14.ゴミ屋敷を【部分修繕】で格安リフォーム
数日後。
『現在のRP:152,300』
ウィンドウに表示された数字を見て、わたしは思わずガッツポーズをした。
15万ポイント。
子供たちに廃棄都市のゴミを集めてもらっている間、わたしとアナは屋敷の掃除、キリカは白骨樹海で魔物狩りを行っていた。
トリプルで稼働したことで、ゴミ(資源)はいつも以上にたまり、換金効率が爆上がりしたのだ。
「やっぱり、手分けするっていいね!」
「ああ……リオン様……んふぅ……はむはむ」
「桜香さん、何やってるの……?」
「離れてる間寂しくて……匂いを嗅いでないと死んじゃうんです……すーはー……」
帰還した桜香が、背後からわたしを抱きしめ、耳元で甘い吐息を漏らしている。
背中に押し当てられる二つの柔らかい暴力がヤバい。
でも。辞めてマジで。子供たちが見てるから。
「さぁ、ベッドに参りましょう……大丈夫、優しく食べてあげますから……じゅるり♡」
「はいはい、ふざけてないで。お屋敷の改革はっじめるよー」
ベリッ!!
アナとキリカが、物理的に桜香を引き剥がす。
「油断も隙も無い雌鬼め! 主を汚すな!」
「……しつけが必要ですね、この雌犬には。あとで正座ですわ」
犬なのか鬼なのか。
そんな惨状を、トニーが呆れた顔で見ている。
「んで? RP使ってなにするんだよ、リオン様」
「屋敷の【商品修繕】をするよ。ほら、ウチってまだボロッボロでしょ?」
わたしは天井を指差した。
雨漏りどころか、空が見えている箇所がある。壁は崩れかけ、庭は雑草と瓦礫のジャングルだ。
冬が来たら全員凍死しかねない。
「ってわけで! まずはお屋敷大改革からやります!」
まだお風呂と、一部の寝室しか直していないからね。
「でも風呂場だけで1万RPかかったんだろ? 一部屋1万だとして……ここ、部屋数が50以上あるぞ。15万じゃ全然足りねーじゃん」
トニーの指摘はもっともだ。
普通にやれば破産する。
だが、わたしはニヤリと笑って人差し指を振った。
「ふっふっふ。アナ、トニー。実はね、リサイクルショップのスキルには『隠し機能』があるんだっ」
「隠し機能……ですか?」
わたしはウィンドウを操作し、みんなに見えるように表示させた。
~~~~~~~~~~
【修繕オプション】
▶ 全体修繕:対象を新品同様に復元する。高コスト。
▶ 部分修繕:対象の「指定した部位」のみを修復する。低コスト。
~~~~~~~~~~
「部分修繕……?」
「そう! 部屋1コを丸々全部直すと1万とかするけど……たとえば『壁』『床』『天井』だけを直して、家具とか装飾はボロいままにすれば、もっと安く済むんだっ!」
これぞ、貧乏リフォーム術。
「はー、なるほどな」
トニーが感心したように唸るが、すぐにジト目を向けてきた。
「でもよ。そんなのあるってわかるなら、最初からそーすりゃよかったじゃんか。一万とか使って風呂場全部直さなくてよ」
「風呂場はもう配管から何から完璧に壊れてたしね……。それに……わたし自身、このスキルを使い慣れてなかったんだ。街に来てから、やらないといけないこと多すぎて」
言い訳がましいけれど、実際そうだ。
生きるのに必死で、スキルの検証なんてしてる暇がなかった。
「でも……トニーたちが手伝ってくれるようになって、時間も余裕もできたんだ。いろいろ調べる余裕ができたのは、君たちのおかげだよ。ありがと! トニー! 少年の部のみんなっ!」
わたしが満面の笑みでお礼を言うと、子供たちは顔を見合わせてモジモジし始めた。
なんだかんだで、みんな褒められるのに慣れていないのだ。
「へ、へへっ……まあ、俺たちも飯食わせてもらってるしな……」
「はっはっは……リオン様ぁ……尊い……♡」
ドサッ!
感極まった桜香が、背後からわたしを押し倒した。
「わー! 桜香ねえちゃんがリオン様をおしたおしたー!」
「自分も褒められて嬉しくなって、マウントポジションとったんだっ」
「やめて! 腰をカクカクしないで! 当たってるから!」
ベリッ!!
再び引き剥がされる桜香。
「……ほんとにこの女、屋敷に入れておかないほうがよかったのでは?」
「でも桜香がいるおかげで、みんなが安全にゴミ拾いできてるわけだし……」
アナが「チッ」と舌打ちをした。怖いよメイドさん。
「で、話戻すけど! 『部分修繕』を駆使しようと思う。やるのは『壁』『天井』『床』。この3つに絞る。家具はとりあえず後回し。お掃除はみんなでやればいいしね。それでいいかな?」
「「「異議無し!」」」
「よし、じゃあ……まずは一階廊下と広間から! 【商品修繕】!」
シュゥゥゥゥゥン……!
わたしが手をかざすと、光の波紋が広がっていく。
ボロボロに剥がれていた床板が、真新しいオーク材のフローリングに変わり、穴だらけだった漆喰の壁が、真っ白で滑らかな壁面へと塗り変わる。
蜘蛛の巣が張っていた天井も、シミ一つない清潔な天井へと修復された。
ただし、置いてある椅子や壺はボロボロのままだ。
まさに「ハコだけ新品」状態。
「うぉ! すげえ!」
「壁の穴が完全にうまってる!」
「隙間風が入ってこないぞ! 部屋があったけぇ!」
わぁわぁと少年の部のみんなが歓声を上げて走り回る。
よしよし、上手くいった。
この調子で、屋敷中の主要な部屋を直していく。
『RP消費:100,000』
50部屋近くの「ハコ」を直して、残りは5万RP。
「残りのRPは、設備が必要な場所を優先的に直していくよ!」
食堂(厨房機器込み)、玄関(防犯強化)、子供部屋(ベッド修理)、そして屋敷を囲む防壁。
この重要箇所を、残り5万を使ってフル修繕した。
これで生活基盤は完璧だ。
……あ。
「あのさ……アナ、キリカ、桜香……」
わたしは重大なミスに気づき、冷や汗を流した。
「この修繕の優先順位だとさ……君らの『個室』を直すポイントがなくなっちゃったんだけど」
子供部屋とわたしの部屋(領主室)は直した。
でも、メイド部屋や客室は、壁と床を直しただけで、ベッドも家具もボロボロのままだ。とても寝られる状態じゃない。
「問題ありませんわ」
「うむ、何も問題ない」
「……はあ、はあ……いただきます♡」
三人が、食い気味に即答した。
そして、肉食獣のような目で、わたしのきれいになった寝室を見つめている。
「やめてやめて。その目はやめて」
「この順番だと、必然的に、わたくしたちが寝る場所は『リオン様のお部屋』しかありませんわね?」
「護衛対象と同じ部屋で寝るのは、騎士として当然の義務だ」
「私は犬ですので、リオン様のベッドの足元……いえ、布団の中で丸くなります……♡」
「「「ありがとうございます!」」」
「感謝されてる!? 違うからね! 絶対に変なことしないでよ!?」
こうして、屋敷はピカピカになったものの、わたしの安眠は(物理的にも貞操的にも)脅かされることになったのだった。
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