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48.魔導装甲車、爆誕!


 特大級の風の魔石を手に入れたわたしたちは、意気揚々と屋敷への帰路についていた。

 ぞろぞろ……と家臣たちを引き連れながら歩いて行く。


 頑張ってくれたみんな……ガラとキリカ、グーラには、ちゃんと褒めてあげないとね。


「いやー、それにしても凄かったね!」


 わたしは興奮気味に、並んで歩くキリカたちに声をかける。


「キリカのあの剣技! 『空喰』だっけ? あのストーム・イーグルの暴風結界を一撃で斬り裂いちゃうなんて、本当に格好良かったよ! さすが剣聖だね!」

「……ふひ。ふ、ふふ……あ、ありがと……ふひっ。や、やめてよぉ主ぃ……そんな褒められたら……ぼ、ボク……ど、どうにかなっちゃいそうだよぉ」


 なんだかちょこっと気持ち悪い笑みを浮かべて、キリカがくねくねしている。

 普段のクールな剣聖様はどこへ行ったのやら。


「それにガラも! 初めて触る銃であんな遠くの的に当てちゃうなんて! やっぱりガラは戦闘の天才だよ!」

「へへっ、よせなよ大将。照れるじゃないか。ま、あの鉄の筒の扱いやすさが気に入っただけさ」


 ガラも鼻の下をこすって満更でもなさそうだ。

 この健康的な褐色の肌と、引き締まった肢体を持つ美女が、豪快に笑う姿は見ていて気持ちがいい。

 SSRな美女家臣たちが活躍してくれるのは、領主として本当に鼻が高い。


「グーラもありがとね。君がいなかったら、あの風のバリアを突破できなかったし」

「ああ……しみる……主の褒めが……しみるのじゃぁ~……」


 魔剣の柄に埋め込まれた目玉が、とろんとした色になっている。

 みんな褒められて、嬉しそうにしてくれている。

 こうして仲間たちと笑い合いながら、戦果を分かち合える瞬間が、わたしは何より好きだ。

 一人ぼっちで追放されたあの日の絶望が、嘘みたいに温かい。


「最高の素材も手に入ったし、みんなのおかげで最高の車が作れそうだよ。本当にありがとう、愛してるよみんな!」


 わたしが感謝の気持ちを込めてそう言うと。

 ピタリ、と二人の足が止まった。


「……愛してる、とな?」

「あ、大将、今なんて言った?」


 あれ? 空気が変わった?

 屋敷の前まで戻ってくると、出迎えてくれたアナも加わって、なんだかみんなの目が据わっている気がする。


「あ、主……。あ、あっちの茂みに一緒に……い、行こうか……。ああ……ほんと、何もしないから……」


「くふっ。素晴らしい戦果に、主様からの愛。……これはもう、お祝いに『お世継ぎ』を作るしかあるまいて」


 キリカとグーラ(とアナ)が、獲物を狙う肉食獣のような目でじりじりと距離を詰めてくる。

 さらに、ガラまでもが妖艶な手つきで、胸元のボタンを外し始めた。


「へへっ、大将。アタイのことまで愛してくれるってか? ……だったら、態度で示しておくれよ。たっぷりと可愛がってくれるんだろ?」


 豊満な胸元を晒しながら、舌なめずりをするガラ。

 ちょ、ちょっと刺激が強すぎる!


「わ、わぁぁ! ちょっと、みんな落ち着いて! 今は感動のクラフトタイムだから! そういうのは後で!」

「「「後でなら良いんですね!?」」」

「言ってない! わあぁん、トール助けてぇ!」


 発情した美女軍団から逃げるように、わたしは工房の前で待つトールの元へと駆け込んだ。


     ◇


「遅いぞ! 待ちくたびれたわ!」


 工房の前では、腕組みをしたドワーフの美少女、鍛冶師トールが仁王立ちしていた。

 彼女の目の前には、すでに全ての素材が並べられている。


 戦車を解体した大量の黒い「鋼鉄インゴット」。

 クルーザーから回収した「強化ガラス」と「ゴムタイヤ」。

 そして、わたしが持ち帰ったバレーボール大の「特級・風の魔石」だ。


「……主よ、なぜそなたらは皆、衣服がはだけておるのじゃ?」


 トールが呆れたようにわたし達を見る。

 うっ、痛いところを突かれた。


「き、気にしないで……それより、準備ありがと。はい、これ魔石」


 わたしは気まずさを誤魔化しながら、取ってきたばかりの魔石をトールに渡す。

 これで、必要な材料はすべて揃った。


「フン、完璧な素材じゃ。そして……これがわしの最高傑作じゃ!」


 トールがバサァッ! と巨大な設計図を広げる。

 そこには、わたしの現代知識と、トールの魔導技術が融合した、夢の乗り物の設計図が描かれていた。

 魔石を動力源とする複雑なエンジン構造も、完璧に計算されている。


「すごい……! これならいける!」

「うむ。わしの完璧な計算通りに魔力を流し込めば、失敗などありえん! さあ、やるのじゃ主よ!」


 わたしは頷き、素材の山に両手を添える。

 脳内にトールの設計図を読み込み、魔力を練り上げる。

 これまでの単純な修理リペアじゃない。

 これは、無から有を生み出す創造クリエイトだ!


「いくよ……スキル発動! 【仕様変更リメイク】!!」


 カッッッ!!!

 目を開けていられないほどの眩い光が、工房前を包み込む。

 光の中で、鋼鉄が飴細工のように形を変え、フレームを組み上げていく。

 風の魔石が精巧な魔導エンジンの中枢に収まり、ゴムがタイヤとなって装着される。

 本来なら何十人もの職人が数ヶ月かけて行う工程が、スキルによって一瞬で圧縮されていく。


 そして、光が収まった時。

 そこには、一台の「鉄の箱」が鎮座していた。


「おおおおおっ……!!」


 追いかけてきたアナたちも、その姿に足を止めて感嘆の声を漏らす。


 大きさは、前世でよく見た「ハイエース」のようなワンボックスカーくらいだ。

 小回りが利きそうで、なおかつ十分な積載量がある実用的なサイズ感。


 だが、その見た目はただの車ではない。

 戦車の装甲をそのまま流用した、艶消しブラックの武骨なボディ。

 タイヤは悪路でもへっちゃらな、極太のオフロード仕様。

 コンパクトながらも、「頑丈さ」が凝縮された鉄の塊といった雰囲気だ。


 ドアを開けて中を覗き込めば、中は意外と広々としている。

 シートはすべて上質な革張りで、居住性は抜群だ。


「完璧じゃ……! わしの設計通りの完璧な仕上がりじゃ!」

「うん、最高だよトール!」


 わたしは愛おしそうにボンネットを撫でる。

 ひんやりとした鋼鉄の感触がたまらない。


「さあ、早速試運転といこう! みんな乗って!」


     ◇


 わたしは運転席(もちろん右ハンドルだ)に乗り込む。

 助手席にはアナ。後ろの広い座席にはトール、キリカ、ガラが興奮気味に座った。

 ハイエースサイズなら、みんなで乗っても余裕がある。


「エンジン始動!」


 キーを回すと、ヒュォォォン……という、風が唸るような静かな音が響き、車体が微かに振動した。

 魔力充填完了。


「出発進行!」


 アクセルを踏み込む。

 瞬間、背中がシートに押し付けられるようなGがかかった。


「うひョオオオ! はえええええ!」

「す、すごいです! 景色が飛ぶように流れていきます!」


 完成したばかりのアスファルト道路を、魔導車が疾走する。

 時速は80キロを超えているだろう。

 なのに、振動はほとんどない。まるで氷の上を滑っているようだ。

 窓の外では、白骨樹の森が一瞬で後ろへと過ぎ去っていく。


「カッカッカ! どうじゃ! これがわしの技術力じゃー!」

「快適ですね。これなら、お茶を飲みながらでも移動できそうです」


 トールはふんぞり返って自慢し、キリカは涼しい顔で(でも尻尾があったら振ってそうな感じで)外を眺めている。


 大成功だ。

 最強の道と、最強の車。

 これで、廃棄都市デッドエンドまでの15キロなんて、庭みたいなものになった。


「よし……このまま乗り込むぞ! 目指すは廃棄都市だ!」


 わたしはハンドルを握り直し、アクセルをさらに深く踏み込んだ。

 魔導車は黒い弾丸となって、領地の深部へと突き進んでいった。

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