」

「招かれざる客だけどね」


 トールがニヤリと笑い、わたし達は窓から外を覗く。

 そこでは、一方的な蹂躙劇が行われていた。


 拠点に近づこうとした盗賊たちが、スクラップ・ガーディアンこと、ゴーレムによってゴミのように排除されているのだ。

 剣で斬りかかっても、鋼鉄のボディには傷一つ付かない。

 魔法を撃ち込んでも、ビクともしない。

 逆に、ゴーレムが太い腕を軽く振るうだけで、盗賊たちはピンボールのように空を飛んでいく。


「た、助けてくれぇぇ!」

「ば、化け物だぁぁ!」


 あっという間に盗賊たちは逃げ去っていった。

 後には、静かに仁王立ちする鉄屑の守護神だけが残る。


「カッカッカ! どうじゃ! わしの最高傑作の性能は!」

「うん、文句なしだね。あ、殺しちゃだめだよ」

「わかっておるわい。一応あれでも『領民』じゃからだろ?」

「そういうこと」


 わたしはソファーに深く沈み込み、アナが淹れてくれた香り高い紅茶を啜る。

 外は世紀末の戦場。

 中は優雅な貴族のサロン。

 最高だ。


「よし、拠点の安全も確認できたし……。これからの計画を練ろうか」


 わたしはティーカップを置き、改めて仲間たちの顔を見渡した。

 宝の山に、鉄壁の要塞。

 廃棄都市改革の準備は整った。

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― 新着の感想 ―
“日本語”が通じるのであれば、廃棄勇者たちを説得しやすいかもね。
拠点はできた、ここからどう蹂躙していくのか、廃棄されてた元勇者たちが治めてるんだろうかそれともその子孫たち?
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