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41.転生者と家臣のチカラ

「ちっ……! 気色の悪い能力だ!」


 イキリ太郎が顔を歪め、舌打ちをする。

 サブマシンガンの弾丸を全て【買取】によって無力化された彼は、明らかに焦っているようだ。


 だが、すぐにその表情が凶悪なものに変わり、仲間たちに指示を飛ばした。


「おい! あのガキ、飛んでくるもんを消す能力だ! だったら近づいて直接ぶっ刺せば消せねえはずだ!」

「なるほど! さすがリーダー!」


 ……まあ、正確には「直接」でも買い取れるんだけど。

 こっちの手の内を、わざわざ晒す必要はない。


 そして、思った通り。

 遠距離で敵わないと見るが早いか、奴らは上陸してくるようだ。


 ドガガガガッ!

 奴らはクルーザーを猛スピードで砂浜に乗り上げさせると、雄叫びを上げて飛び降りてきた。

 彼らが手に持っているのは、鈍く光るサバイバルナイフ。

 現代の合金で作られた、切れ味鋭い刃物だ。


「ヒャッハー! 死ねぇガキどもぉ!」

「女は顔以外を切り刻んでやるよぉ!」


 彼らは自信満々に突っ込んでくる。

 遠距離武器が通用しないなら、ナイフで切り結ぶ。

 その判断自体は悪くないかもしれない。

 でも……彼らは致命的に勘違いをしている。


 現代兵器(重火器)というアドバンテージを捨てて、ナイフ一本で挑むということは。

 剣と魔法が支配するこの異世界の住人と、同じ土俵に立つということだ。


 そして、この世界において、ナイフ程度のリーチで勝てると思っているなら――。


「――愚か者が」


 冷徹な声と共に、銀閃が走った。


「あ?」


 先頭を走っていた男が、間の抜けた声を上げる。

 次の瞬間、彼の持っていたナイフが根本から切断され、宙を舞った。


「な、なんだ!?」

「遅い。あくびが出る」


 そこに立っていたのは、キリカだった。

 彼女は愛剣を抜き放ち、流れるような動きで男たちの懐に潜り込む。

 峰打ち。

 目にも止まらぬ剣速で、手首、鳩尾、顎を打ち抜く。


「ぐへっ!?」

「あがっ!?」


 男たちが白目を剥いて崩れ落ちる。


「オラァッ! こっちも忘れてんじゃねえぞ!」


 ドガッ! バキィッ!


 反対側では、戦闘隊長のガラが暴れまわっていた。

 彼は異世界人であり、魔力をその身に宿している。


 ガラだけでなく、この世界の戦士は、無意識に魔力で身体強化ブーストをして戦っている。

 それが、普通なのだ。


 貧弱な現代人の肉体など、紙屑同然だ。

 ナイフを突き出す暇もなく、男たちはガラの拳一発で吹き飛ばされ、砂浜にめり込んだ。


「ば、馬鹿な! なんだこいつら……! 強すぎる!」


 イキリ太郎が悲鳴を上げて後ずさる。

 自慢の特殊部隊装備(通販)で身を固めた仲間たちが、ほんの数秒で全滅したのだ。

 原始人だと見下していた相手に、手も足も出ずに。


「ごめんね」


 わたしは、腰を抜かしているイキリ太郎に告げる。


「みんな、強いんだ。君たちが頼っていた武器がないと、勝負にもならないくらいにね」


 所詮、イキリ太郎たちは、現代兵器という強力な「道具」に頼って無双していただけに過ぎない。

 その道具という下駄を履かせてもらえなくなった瞬間、彼らはただの素人に戻る。

 鍛え抜かれたキリカやガラに、勝てるはずがないんだ。


「く、くそぉ……! ふざけんな、ふざけんなよぉ!」


 イキリ太郎は涙目になりながら、砂浜を這いずる。

 プライドをへし折られ、仲間を倒され、追い詰められた彼の中に、どす黒い執念が渦巻く。


「俺は選ばれし勇者なんだ! こんなところで負けてたまるかよぉ!」


 彼は血走った目で虚空を睨み、絶叫した。


「ちくしょぉおおお! KAmizon!! 購入ぅぅぅ!!」


 ピロン♪ という軽快な決済音が響く。

 だが、今までとは違う。

 空気が、ビリビリと震えるほどの魔力……いや、圧倒的な質量の予感がした。


「ご主人様、下がってくれ! 何かデカいのが来るぜ……!」


 ガラの警告と同時。

 空が陰った。

 段ボールではない。

 光の粒子が集束し、イキリ太郎の体を包み込むようにして、巨大な鉄の塊が形成されていく。


 ズゥゥゥゥゥゥン!!!!


 大地を揺るがして出現したのは、巨大な砲塔と、分厚い装甲、そしてキャタピラを持つ鋼鉄の怪物。


「せ、戦車……!?」


 わたしは息を呑む。

 それは、現代における陸戦の王者。メインバトルタンクだ。

 しかも、イキリ太郎はその操縦席(内部)に収まっている。


 所有者が搭乗し、稼働している兵器。

 それは……「ゴミ」じゃない。

 わたしの【買取】でも、手が出せない領域の代物だ!


「ギャハハハハ! 死ねぇ! 挽き肉になりやがれぇ!!」


 狂ったような笑い声と共に、鋼鉄の怪物が砲塔をこちらに向けた。

 わたしを、ゼロ距離で吹き飛ばすつもりだ。


 ――ズドンッ!!


 マズルフラッシュと共に、主砲が火を噴いた。

 放たれたのは、着弾と同時に爆発する「榴弾りゅうだん」。


 ん……?

 バカなのかな……?


 ――シュオンッ!


 わたしは、鼻先まで迫っていた死の塊を、手のひらで受け止めた。

 爆発も、衝撃も起きない。

 それは、わたしの手に触れた瞬間、綺麗さっぱり消滅した。


「な!? また……てめ……そのチカラ、無制限なのか!?」

「うん。ごめんね、ここで爆発させるわけにはいかなかったし」

「!? これが……爆発物だって分かっていた……って、まさか……てめええ!」


 イキリ太郎が愕然とする。

 こちらの世界にはないはずの「榴弾」の性質を、わたしが理解して処理したことに気づいたのだ。


「よーやく気づいたの? まあ、遅いよ」


 わたしは右手を高々と上に掲げる。


「【貯蔵ストック】……解除!」


 リサイクルショップスキルの応用。

 【買取】したアイテムは、すぐにRPに変換せず、そのままの形で亜空間に【貯蔵】しておくこともできる。

 わたしは、たった今買い取ったばかりの「榴弾」を、呼び出した。


 どうしてそうするかって……?


 ヒュルゥゥゥウウウ~~~~~~…………


 死の笛音が鳴り響く。

 出現位置は――戦車の中にいる、イキリ太郎の頭上だ。


「戦車って、前からの攻撃には強いけど、トップからの攻撃には弱いんだよね?」

「てめ……! やっぱり俺様たちと同じ……!」


「そう。初めまして、同郷の者。そして……さよなら」


 自由落下した榴弾は、戦車の最も装甲が薄い天板ルーフに直撃し――。


 ドガァァァァァァァァァァァァァン!!!!


 内側からの衝撃と誘爆によって、鋼鉄の怪物は紅蓮の炎に包まれた。

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― 新着の感想 ―
利用できそうな能力だが首輪を付けて管理するにも面倒だから消してしまった方が後腐れ無く楽か
足についてるキャタピラならいけたんだがよりによって主砲ぶっパは阿呆じゃないかほんまにwww
アーメン!
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