47.現代兵器の咆哮と、風の魔石
わたしたちは、市場調査スキルで特定したポイントへとやってきた。
そこは、森林地帯を抜けた先にある、切り立った断崖絶壁の上だった。
遮るもののない岩場は、常に強風が吹き荒れており、立っているだけでも体力を奪われそうだ。
ゴォォォォ……!
頭上から、凄まじい風切り音が響いてくる。
「来たか……!」
見上げれば、そこにいたのは巨大な鷲だった。
翼を広げれば10メートルは優にあるだろう。
全身に緑色の旋風を纏い、近づくもの全てを吹き飛ばす空の王者。
「あれが嵐鷲です。確か冒険者ギルドの討伐ランクでは、『A+』に指定されていたはずです」
博識なアナが、冷静に、しかし警戒を露わにして解説してくれる。
Aランクオーバー。騎士団が一個小隊で挑んで、全滅するかもしれないレベルの化け物だ。
キィェェェェェッ!!
上空の鷲が、甲高い鳴き声を上げたかと思うと、その口から緑色に輝く球体が吐き出された。
圧縮された空気の弾丸――ウィンド・バレットだ!
「リオン様、伏せてください!」
アナが瞬時にわたしを抱きかかえ、その場から退避する。
キリカとガラも左右に飛び散った。
ドゴォォォォォンッ!!
直後、わたしたちが立っていた岩場が爆散した。
土煙が晴れると、そこには巨大なクレーターが出来上がっていた。
直撃していれば、人の体など容易くミンチになっていただろう。
「ヒュウ……あっぶねぇな」
額に冷や汗を流しながら、ガラが立ち上がる。
だが、その表情に恐怖はない。むしろ、凶悪な笑みを浮かべていた。
「ケッ、でかい図体しやがって。晩飯は焼き鳥か?」
ガラが不敵に笑い、地面を蹴る。
驚異的な跳躍力で飛びかかり、その剛腕を鷲の胴体に叩き込もうとした、その瞬間。
ドォンッ!!
「ぐっ……!?」
鷲の周囲に展開されていた「風の壁」に弾かれ、ガラが空中で体勢を崩した。
そのまま地面に着地し、ザザッと足で土を削りながら後退する。
「チッ……なんて風圧だ。近づくことすらできねぇぞ」
「物理攻撃を弾く風の加護ですか。厄介ですね」
舌打ちするガラの前に、静かにキリカが進み出る。
彼女の手には、禍々しいオーラを放つ黒剣――魔剣グーラが握られていた。
『クックック……美味そうな風じゃのう』
剣の柄に埋め込まれた目玉がギョロリと動き、妖艶な女性の声が響く。
『あの程度の風、わらわの腹の足しにもならぬが……まあよい。キリカよ、デザート代わりに食ろうてやろう』
「主のためだ。今は力を貸してやろう」
キリカが腰を落とし、居合いの構えを取る。
相手は空の王者。鉄壁の風バリアを持つ難敵だ。
だが、剣聖と暴食の魔剣のコンビには関係ない。
「――暴食剣技・空喰」
キリカが一閃。
放たれた斬撃は、物理的な刃ではない。
空間ごとその場の魔力を削り取る、捕食の一撃だ。
バギィィィン!!
ガラスが割れるような音がして、鷲を包んでいた暴風のバリアが霧散した。
『ふん、粗末な味じゃ』
「守りは消えた! ガラ!」
「おうよ!」
キリカが叫ぶ。
バリアを喰われたストーム・イーグルは、身の危険を感じたのか、慌てて遥か上空へと退避しようと羽ばたいた。
賢い。
剣や拳の届かない高空から、一方的に魔法で攻撃するつもりだ。
「逃げる気かよ! あんな高くまで行かれたら、俺の拳も届かねぇぞ!」
ガラが悔しそうに叫ぶ。
わたしたちのパーティは近接戦闘に特化している。
魔法使いがいない分、空を飛ばれると手出しができないのだ。
だが。
「届くよ。……ガラ、これを使って」
わたしは【貯蔵】から、あるモノを取り出した。
黒光りする金属の筒。
イキリ太郎たちから回収した現代兵器――「アサルトライフル」だ。
「あ? なんだこりゃあ。鉄の杖か?」
「『銃』っていう武器だよ。ほら、イキリ太郎たちが遠くからパンパン音を鳴らして攻撃してきてたでしょ? あれだよ」
イキリ太郎たちは遠距離から一方的に撃っていたため、接近戦をしていたガラには、武器の全容が見えていなかったのだろう。
「使い方は簡単。ここを肩に当てて、しっかり握って、この引き金を引くだけ」
わたしはガラの太い腕にライフルを持たせ、構え方を教える。
8歳のわたしの身体じゃ、反動で肩が外れちゃうかもしれないけど、怪力のガラなら問題ないはずだ。
「こいつは魔力じゃなくて、火薬で鉛の弾を飛ばすんだ。弓矢よりも速く、遥か遠くまで届く」
「へぇ……面白ぇ」
ガラがニヤリと笑い、スコープを覗き込む。
野生の勘なのか、彼は一瞬で照準を合わせるコツを掴んだようだ。
逃げていく嵐鷲の背中を、銃口が捉える。
「落ちろ!」
ダダダダダダッ!!
乾いた破裂音が渓谷にこだまする。
マズルフラッシュと共に吐き出された鉛の弾丸は、音速を超えて空を裂き、回避行動を取ろうとした鷲の翼を正確に粉砕した。
肉が弾け、骨が砕ける。
「ギャァァァァァッ!?」
悲鳴と共に、空の王者はバランスを崩し、きりもみ状態で墜落していく。
「ヒュウ! すげぇ威力だ! 魔力も込めずにこれかよ!」
「トドメです!」
落下してきた巨大な体に、待ち構えていたキリカがトドメの一撃を叩き込む。
ズドンッ!
地響きと共に、ストーム・イーグルは絶命した。
◇
「ふぅ、終わったね」
わたしはガラから銃を受け取り、まだ熱を帯びている銃身を撫でてからストックにしまう。
やっぱり現代兵器は強力だ。
弾薬に限りはあるけれど、ここぞという時の切り札になる。
「さて、ここからはわたしの仕事だ」
わたしは死体に近づき、手を触れる。
「――【資源分別】!」
巨大な死体が光の粒子となって分解されていく。
羽根、肉、骨……そして。
「あった!」
わたしの手の中に残ったのは、バレーボールほどもある巨大な緑色の結晶。
純度100%、「特級・風の魔石」だ。
「これでエンジンが作れる! よし、帰ろう!」
最高の素材は手に入った。
あとは、これをトールの待つ工房へ持ち帰るだけだ。
わたしたちは大急ぎで屋敷へと戻った。
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※1/22(木)
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