25.SSR家臣たちと温泉に入る、そして進化するアナスタシア
サイハーデン屋敷での、クラフトの後。
完成したばかりの大露天風呂にて。
「はぁ♡ はぁ♡ くぅん♡ くぅん……♡」
「桜香っ。離れてっ。ぱ、パンツの中に顔をつっこもうとしないでっ」
そこには、ヒノキの香りが漂う脱衣所があった。
ちゃんと男女別に小屋が分かれていて、リメイク製の籐籠に服を脱げる仕組みになっている。
にもかかわらず、桜香は風呂に来るなり、全裸になってわたしにのしかかってきたのだ。
ほんと、のしかかるの好きだねこの人!
しかも、わたしの下着をクンカクンカしようとしている!
「主のパンツを脱がそうとするな!」
「とんでもないド変態だね、こいつ……」
キリカと、ガラが呆れたようにため息をつく。
力持ちのガラが、桜香を後ろから羽交い締めにする。
「はな、はなして! 放して!」
バルン! ブルン!
桜香のおっぱいが、ダイナミックに揺れ動いている。
凶器だ。あれは質量を持った凶器だ。
「貴方たち、まだ風呂に入ってすら居ないのに……騒ぎすぎです」
アナがそばに控えていた。
いつもの長い銀髪をアップにして、白いうなじを晒している。
湯気の中で、普段は見えない首筋や、濡れたような瞳が、いつも以上に色っぽく見える。
いつも綺麗な彼女だけど、今日は一段と綺麗だ。
「さぁ、リオン様。上も脱ぎ脱ぎしましょう……♡」
「じ、自分でできるから」
「駄目です♡ はい、ばんざーい♡」
有無を言わさない気迫を感じられた。
わたしは逃げようとするも、逃げられなかった。
な、なにこれ。
彼女はグイッとわたしの上着を強制的に脱がせ、わたしを生まれたままの姿にさせる。
ちょっと、まだ恥じらいというものが!
「はっはっはっはっ♡ あおんわんわんー!」
「発情犬が主にのしかかろうとしてる!」
「ぐわぁ! なんつーパワーだねこいつ! 抑えきれないよー!」
ガラの制止を振り切って、そのままのしかかろうとする桜香。
「止まりなさい」
ビタッ!
アナの一言で、桜香が石のように動きを止めた。
え?
桜香の目が泳いでいる。体は前に行きたがっているのに、見えない鎖で縛られたみたいに動かない。
ど、どうなってるんだろう。
「さ、お風呂に入りましょうか……♡」
「う、うん……」
わたしの前を歩く、アナ。
お尻が、目の前にある。
キュッと引き締まった、桃のようなお尻だ。
タオルで隠れてない。なんてことだ。刺激が強すぎる。
「♡」
アナとパッチリ目が合う。
でも彼女は、恥じらうどころか、嬉しそうに目を細めていた。
「よろしいのですよ、お手つきしても」
「なんでアナのお尻を触らないといけないのさっ」
◇
わたしはお風呂場へとやってきた。
露天風呂、すごい。
かなり、現実にあるそれと、同じデザインだ。
二十人は入れそうな広々とした岩風呂に、並々と注がれるお湯。
隅には、リメイクで再現した「シャワー(手押しポンプ式)」や、一人用の「檜風呂」的な桶風呂もある。
地面もちゃんと石畳で舗装され、水が流れるように勾配がついていて、排水溝へと繋がっている。
「排水溝……排水ってどこに繋がってるんだろ……」
自分で作っておいてなんだけどね。
まあ、地下水脈に戻るのかな。
「はぁ……♡ はぁ……主……♡ ぼ、ボクが……丸洗いしてあげるよ……♡ 大丈夫……や、やましい気持ちは全く……はぁはぁ、ないから」
「いや欲望だだ漏れだろ、あんたの顔……だらしのない顔してるぞ……」
ガラのツッコミに、激しく同意するわたし。
「自分で体を洗えるから」
「いやいや、待つんだ主っ。これは……ご褒美だろうっ? ボクら頑張った、家臣へのっ」
「う……」
確かにそうだった。
アナたちがコクコクと頷いている。
桜香は「あおぉおん♡ あおぉおん♡」と全裸で四つん這いになり、尻尾が見える幻覚がするほどお尻フリフリしてる。
もう完全に犬だ。鬼なのに。
「わぁおおおおおおおおん♡」
「桜香ー! やめー!」
わたしがそう言っても、桜香は止まらず、わたしを押し倒した。
ベチョッ。
いつの間にか、桜香の体は、ヌメヌメになっていた。
「なんでヌメヌメっ!?」
「はぁはぁ……石鹸……」
「あ、石鹸のヌメヌメなのね……」
「ないので、桜香のヌメヌメで代用……」
「桜香のヌメヌメってなんだよー! 怪しいもの塗りたくらないでよー!」
桜香がまず、わたしにくっついて、ヌメヌメの体を擦りつけまくってきた。
ひぃ! なんか変な匂いする! 甘ったるい匂いが!
「こんなのがご褒美でいいのっ?」
「「「「ご褒美です」」」」
なんで残りの家臣たちも、ご褒美だと思ってるのさ。
わけわからないよ。
「続いてボクだね。どけ、犬鬼」
犬鬼って酷い。
キリカは桜香を蹴飛ばして、わたしを解放する。
「さ、さぁ……次はボクの番だよ」
「桜香みたいに変なことはしないでね……」
「無論さ。ボクのご褒美は……主の髪の毛を洗うこと!」
なんだ、さっきより変な、よくわからないことじゃあないや。
よかった。
椅子に座る、わたし。
後ろにキリカが、佇む。
「はぁ……♡ はぁ……♡ さ、さぁ……快楽に身を委ねて……♡」
快楽と書いてボクって読ませるの、やめてくれないかな。
不穏すぎるんだけど。
とろぉ、とわたしの頭の上に、何かまた粘液が垂れる。
ひぃ。
「これなにっ、キリカの体液っ?」
「ち、違うから……。これは、シャンの実を搾った汁だよ」
「シャンの実……ああ」
わたしは書物で読んだことがある。
シャンの実は、天然の界面活性剤が含まれていて、泡立ちがよく、シャンプーと同じ効果があるのだ。
シャコ、シャコ。
あ、ちゃんと髪の毛洗ってる。よかった。
でもやっぱり、これがご褒美なの? って気持ちになる。
「ああ、主の頭皮を、ボクの手でマッサージしてる……♡」
「んっ。くすぐったいよぉ」
「あ、主がボクの手で、か、感じてるっ。ああっ、主を感じさせてるっ」
「実況しなくていいから……」
髪の毛を、丁寧に丁寧に、そりゃあもう丁寧すぎるほど、しっかり洗われた。
そして、ザバーッとお湯をかけられる。
「こんなのがご褒美なの?」
「「「「我々の業界では」」」」
どこの業界人なの君たち?
わたしの家臣じゃあないの?
「つ、次はアタイの番、だね……」
「公序良俗違反しない範疇でお願いね」
前二人、余裕でギリアウト(矛盾)してるから。
「も、もちろんさ……あ、アタイはほら」
パァ、と、ガラが、身につけていたタオルを外す。
き、筋肉質な体が目の前に。
割れた腹筋、引き締まった太もも、そして盛り上がった上腕二頭筋。
彫刻のように美しい筋肉の鎧だ。
しかも、温泉の効果で傷一つなくツルツルに輝いている。
「な、なんで裸……? なにするの?」
「はぁ……ご、ご主人様に……穴が開くくらい、み、見られてる……熱烈に見られてるよぉ……」
「は、はぁ……?」
見てるから、なんだというのだろう。
「だ、だめだ……あ、アタイ……見られてる……ねっとりと、み、見られてる……あ、アタイの体を……あぁ! 見られてるよぉ!」
わたしには、わからないよ。
見られてるからなんだっていうんだろう。
なんか、五分くらい、謎のポージング付きで裸体を見せられた。
ボディビル大会かな?
「ちゃんとご褒美になってるのこれ?」
「バッチリさ……♡」
「そ、そう……」
さて、最後は、アナだ。
なんだかとっても嫌な予感しかしないよ。
するとアナはにっこり笑って、
「わたくしとご主人様以外は、退出するように」
いやいや、退出なんてするわけが。
「か、体が勝手に!?」「どうなってんだい!」「あぉおおん! わぉおおん! あおぉおおおおん!」
ゾロゾロとみんな出て行ってしまった。
え、ええー。ほんと、何がどうなってるの?
さすがのわたしも、これには異変を感じていた。
「さぁ……リオン様。二人きり……ですよ……♡」
「そ、そうだね……なんで後ろからしなだれかかってるの……? あと、どうしてあの三人はあなたの言うことを聞いてるわけ……?」
アナの豊満な胸が、背中に押し当てられる。
柔らかくて、熱い。
「教えてほしいです?」
「そりゃもちろん」
「ふふ……実は……わたくし、ご主人様の【物】となったのです」
「??????」
意味が、わからないんだけど。
「骨董品、ってご存じですか?」
「うん。作られてから長い年月を経た道具や美術品のことだよね。希少価値があって、新品よりも高値で取引されることもある」
それがなんだっていうんだろう。
「リサイクルショップスキルによって、手入れされたわたくしは……。店主のおそばで、たっぷり愛された結果……骨董品化したのです」
「あ、あんてぃーく……か?」
「ええ♡」
やっぱり、さっぱり何言ってるのかわからないや。
「その身でもって、体感させてあげましょう。さぁ、リオン様♡ 【わたくしに、甘えてくださいまし】」
ドクンッ!
なんだか、すっごく、甘えたい気分になっていた。
わたしは、アナに抱きついてしまう。
無性に、可愛がって欲しくて、しょうがない気持ちになっていた。
頭を撫でてほしい。ギュッとしてほしい。アナの匂いに包まれたい。
って、まさかこれは。
「これが、骨董品能力、ですわ。店主が愛情を持って長く接し、手入れし続けた商品は、価値が上がり、骨董品へと昇華され……新たなる価値を得るのです」
「つ、つまり……わたしがスキルで手入れした物(者)は、骨董品化することで、新しい能力を得る……と」
「ええ♡ わたくしは新スキル【言霊】を手に入れましたの。相手に、強制的に言うことを聞かせる能力ですわ……♡」
な、なるほど。だからわたしを含めた、みんな、アナの言いなりになるわけだ。
いや、それってわたしに使っちゃダメなやつじゃ!?
「さぁ♡ リオン様【甘えて、甘えて♡ たぁっぷり、甘えて♡】」
ああ、だめだ。逆らえないよぉ。
わたしはアナの胸の中に、沈んでいくのだった。
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