19.魔物の死骸と生ゴミをリサイクルしたら、最強農地できちゃいました
「ほらよっと! これで全部だ!」
ドサァァァッ!
ガラが背負っていた巨大な麻袋をひっくり返す。
中から出てきたのは、廃棄都市中から集めてきた生ゴミの山だ。腐った野菜くず、残飯、謎のヘドロ。
普通なら鼻が曲がるような悪臭が漂うはずだが……。
「主よ、こちらも完了したぞ」
ズズズズズ……。
キリカが引きずってきたのは、巨大な猪型の魔物(の死骸)だった。
白骨樹海で狩ってきた獲物だ。
「よし、材料は揃ったね!」
わたしは目の前に積み上がった「ゴミと死体の山」を見て、ニッコリと笑った。
他の人間が見ればただの汚物処理場だが、今のわたしには「宝の山」に見える。
「リオン様、本当にこれで……野菜が育つんですかいのぅ……?」
餓狼団の老婆(ロジャーって名前らしい)が、不安そうに聞いてくる。
無理もない。塩害で死んだ土地に、ゴミを積み上げただけなのだから。
「大丈夫だよ、ロジャーおばあちゃん。魔法を見せてあげる」
わたしはゴミの山に手を触れた。
発動するのは、修理でも買取でもない。
物質の構成を根本から作り変えるスキル。
「――【仕様変更】。モード:発酵・熟成」
カッッ……!
ゴミ山が眩い光に包まれる。
本来なら数ヶ月、数年かけて微生物が行う分解プロセスを、スキルの力で「一瞬」に短縮する。
さらに、魔物の死骸に含まれる魔力を、栄養素へと変換して凝縮させる。
シュゥゥゥゥ……。
光が収まると、そこには黒々とした、しっとりとした土のような山が出来上がっていた。
悪臭は消え失せ、代わりに森の腐葉土のような、芳醇で甘い香りが漂っている。
「す、すげえ……! ゴミが一瞬で、サラサラの土に!?」
ガラが目をむいて叫ぶ。
「いい匂い……これ、食べられるんじゃないか?」
「これは『特級魔法堆肥』だよ。これを畑に撒くんだ。ガラ、桜香、お願い!」
「合点だ! うぉぉぉぉッ!」
「はーい♡」
ガラと桜香がクワを手に取り、先ほど整地した畑へと飛び出した。
ここからはパワー勝負だ。
ドカッ! バキッ! ドゴォッ!
ガラが再生した右腕で、地面を掘り返す。
桜香が鬼の怪力で、土を砕く。
二人が通った後は、重機が通ったかのように深く耕されている。
「皆さん。撒きますわよ」
アナと子供たちが、耕された土の上に「特級堆肥」をパラパラと撒いていく。
黒い堆肥が、死んでいた白い土に混ざり合い、みるみるうちに色が変わり始めた。
カサカサだった地面が、リサイクルされたのだ。
「リサーチっと」
~~~~~~~~~~
【品名:リオン農園の土】
【レア度:SSR】
【状態:栄養過多、魔力充填済み】
【効果:植物の成長速度10000倍】
~~~~~~~~~~
「よし、完成! じゃあトニー、その種を植えてみて」
「う、うん!」
トニーが、ゴミの中から拾ってきた「しなしなの野菜の種(種類不明)」を、恐る恐る黒土に埋める。
そして、アナがジョウロで水をかけた、その瞬間だった。
ズドォォォォォォン!!
「うわぁっ!?」
爆発音と共に、地面から緑の柱が噴出した。
芽が出たと思ったら、一瞬で茎が太くなり、葉が茂り、花が咲き、そして――
「な、なんだこれはぁぁぁ!?」
全員が絶叫した。
そこには、子供の身長ほどもある「巨大なトマト」がなったのだ。
なるほど、あの腐った実はトマトだったんだね。
「せ、成長が早すぎる……! それに、デカい!」
キリカが巨大トマトを見て、剣を構えるほど警戒している。
「土の栄養が凄すぎて、ちょっと育ちすぎちゃったかな?」
わたしは苦笑いしながら、巨大トマトをもぎ取った。
ずしりと重い。果汁が溢れそうだ。
「さあ、みんな。収穫祭だよ! 食べてみて!」
わたしが渡すと、ガラがおっかなびっくりトマトにかぶりついた。
ジュワッ。
「……ッ!?」
ガラの目が大きく見開かれる。
「あ、甘ぇ……ッ! なんだこれ!? 果物かよ!? それに、力が湧いてくる……!」
「うまい! うまいぞ!」
「こんな美味しい野菜、初めて食べた……!」
子供たちや老人たちが、巨大野菜に群がり、口々に歓声を上げる。
中には泣き出す者もいた。
廃棄都市の毒々しい色の野菜しか知らなかった彼らにとって、この味は衝撃だったのだろう。
「ふふっ。これなら30人と言わず、100人いても養えるね」
わたしが満足げに頷くと、口の周りをトマトの汁で真っ赤にしたガラと桜香が、尻尾をブンブン振って(幻覚)抱きついてきた。
「リオン様ぁぁ! 一生ついていきますぅぅ!」
「ご主人様……♡ アタイ、もうアンタ以外のメシは食えねぇよぉ……♡(意味深)」
「重い重い! 離れて!」
こうして、食料問題は「リサイクル農業」によって一瞬で解決したのだった。
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