26.魔法のゴミ袋を発明して、子供たちにお小遣い稼ぎを頼みました
翌朝。
わたしはフラフラになりながら、食堂へと向かった。
「おはようみんな……」
「ど、どうしたんだよ、リオン様……」
子供たちは、みんな朝ご飯を食べていた。
うちで採れた野菜のポタージュだ。
心配そうに声をかけてきたのは、子供たちの代表格であるトニー。
「うん……ちょっとね……」
「いやちょっとって……だいぶゲッソリしてるけど……リオン様、何あったの?」
隣に佇むアナは、対照的に肌がツヤツヤと輝き、女神のような微笑みを浮かべている。
「ご褒美を、少々♡」
「ご、ご褒美……」
トニーがわたしを見て、あきれたように言う。
「羨ましい……」
「ううん、地獄だったよ……天国でもあったけど」
「なにそれ」
ほんとだよ。
愛が重いって、物理的にも重いんだね。
わたしは気を取り直し、椅子に座る。
テーブルの上には、野菜のポタージュ、蒸し野菜、サラダ。
見事に野菜づくしだ。
まあ、野菜しかないからなんだけど。
野菜は体にいい。
でも、偏るのはよくない。
野菜ばっか食べてても、栄養が足りなくなってしまう。
特に、育ち盛りの子供たちや、肉体労働の餓狼団にはタンパク質が必要だ。
「みんな、注目ー」
パン、と手を叩く。
食堂には、結構な人数が集まっている。
いつの間にか、家臣たちは増えて大所帯になっていた。
「今後の方針について、話します」
こういうのは、リーダーがちゃんと決めとかないとね。
「今後は……お金を稼ぐよ!」
「どうして?」
とトニー。
「食料が、現状野菜しかないからね。それ以外の食料を手に入れようとするなら、商人から食材を買わないといけない」
この森は、白骨樹海。
塩害のせいで、森の恵み……たとえばキノコとか、木の実とかは、ほとんど採れない。
「牛とか飼うのは?」
「逆に聞くけど、飼える? その後の処理は?」
「できない……」
「ね。なら、まずは持ってる人から買うのがベストだと思うんだ」
「廃棄都市で買うの?」
「うーん……今はまだ買いたくないかな、あそこ」
廃棄都市は、基本、物々交換が主流だ。
でもあそこには闇市がある。
闇市で売っている、出処のわからない肉を買うのは……ちょっと怖い。
領主として、そこの衛生管理を改善できていないのは、情けない限りだけども。
「まずは目の前の、みんなを食わせていくことが、課題だと思ってるんだ」
「それで……お金稼ぎ?」
トニーに言われて、わたしは頷く。
「そう。まず、お金を作って、それでよそへ行って、食材を買う。できれば、行商人が来るようにしたい」
「でも……お金ってどうやって作るの?」
「そこは、わたしのリサイクルショップスキルでやるから任せて!」
リサイクルショップ。
このスキルには、掘り出し物を探す【市場調査】、そしてそれを元通りにする【商品修繕】がある。
「あ、なるほど。リオン様が珍しい道具を拾って、リペアして、それを売るんだね」
「そゆこと! だから、これからわたしは廃棄都市周辺を巡って、掘り出し物を探してくる。みんなは、ポイント稼ぎをしてきてほしいんだ」
リペア、リメイクなどには、ポイントが必要となってくる。
価値が高いものほど、スキル使用にはそれだけ高いポイントが必要となるからね。
「トニーたち少年の部のみんなは、桜香を連れて塵拾い。ガラたち、餓狼団のみんなは、館周辺の魔物狩りをお願いね」
ガラがこくりと頷く。
「魔物の死骸もポイントになるからだね?」
「そういうこと。ごめんね、みんなにも負担かけちゃって」
ほんとは、リーダーが一人で頑張んないとダメだとは思う。
でもわたしはまだ体が八歳だし、わたしのリサイクルショップは、ノーコストで使えるスキルじゃあない。
どうしても、人手が必要となってくる。
「謝らないでよ」
トニーが笑顔で遮った。
周りの子供たちも、力強く頷いている。
「オレら、リオン様に命を助けてもらって、ご飯も食べて、ふかふかのベッドで寝かせてもらってる。……もらいっぱなしじゃ、男が廃るんだよ」
「トニーくん……」
「オレたちだって、この街の住人だろ? リオン様の役に立ちたいんだ。だから、なんでも命令してくれよ!」
その言葉に、胸が熱くなる。
ただの庇護対象じゃない。彼らも立派な、開拓団の一員なんだ。
「トニー……みんな……ありがとう!」
◇
食事の後、わたしたちは外に出る。
トニーたちは、わたしが配った革袋を持っている。
「リオン様、これなぁに?」
「それは、わたしのリサイクルショップスキル【買取】が付与されたゴミ袋だよ」
「! スキルを……付与!? そんなこともできるの!?」
「うん。ほら、こないだレベル2になって、遠隔での買取ができるようになったでしょ? それを応用したんだ」
革袋には、『★』のマーカーがついている。
「そのマーカーがついてる袋には、【買取】の力が遠隔で繋がっているんだ。これで、わたしがいなくても、その袋の中に塵を入れればポイントにできる」
もっとも、できるのは買取だけ(ゴミをポイントに変えるだけ)。
貯蔵はできない。まあできなくはないけど、手分けしてやると、すぐに貯蔵量のキャパオーバーになるし。
わたしが拾ってきた、大事な掘り出し物を収納するスペースが減ってしまうからね。
「ちょ、ちょっとやってみる」
トニーが草むしりをする。
そして、むしった雑草を、リサイクル袋(今命名)に、ポイ捨てした。
シュオンッ!
袋の口が淡く発光する。
中に入れた雑草が、光の粒子に分解され、空間に吸い込まれるように消滅した。
『1RPを獲得しました』
わたしの脳内に通知が来る。
うん、問題なし。
「「「おおーすげえー……」」」
「ご主人様よぉ……こいつひょっとして、とんでもねーモンじゃねえのか?」
ガラが感心したように、袋をつまみ上げる。
「ほら、魔法袋ってあっただろ。重さとか大きさを無視して、何でも入れられるやつ。あれ、国宝級に高ぇらしいじゃん。それをいくつも量産できるってことだろ?」
「そーだね。でも結局全部ポイントになって消えちゃうから、魔法袋より価値は下がると思うよ」
ためておければそりゃすごいけどさ。
これは一方通行のブラックホールみたいなものだ。
「それでも、すげえゴミ袋にはちげーねーさ。買取って、たしかポイント消費しないんだろ?」
「うん。だから、無限にリサイクル袋は作れるね」
「サラッと言ってるけど、マジすげーからさ」
苦笑し、ガラはわたしの頭をワシワシと撫でる。
くすぐったいけど、悪い気はしない。
「んじゃ、行ってくる!」
「オレらも! 桜香姉ちゃん、行こうぜ!」
「わふー! 散歩だ散歩ー!」
桜香が子供たちを引き連れて走り出す。
ガラたちも、武器を担いで森の方へ向かった。
「うん! よろしくね、みんなー!」
ブンブンとわたしは両手を振る。
さて、残されたのはわたしとアナ、キリカの三人。
「で、わたしたちは何するの?」
「資源調査で、ちょっと見つけたものがあるんだ」
「見つけたもの?」
わたしは【市場調査】のウィンドウを空中に展開し、二人に見せた。
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【???:#”I$"Mの剣】
【レア度:測定不能】
【状態:■■■■■】
【価格:――】
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「なんか……文字が変だね」
「うん、あと『測定不能』ってのが気になって」
「どういうこと?」
「いつも、価値は、RやC……コモンみたいに、ちゃんと評価されるんだ。でも……こんな表示は初めてで」
バグなのか、それとも鑑定できないほど上位の存在なのか。
「なるほど……何かあるって、思ったんだね?」
「うん。リサーチに引っかかったし」
今まで、リサーチは全部、価値あるものの情報を、わたしに提供してくれていたからね。
「それに、気になったのはレベル2になって、これが見つかったことなんだ」
「なるほど……」
アナが顎に手を当てる。
「ただのゴミなら、レベル1段階でも引っかかるはず」
「そゆこと。なので、それを回収しに行くから、二人にはついてきてほしいんだ。よろしね」
「「御意」」
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