44.辺境のゴミ拾い領主、鋼鉄の城壁を築く
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
チュンチュン……と、小鳥のさえずりが聞こえる。
わたしは朝日を浴びながら、バルコニーで優雅にモーニングティーを嗜んでいた。
「ふぅ……平和だなぁ」
眼下に広がるのは、活気に満ちたわたしの領地。
綺麗に整備された庭園。湯気を上げる大浴場、そして元気に働く領民たちの笑顔。
どこを見渡しても、ここが元・不毛の大地だとは思えないだろう。
――リオン・サイハーデン、8歳。
それが、今のわたしの名前だ。
わたしは、日本という異世界からの転生者だ。
剣と魔法の世界に貴族の第三子として生まれたものの、授かったスキルが【リサイクルショップ】という訳の分からないものだったせいで、「ゴミスキル」だと罵られ、実家を追放されてしまった。
おまけに、押し付けられた領地は、国中の廃棄物が不法投棄される最悪の「ゴミ溜め」領地。
普通なら、絶望して野垂れ死んでいただろう。
でも、彼らは知らなかったのだ。
わたしのスキルが、ゴミを宝に変える最強のチート能力だということを。
わたしはこの【リサイクルショップ】の力で、ゴミを買取、資源に変え、インフラを整え……こうして、最高の領地を作り上げたのだ。
……といっても、まだまだ課題は山積みだ。
整備できているのは、わたしの住む領主の館と、その周辺の集落だけ。
一歩外に出れば、そこはまだ手つかずの魔境だ。
鬱蒼と茂る魔の森に、かつての王都であり現在は魔物の巣窟となっている「巨大廃棄都市」。
海岸だって、ドック周辺は綺麗になったけれど、少し離れればまだ漂着ゴミと危険な水棲魔物が溢れている。
やるべきことは多い。
でも……わたしは、その責務を投げ出すつもりはなかった。
わたしが拾い、磨いた、可愛い宝石たち。
リサイクルショップ・リオンの店長は、店員(領民)たちを決して見捨てないのである。
「リオン様、お茶のおかわりはいかがですか?」
「あ、うん。お願い、アナ」
ポットを持って控えていたのは、専属メイドのアナ。
銀髪の美少女で、わたしの最初にして最高の家臣だ。
彼女がいなければ、今のわたしはいない。
「はっ! せいやっ!」
庭を見下ろせば、黒髪の剣士・キリカが朝の鍛錬に励んでいる。
その横では、神社の掃除をしているシスター服の鬼少女――桜香がいる。
彼女はこの土地に暮らす孤児達のお母さん役も務めてくれている。
他にも、セイレーンの真魚美、元ごろつき餓狼団のガラ。
暴食の魔剣グーラ、凄腕鍛冶師のトール。
気がつけば、わたしの周りにはSSR級の頼もしい仲間たちが集まっていた。
追放されたときは一人ぼっちだったのに、今はこんなに賑やかだ。
わたしは本当に、幸せ者だと思う。
◇
さて、感傷に浸るのもそこそこに、今日はやるべき仕事がある。
「トール、準備はできてる?」
「応とも! いつでもやれるぞ!」
屋敷の外へ出ると、ドワーフの鍛冶師・トールが、その手に巨大な製図(青焼き)を持って待っていた。
彼女の目の前には、丸太を組んで作った、屋敷を囲う防壁がある。
「木材が悪い訳じゃあないんじゃが、それを容易く突破する魔物もおる。やはり屋敷を守る防壁ならば、鉄の強度が欲しいところじゃな」
というわけで、今日はこの外壁の強化工事を行う。
ただし、ただ直すだけじゃない。
とびきりの「新素材」を使って、最強の防壁にアップグレードするのだ。
わたしは【貯蔵】から、あるものを取り出した。
わたしのスキル【リサイクルショップ】の基本機能は3つ。
1.ゴミを拾ってポイント(RP)を得る。
2.貯めたポイントでゴミを直す。
3.そして、買い取ったものを保管し、いつでも取り出せる【貯蔵】だ。
わたしはストックしていた「素材」を吐き出す。
ズドンッ! ズドンッ!
地面に置かれたのは、黒光りする金属のインゴット。
これは前回、イキリ太郎が持ち込んだ「クルーザー」を、新機能【資源分別】で分解して手に入れた、純度100%の「鋼鉄」だ。
この世界には存在しない、現代科学の結晶とも言える超硬度合金である。
「カッカッカ! 何度見ても惚れ惚れする鉄じゃわい! これを存分に使ってよいとの仰せじゃったからな、張り切って設計図を引いたぞ!」
トールが自信満々に図面を広げる。
そこには、鋼鉄を骨組みとして使い、石材と融合させるための緻密な計算が記されていた。
ここで使うのが、わたしの応用スキル――【仕様変更】だ。
対象物にポイントと魔力を注ぎ込み、別の形状や用途のものに作り変える力。
前までは、単にポイントを使って、わたしのイメージだけで生産を行っていた。
でもそれだと、ポイント消費が大きすぎるのと、イメージが曖昧だと「なんか違う」ものが出来てしまうという欠点があった。
そこで、トールの出番である。
本職の鍛冶師が引いた「正確な製図」を読み込み、イメージを強固に固定した状態でスキルを使う。
そうすることで、ポイント消費を最小限に抑えつつ、プロの設計通りの完璧な品物が作れるのだ!
「いくよ、トール!」
「うむ! 点火じゃあ!」
わたしは既存の木の防壁と、鋼鉄のインゴットに手を触れる。
「――【仕様変更】!」
カッ!!
眩い光が、外壁を包み込む。
光の中で、木材が石材へと質感を変え、そこに鋼鉄が骨格として混ざり合っていく音がする。
そして、光が収まった時。
そこには――。
「す、すげぇ……」
誰もが息を呑んだ。
そこには黒曜石のように輝く、滑らかで巨大な「城壁」がそびえ立っていた。
石の厚みと、鋼鉄の硬度。
その両方を併せ持った、難攻不落の防壁だ。
「こりゃあたまげた……! この辺りの石を食い破る『鋼鉄蟻』の強力な顎でも、これには傷一つ付けられんぞ!」
トールがハンマーで叩いてみるが、キィン! と高い音が響くだけで、ビクともしない。
大成功だ。
戦車の装甲並……いや、魔法による結合も加わって、それ以上の強度になっているかもしれない。
「さすがリオン様! これなら、どんな魔物の群れが来ても安心ですね!」
アナが嬉しそうに微笑む。
うんうん、これなら安心して夜も眠れるというものだ。
わたしは、黒く輝く頼もしい城壁を見上げ、そしてその向こう側――領地の中心部にある「巨大廃棄都市」の方角を見据えた。
「守りは固まった。……さあ、次は攻めの番だね」
「リオン様♡」
「ん?」
背後から、甘い声がした。
振り返ると、そこには頬を赤らめたアナ、キリカ、桜香、真魚美、ガラ、グーラ……SSR家臣団が勢揃いしていた。
なんだろう、みんな目が据わっている気がする。
「良い拠点は、良い生活を作ります。……そして」
「良い『世継ぎ』を作るための、安息の地にもなるな」
アナとキリカが、じりじりと距離を詰めてくる。
「いやいやいや……世継ぎって、わたし8歳! まだ子供だから!」
「だからこそです! 今のうちから英才教育(性教育)を施し、立派なご当主に育て上げるのが家臣の務め!」
「おねーさんが、手取り足取り教えてあげるからねぇ~♡」
真魚美が触手(?)を伸ばしてくる。
あ、これヤバい。
鋼鉄蟻よりも、遥かに身の危険を感じる!
「わ、わあぁぁ! 誰か助けてぇぇ!」
わたしは城壁から飛び降り、領地へと逃げ出した。
「あ、逃げた! 追えぇぇ!」
「今日こそは既成事実をぉぉ!」
追いかけてくる美女軍団。
まったく、わたしのスローライフはいつになったら訪れるのか。
ゴミ拾い領主の忙しい毎日は、第二章も騒がしくなりそうだ。
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※1/22(木)
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