21.鋼鉄蟻の死骸をリサイクルして【魔剣】を量産し、要塞化して迎え撃つ準備をしました
「ふぅ……。とりあえず、第一波は片付いたね」
わたしは落とし穴を覗き込んだ。
そこには、桜香の炎で黒焦げになった【鋼鉄蟻】の死骸が山のように積み重なっている。
普通なら、ただの産業廃棄物だ。硬すぎて解体もできないし、臭いし、邪魔なだけ。
でも、わたしの目には「宝の山」に見えていた。
「主よ、すまない……」
横で、キリカが沈痛な面持ちで頭を下げる。
その手には、半ばから砕け散った剣の柄が握られていた。
「ボクの未熟さゆえ、主から頂いた剣を壊してしまった。これでは、次の襲撃で主を守れない……」
「未熟なんかじゃないよ。キリカの腕力とスピードに、なまくらな剣が耐えられなかっただけさ」
わたしはキリカの手から、折れた剣の柄を受け取る。
そして、落とし穴の中の「死骸」を指差した。
「ないなら、作ればいいんだよ。――あの『硬すぎる素材』を使ってね」
「素材……? まさか、鋼鉄蟻をか?」
「そう。奴らの甲殻は、鉄よりも硬い。だったら、それを剣にすれば、鉄をも切り裂く最強の剣になるはずだ」
まずは、素材の確認だ。
わたしは【市場調査】を発動する。
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【素材名:鋼鉄蟻の甲殻】
【レア度:SR】
【状態:炭化(表面のみ)、超硬度】
【特性:物理耐性(大)、魔力伝導率(中)】
【買取価格:1体につき500RP】
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よし、思った通りだ。
表面は焼けているけれど、中身の強度は維持されている。
わたしは穴の縁に立ち、手をかざした。
イメージするのは、不純物を排除し、硬度を極限まで高めた黒き刃。
「――【仕様変更】。モード:武具生成」
カッッ……!
穴の中の死骸が光に包まれ、分解されていく。
炭化した肉や内臓は肥料として土に還り、残った強靭な「甲殻」と鋭利な「大顎」だけが抽出され、宙に浮き上がる。
それらがキリカの「折れた剣」に吸い込まれ、融合していく。
赤熱した鉄のように輝き、やがて冷え固まると――そこには、漆黒の輝きを放つ一本の長剣が浮かんでいた。
「できたよ。性能は……っと」
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【武器名:黒殻の魔剣】
【レア度:SSR】
【攻撃力:1500】
【耐久値:∞(自動修復)】
【スキル1:金剛硬化】
※魔力を込めることで、ダイヤモンド並みの硬度を得る。
【スキル2:斬撃強化】
※振るう速度に応じて、斬れ味が倍増する。
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「名付けて【黒殻の魔剣】だ。これなら折れないよ」
「これが……新しい、ボクの剣……」
キリカが震える手で、その剣を掴む。
ズシリとした重み。だが、不思議と手に馴染む。
彼女は無造作に、近くにあった岩に向かって剣を振るった。
ヒュンッ。
音もなく、岩が両断された。
断面は鏡のように滑らかだ。
「……素晴らしい。【斬撃強化】のスキルか。魔力の通りも、切れ味も、以前の剣とは次元が違う。これなら……全力が出せる!」
キリカが恍惚とした表情で、頬を紅潮させる。
SSR家臣に相応しい、SSR武器の誕生だ。
「す、すげえ……! 岩を豆腐みたいに切りやがった!」
見ていたガラが、目を丸くして驚愕する。
わたしはニヤリと笑って、彼女たち餓狼団の方を向いた。
「ガラ、君たちも今の装備じゃ心許ないでしょ?」
「う……痛いとこ突くねえ。アタイらの武器は、廃材の鉄パイプやナイフだからな。あんな硬い蟻が来たら、歯が立たねえよ」
「だよね。だから――君たちの分も作るよ」
「は?」
わたしは再び、落とし穴の死骸に向けて手をかざした。
素材はまだ腐るほどある。
三十匹近い鋼鉄蟻の甲殻を、全部リサイクルする。
「――【仕様変更】。一括生産!」
シュン、シュン、シュン、シュンッ!
空中に、次々と漆黒の剣と盾が生成されていく。
キリカの魔剣ほど特化はしていないが、それでも鋼鉄蟻の硬度を持つ「量産型・黒殻剣」と「黒殻盾」だ。
「さあ、みんな持っていって! 今日からそれが、ウチの正式装備だ!」
「ま、マジかよ……! こんな業物を、全員に!?」
「軽い! なのにすげぇ硬いぞ!」
餓狼団のメンバーたちが、新しい武器を手に取り、興奮で色めき立つ。
ただのゴロツキ集団だった彼らが、一瞬で「黒き甲冑の精鋭部隊」へと生まれ変わった。
◇
武器は揃った。
次は「陣地」だ。
「アナ、罠の設置は?」
「完了しております。リオン様のご指示通り、物理的な罠を」
アナが指差した先――畑の周囲には、無数の「落とし穴」が掘られていた。
ただの穴ではない。その底には、わたしが伐採した「白骨樹」を加工した、鋭利な杭がびっしりと植えられている。
「名付けて『白骨串刺しトラップ』だね」
白骨樹は骨のように硬い。落ちれば串刺し、運良く生き残っても這い上がることは不可能だ。
最後は、物理的な防御壁だ。
わたしは、事前に伐採し、積み上げておいた「白骨樹の丸太」の山に向かった。
「この木材も、全部有効活用させてもらうよ」
わたしは【商品修繕】で丸太を加工し、【仕様変更】で形状を整える。
「――防壁展開!」
ズズズズズ……ッ!
地面に突き刺さった丸太が、互いに噛み合い、融合していく。
あっという間に、屋敷と畑を囲む高さ3メートルの「白き防壁」が出現した。
所々に、内側から攻撃するための足場と、銃眼も設置済みだ。
「完璧だ……。これなら、城攻めだって耐えられるぞ」
ガラが呆れたように防壁を見上げる。
数時間前まではただの荒野だった場所が、今や難攻不落の「要塞」と化していた。
ちなみに、これだけの設備投資とSSR武具の作成には、莫大なRPがかかった。
だが、心配は無用だ。
作業中にも、匂いに釣られた斥候の蟻が五月雨式にやってきていたのだ。わたしはそれを片っ端から【買取】して、資金に変えていた。
向こうは偵察のつもりだろうが、こっちにとっては「資材と資金の定期便」でしかなかったわけだ。
◇
そして――太陽が沈んだ。
夜の帳が下りると同時に、白骨樹海の奥から、不気味な地響きが伝わってくる。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……。
数千、いや数万の足音。
SSR野菜の匂いに釣られた、魔物の大群のお出ましだ。
以前なら、絶望していただろう。
でも今は違う。
「総員、配置につけ!」
ガラの号令で、黒殻装備で武装した餓狼団が防壁の上に並ぶ。
その瞳に恐怖はない。あるのは、力への信頼と、守るべき家がある者の強さだ。
「キリカ、調子は?」
「最高だ。この剣のサビにしてくれる」
キリカが黒殻の魔剣を構え、獰猛に笑う。
桜香も、両手に炎を纏わせてウズウズしている。
アナは優雅にナイフを磨いている。
わたしは防壁の最前列に立ち、迫りくる闇を見据えた。
こっちは準備万端だ。
食料も、武器も、仲間も揃った。
「さあ――どんと来い。全部まとめて、ウチの商品にしてやるから!」
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