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31.欠損奴隷をリペアしたら、伝説の人魚になった

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。


 クラーケンを倒し、わたしたちは安堵する。

 でも、問題は山積みだ。

 この巨大な船、どうやって持ち帰ろう?


 このまま浜辺に置いておくと目立つし、盗賊の隠れ家や、魔物の巣になっても困る。


『なんじゃ、そんなことか。ならばわらわの腹に入れればよかろう』


 グーラが事もなげに言う。


「へ? 入るの?」

『わらわは暴食ぞ? 空間ごと喰らえば、収納など造作もない』


 言うが早いか、グーラが刀身から黒い霧を吹き出す。

 霧は巨大な船を包み込み……シュルシュルシュル!

 まるで麺をすするかのように、あの巨体がグーラの刀身へと吸い込まれていった。


「す、すごい……!」

「アイテムボックス機能まであるとは……本当にデタラメな魔剣だ」


 キリカも呆れている。

 これなら、どんな大きな荷物も運び放題だ!

 ……と、喜んだのも束の間。


『ゲフッ……。くっ、さすがに腹が重いのぅ……』


 グーラが、人の姿に戻って、お腹をさする。

 心なしか、動きが鈍い。


『主リオンよ。ちと注意じゃ。今のわらわは満腹状態じゃ』

「うん」

『この状態で、わらわのスキルを使おうとすれば、腹の中のものを消化して魔力エネルギーに変えてしまうぞ?』


「えっ」

『つまり、わらわを振るって戦えば、船がRPポイントに変換されて消滅するということじゃ』


「うーんそぉっかぁ~……」


 それってつまり、魔剣に物をストックしてる状態で、捕食や暴虐なる暴食を使ってしまったら、ストック物が消化されてしまうってことだ。


 つまり、船を運んでいる間、グーラは「ただの重たい剣」になり、戦力外ということだ。

 むしろ、わたしたちがグーラを守らなきゃいけない。

 うーん、世の中うまい話ばかりじゃないね。


「船を置いておく、ドッグを作る……あるいは、ここを管理する人を置くか……」

「いずれにせよ、船に詳しい人材がいないとですね」


 アナの言う通りだった。

 完全にこれじゃ宝の持ち腐れ状態だしね。

 船が使えれば、魚も取り放題だし、遠くの国に行って貿易とかできるようになるし。


 うーん……どこかにいないだろうか、海に詳しい人材……。


「あ、そうだ。居ないなら捜せばいいのか。市場調査リサーチで」


 わたしはスキル、【リサイクルショップ】を発動。

 販売系スキルのひとつ、【市場調査リサーチ】を選択する。


 最近わかったんだけど、ある程度要望を念じることで、それに応じた情報を得ることができる。

 ようは、検索ができるのだ。


 リサーチ範囲内にあるもの限定だからね。

 上手く行く時もあるし、そうでないときもある。


 が、今回は運が良かったようだ。


~~~~~~~~~~

【品名:魚人族の少女(個体名なし)】

【レア度:R】

【状態:尾ひれ欠損、声帯損傷、極度の衰弱】

【買取価格:0 RP(正規品ではないため買取不可)】

~~~~~~~~~~


「魚人族……?」


 キリカが首をかしげる。


「魚人族は、海に住む亜人種です。歌声で船を惑わすセイレーンのような力を持つ者もいますが、何より……彼らは『海の子』。泳ぎに特化しているのはもちろん、潮の流れや天候の変化を肌で読むことができると言われています。優秀な魚人が一人いれば、船は沈まない……そう言われるほど、航海士にはうってつけの種族ですわ」


「なるほど……船乗りにはぴったりの人材だな! そんなぴったりな人材を見つけてくる……やはり主はすごいなー!」


 と、アナ。


「それで、どこにいるのですか、その魚人は?」

「えっとねえー……あ、廃棄都市だ」


 ……???

 なんか違和感……。


「魚人がどうして廃棄都市に? 海にいるんでしょ?」

「…………」


 アナが沈んだ表情になる。


「どうしたの?」

「おそらくですが……奴隷市場に、出品されてるのかと思われます」


「奴隷市場……かぁ……」


 この世界には奴隷という制度が、普通に存在する。

 わたしの住んでいた世界では、考えられないけど。

 流石は異世界といったところか。


「でも奴隷商売って、たしか国が発行する許可証が必要じゃあなかったっけ?」

「その通りです。そして……領地内で商売するのであれば、領主に了承を得ないといけませんね」


 アナは、元貴族令嬢なので、その辺の制度についても詳しい。

 わたしも勉強したし知ってる。


領主わたし……知らなかったね」

「ええ、つまり無許可営業ってことですね」

「ふぅん……なるほどね。……うん、一旦みんなんとこ戻って、餓狼ガラを連れて奴隷市場へ行こう」


     ◇


 一旦屋敷に戻り、ガラと合流して、わたしたちは廃棄都市へとやってきた。


「…………」


 そこは、文字通りのゴミ捨て場だった。

 見渡す限りのスクラップの山。錆びた鉄骨、壊れた家具、正体不明のガラクタ。

 腐敗臭と鉄錆の匂いが混じり合い、鼻をつく。


 そんなゴミの山をかき分け、ボロ布を纏った人々が暮らしている。

 家は廃材を組み合わせた掘っ立て小屋。

 子供たちは泥水を啜り、大人たちは虚ろな目で宙を見つめているか、殺気立って獲物を探している。


 ここも、わたしの領地の一部。

 領主として、ここの改善もやらなきゃいけない。

 でも……あまりにゴミも多いし、無法者がのさばりすぎている。

 一朝一夕で、どうにかできるレベルじゃない。


 でも、焦っちゃ駄目だ。

 少しずつ、良くしていこう。まずは目の前のことからだ。


「ご主人様。あいつだぜ、奴隷うっぱらってるやつ」


 先頭に立っていたガラが、くいっ、と指差す。

 スラムの一角に、一際大きなテントが張ってあった。

 テントの前には、下卑た笑みを浮かべる、チョビ髭の男が立っている。


「そこの可愛いお嬢ちゃん」

「…………」キョロキョロ。

「君だよぉ、君ぃ……」


 あ、わたしか。

 身なりが良いから、上客だと思ってるようだ。

 わたしがここの領主デッドエンドだってこと、知らないみたいだね。

 逃げないところを見るに、都合が良い。


「こんにちは」

「はいこんにちは~。お嬢ちゃん、ここに来るってことは、奴隷をお探しかなぁ~?」


 奴隷商人が揉み手をしながら近づいてくる。

 そして値踏みするように、わたしのお尻へ手を伸ばしてきたので……。


「おい」


 商人の背後に、いつの間にかキリカが立っていた。

 その手には、漆黒の魔剣グーラが握られている。


「ひ! い、いつの間にぃ……!」

「我が主に汚い手で触れるな。その手を切り飛ばすことが、いかに容易いか、身をもって教えてやろうか?」


 キリカの瞳孔が開いている。

 全身から噴き出す殺気が、物理的な圧となって商人を押し潰そうとしていた。

 アナも、目が全く笑っていない。完全に「排除対象」を見る目だ。


「やめときな。そこの騎士さんはつえーんだ。それに……てめえの首を吹き飛ばすことだって、たやすいんだぜ?」

「ぐっ! が、ガラ……」


 奴隷商人とガラは顔見知りらしい。

 ガラの一言で、相手がただの子供連れではないと悟ったようだ。


「わ、わかりました……すみませんでしたねぇ……」

「誠意が感じられない。手を切るぞ、いいな? いいよね? いい。よし」

「わー! 待って待ってキリカっ! ストップ!」


 わたしが叫んで、ようやくキリカが抜刀を止めてくれた。

 もう……。

 荒事を起こしちゃ駄目って、わかってるはずなのに……。


「すみません、主に汚い手で触れて、主が汚されるのが許せなかったんだ……」

「うん、ありがとう」

「主を汚していいのはボクだけだから……♡」

「……うん、それはやめて」


 しれっとセクハラ発言を混ぜるキリカ。

 アナがギロっと奴隷商人となぜかキリカもを睨みつける。


「我が主は奴隷を探しております。見せなさい」

「へい! 喜んで!」


 わたしたちは、商人に連れられ、テントの中に入った。


「うっ……」


 思わず鼻をつまみたくなるような悪臭が充満している。

 排泄物と体臭、そして病気の匂い。

 薄暗いテントの中には、狭い鉄格子があちこちに置かれ、痩せ細った人々が詰め込まれていた。

 泥だらけの床、不衛生な環境。

 とても人が住める場所じゃない。


「…………」


 どうしても、嫌な気持ちになってしまう。

 現代日本から転生してきたからかな。

 やっぱり……見てて気持ちの良いものじゃあないよね。

 者を、物扱いされるのは。


「どのような奴隷をお探しで?」

「船乗りが欲しいんだ」

「となると、屈強な男奴隷ですかい?」

「ううん。航海士が欲しいの」

「うーん……となると、魚人族とかですかい」

「うん。そう。居る?」


 居るのはリサーチ済みで分かってる。

 けど、それを指摘したら、「なんで在庫を知ってるんだ」って怪しまれるからね。


「おりますが……しかし、だいぶその……傷んでおりますが」

「……傷む、か。ほんとに物扱いなんだね」


 不愉快だ。心の底から。


「魚人の女となると……このガキですね」


 商人が案内したのは、テントの最奥にある小さな檻だった。

 そこに、ボロ布を被った何かがうずくまっていた。


「…………」


 ガタガタと震えている。

 その姿を見て、わたしは息を飲んだ。

 リサーチで「魚人族」と出ていたけれど、これは……。


 全身がくすんだ青黒い粘液に覆われた、二足歩行の怪物。

 ギョロリと飛び出した目。耳まで裂けたような大きな口。首筋にはエラがパクパクと動いている。

 いわゆる「半魚人マーマン」と呼ばれる、モンスターに近い姿だった。


 手足には水かきがあるようだが、乾燥してひび割れ、血が滲んでいる。

 お尻から伸びる魚のヒレが、根元から無残に切り取られ、痛々しい傷跡が残っていた。


 明らかに、彼女は人間に対して怯えきっていた。


「ほら、出てこい! 出てくるんだよぉ!」


 商人が檻を蹴り飛ばし、扉を開けて怒鳴り散らす。

 それでも魚人の少女は出てこない。

 キレた商人が、中に入り拳を振り上げた。


「おらぁ……!」

「アナ」

「御意。【殴るのを辞めろ】」


 ビタッ!

 商人の拳が空中で静止した。

 アナの骨董品アンティーク能力、【言霊】。

 言葉に魔力を乗せ、相手の行動を強制する力だ。


「な、う、動かねえ!」


 わたしはスタスタと、魚人少女の元へ向かう。

 ……本当に、ボロボロだ。

 見てて……とても痛ましい。


「この子にする」

「え!? そんなゴミでいいんですかい?」

「……ゴミじゃあない。人に、ゴミとか、二度と言うな!」

「ひ! す、すみません!」


 わたしの気迫に押され、商人が縮み上がる。

 値段を聞くと、金貨10枚(約10万円)だと言う。

 ボロボロの欠損奴隷としては高いが、貴族のポケットマネーとしては安い。

 そこまで高くなかった。


 実家から持ってきた分の金貨で、なんとかなりそう。

 アナに持たせていた財布から、金貨を取り出し、奴隷商人に渡す。


「はい、金貨10枚」

「へいまいどっ! へへへ!」


 商人が卑屈な笑みで金を受け取る。

 わたしは魚人少女の首元に触れた。

 醜い鱗に覆われた首には、黒い革のごついベルトのような首輪が嵌められている。


 わたしは知ってる。これは「隷属の首輪」。

 なろう小説なんかでよく見るやつだ。

 これを嵌められた者は、主人の命令に逆らえない。逆らおうとすれば、激痛と電流が走り、最悪の場合は死に至るという、非人道的なアイテムだ。


 商人は首輪に触れ、何やら詠唱して魔力を流す。

 首輪が赤く光った後に、光が消えた。


「これで前の主人登録がリセットされました。お客さん、首輪に触れて魔力を流してくだせえ。これでお客さんの所有物として登録されますぜ」

「必要ない」

「へ?」


「奴隷の首輪なんて、必要ないよ」

「は、はぁ……? じゃあ、主人として登録しないんですかい?」

「うん。キリカ、首輪を切って」

「御意」


 キンッ!


 目にも止まらぬ早業だった。

 キリカが魔剣を鞘に収めると同時、ポトリ……と首輪が真っ二つになって落ちた。

 少女の首には、傷一つついていない。


「ありがとう。あとは……商品修繕リペア!」


 カッ……!

 少女の体が、眩い光に包まれる。

 わたしは彼女の時間を巻き戻す。

 剥がれたヒレ、切り刻まれた肉体。

 そして――彼女にかけられた「醜い姿に変える呪い」をも。


 光の中で、青黒い粘液が浄化されていく。

 ギョロリとした魚の顔が、整った人間の顔立ちへと組み変わっていく。

 そして、二本の脚が融合し……。


 光が収まる。

 そこに居たのは、醜い半魚人ではなかった。


 長く艶やかな翡翠色の髪。透き通るような白磁の肌。

 そして、人間の脚の代わりに、宝石のように輝くエメラルドグリーンの鱗に覆われた、長く美しい魚の尾を持つ、絶世の美女が横たわっていた。


「足が……きれいな尾ひれに……」


「せ、セイレーンだぁああああああああああ!」


【おしらせ】

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― 新着の感想 ―
エラ呼吸出来なくて死ぬんじゃw
すいません誤字報告です。 ドック(船渠)がドッグ(犬)になっている部分があります。
普通なら奴隷商人がいちゃもんつけたりするだろうけど、リオンが領主であることを自己紹介したら、何もいえなくなるよね。 それどころか無許可営業の現行犯だから、商人は死刑になるか犯罪奴隷になるかどちらかだよ…
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