15.寝室でヒロイン戦争が勃発し、翌朝には筋肉ムキムキの女番長に決闘挑まれました
屋敷が一応、綺麗になった!
といっても、外観はまだまだだし、壁にはホコリやらシミやらが残っている。完全に新築とは言えないけどね。
それでも、わたしと家臣たち、そして子供たちが住むには十分だ。雨風もしのげるし、寒さもしのげる。
まあ、ただ一つだけ問題があるとすれば。
「はっ、はっ、はっ……♡」
「このっ! 離れろ! 無駄肉鬼! 主はわたしのものだぞ!」
今、わたしが寝室として使えるのは、一室しかないということだ。
そしてなぜか、家臣たち全員(アナ、キリカ、桜香)が、示し合わせたように同じ部屋に集っていることだ。
まあ、一応問題は無いよ? 倫理的な問題はね。でも。
「だいじょうぶ……♡ さきっちょ……♡ さきっちょだけでいいんで……♡ ほんと、さきっちょだけで……♡」
「止めろセクハラ鬼! なんのさきっちょだ、なんの!」
「はっ♡ はっ……♡ もうだめ……♡ 耐えられない……♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡」
「だからやめろぉお!」
ドゴォッ!
キリカが桜香に渾身の蹴りを食らわせる。
しかし、桜香は野生の勘とでもいうのか、攻撃が当たる瞬間に腕でガードしていた。
それでもキリカの剛力が勝り、桜香の巨体が窓際まで吹っ飛ばされる。
彼女は空中で掌から炎を噴射し、それを推進力にして華麗に着地した。無駄にスペックが高い。
一方で、キリカはここぞとばかりにわたしを抱きしめる。
「主、ああ……わたしの主……♡ 怖かっただろう? 大丈夫……。わ、わたしが……今夜はずっとずっと、ずぅっと……そばにいてあげるからね♡」
なんか、目が怖いよ。瞳孔が開いている。
「だ、大丈夫……そばにいて守るだけだから……。ふ、二人きりだけど……べ、別に何もわるいことしないから……。ほんと、悪いことはしないから……ね? ふぎゃう!」
ドカッ!
今度はキリカが蹴っ飛ばされた。犯人はアナだった。
「全く貴方たちときたら……」
はぁあ、と深いため息をつくアナ。
「リオン様。キリカも桜香も、危険ですわ。なのでここはこの二名を鎖で縛り付けて、部屋の外に放り出しましょう。大丈夫、わたくしが夜通し、ベッドサイドでリオン様の寝顔を見守ってますので……♡」
おや、雲行きが。
「そこの発情犬二名と違って、わたくしは貴方様の体を穢すような真似はいたしませんわ……♡ ただ、わたくしは貴方様の一番でいられればそれでいいのです……♡ 貴方様の一番の女はこのわたくし……。ねえ、そうですわよね? ねえ……そうと言ってくれないと、わたくし不安で、どうにかしちゃうかもしれません……。もうわたくし無しではいられない身体になるまで……もうやめて、許してって泣いて喚いてしまうまで……たっぷり、優しく、いろいろ教えてあげます……」
すとっぷすとーーーーぷ!
目がハイライト消えてる!
「みんな、なかよくしよう! ね!」
ケンカはよくないよ。
「ケンカ……ふっ」
アナが冷ややかに嘲笑う。
「リオン様。こんなお言葉はご存じでしょうか?『ケンカは同じレベルでしか発生しない』と」
聞いたことあるような。
「わたくしは、リオン様の一番の女。そこのむっつり騎士と発情雌鬼はそれ以外の女。一番と、それ以外。レベルが違うのですよ……」
「ぐぅうう! くそぉお! どうしてわたしが一番じゃあないんだよ!」
「はぁ……♡ はぁ……♡ もうだめです……♡ 我慢しすぎて……もれちゃいそう……♡」
ボッ!
ギャー! 桜香から火が漏れてるッ!
「性欲を発散させるか、異能の炎を出すかしないと、また熱暴走しちゃうみたいだねっ」
「はっ♡ はっ♡ はいっ♡ はっ、はっ、な、なのでっ、♡ す、すこしでいいのでっ♡ ちゅ、ちゅ、ちゅーでいいのでっ♡ ちゅっ、ちゅこしだけ……チュ……♡」
「わ、わかったよ。じゃ、じゃあその……そうだ。目を閉じて」
「はいっ!」
桜香が嬉々として目を閉じ、唇を突き出す。
わたしはキリカとアナを手招きした。
「はッ♡ はっ♡ ま、まだですかっ、まだですかっ♡ ひゃんっ♡ なにかが巻き付いてきて……♡」
ギュッ、ギュ、ギューッと。
キリカが手早く厚手の絨毯で桜香を簀巻きにする。
「あれ!? なんですかっ? これどういう状況なんですかっ!? 目の前が真っ暗で、体の自由もきかなくってっ。ああっ、不自由!」
キリカはそのまま桜香を抱え上げ、窓の外へとテイクバック。
「いけぇッ!」
「あっあっあっ! ま、まだっ! まだですかっ! もうっ、漏れちゃうっ、漏れちゃうぅううううううう!」
ドォォォォォォォン……!
庭に、巨大なキャンプファイアーが出来上がった。危なかったぁ。
「しばらくああしとこっか」
「「そうですね」」
「二人は……仲良くね? できるね?」
「「…………」」
「へんじっ!」
「「はぁい!」」
◇
翌朝。
起きると、なぜだかわたしは肉に埋もれていた。
肉……美少女の柔らかいお肉。
右には、アナ。わたしを抱きかかえるようにして、眠っている。
左には、キリカ。なぜかわたしに腕枕をして、だらしない顔でよだれを垂らしている。
で、最後になぜか桜香。庭から戻ってきたのか、全裸でスス汚れもそのままに、わたしの体の上へ覆い被さっていた!
「さ、みんな起きて起きてー!」
「「「…………」」」
みんな、ゆらりと目覚める。
そしてなぜか不機嫌そうに、お互いを睨み合っている。
なぜだろうか。みんな……目の下にどす黒いクマがあった。
「どうしたの?」
「「「別に……」」」
「何かあったの?」
「「「何も……」」」
なんかあったに決まってる。昨晩、わたしが寝た後に第二ラウンドがあったなこれ。
まあ、うん。わからないことは、わからないってことにしておこっ。
「た、大変だぜリオン様!」
そのときだった。
部屋の扉がバーン! と開く。
トニーだ。
「ええええええ!? た、大変なことになってるぅう!?」
室内の地獄絵図を見て絶叫するトニー。
そうだね。こっちも大変だね。
「どうしたの、トニー? マジな話?」
「あ、ああ……。屋敷の前に……廃棄都市のゴロツキどもがやってきたんだっ!」
「「「……へえ」」」
家臣たち、その言葉を聞いた瞬間、瞳から光が消えた。
「わたしの……リオン様タイムを邪魔しようっていうのか……」
「……ご主人様のおちゅうちゅうタイムを……邪魔する害虫は……消し炭」
「……みな、わかってますね」
「「塵も残さず、消す」」
「やめてやめて」
しっかしゴロツキ連中……いったいわたしの屋敷に何の用なんだろう。
わたしたちは身支度を整え、外へと向かう。
屋敷のドアが、ドンドンと乱暴に叩かれていた。
「アナ、開けて」
「承知」
ガチャ……。
ズカズカズカ。
入ってきたのは、柄の悪そうな集団。
全員が女性。それも、鋼のような筋肉をまとった、アマゾネスのような戦士たちだ。
そのリーダーらしき人物が、前に出る。
浅黒い肌に、割れた腹筋。
左目には眼帯をし、右腕は――無骨な鉄塊のような『義手』だった。
「よぉよぉ、あんたが新しい領主だなぁ? ガキじゃあねえか。ん? 可愛いねえきみぃ~?」
家臣×3は「「「わかる」」」と頷く。そこは主に近づくな的な反応してほしいなー。
「初めまして、リオン・サイハーデンです。君たちは廃棄都市の人だよね?」
「ああ……そうだ。アタイらは【餓狼団】。アタイはリーダーのガラ。見ての通り、レディースだ」
ガラと名乗る女性は、義手の指をガシャガシャと動かしながら不敵に笑う。
「ガラさんは一体なにしにきたの?」
「アタイらのナワバリに、なに、良い感じの建物ができたからよぉ。ここを餓狼団のアジトにしようってね」
なるほど。領主の館が修繕されたから、それを奪おうってことか。
「ようは、ここに住みたいってこと?」
「まあそうなるね。ガキ」
「いいよ」
「「「リオン様!?」」」
家臣達、驚愕。
「殺すのでは?」「八つ裂きにするのでは?」「消し炭にするのでは?」
怖い怖い怖い。物騒な単語しか聞こえてこない。
「住んでもいいけど、その代わり、手伝いしてほしいんだ。わたしたちの」
「ああ? どういうことだ」
「君たち、ウチで仕事しない? 腕の立つ人達ほしいんだ。ここに住み込みで働くってことで、どう?」
「カッ……! ははは! 不良のアタイらを、雇おうってか?」
「うん。強いんでしょ? 筋肉むっきむきだし」
「ああ、つええよ。強くなきゃ生きていけねえからな」
ガラは背後の荒野を親指で指した。
「アタイらのアジトにはよ、戦えねえ女らが待ってるんだよ。あいつらを路頭に迷わせるわけにはいかねえ。だから――アタイらで、ここを奪いに来たんだ」
なるほど。
彼女たちの背後には、守るべき弱者たちがいるわけだ。
私欲のために奪いに来たわけじゃない。生きるために必死なんだ。
「アタイらの上に立ちてーならよぉ! アタイらより強いことを証明してみな!」
わたしは思う。この人達には、是非ともウチの仲間になってほしいと。
仲間思いで、腕が立つ。
魔物の死骸や素材集めには、こういう頼もしい戦力が不可欠だ。
「殺す……」「斬る……」「消す……」
背後の三人が限界寸前だ。殺気が物理的な圧力になって吹き荒れている。
「まあ、待って待って。決闘は、1対1でやろう。わたしとガラさんの決闘」
だってそうしないと、アナたち、この人らを再起不能にしかねない。最悪殺しかねない。
「はっ! 良い度胸だねガキンチョ……。度胸だけは買ってやろう。アタイが勝ったら、そうだな、アタイの愛玩動物にして可愛がってやるよ」
ガラさんが義手でわたしの頬をなぞり、舌なめずりをする。
「うん。じゃあわたしが勝ったら――お姉さんがわたしの愛玩動物ね♡」
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