13.孤児たちに「ゴミ拾い」を頼んだら、彼らが優秀すぎて資源回収が自動化されました
翌朝。
ふかふかのベッドで目覚めた子供たちは、まだ夢を見ているような顔をしていた。
よく眠れたようで何よりだ。
睡眠は大事だもんね。
ちなみにこのベッド、うちにあったものをリペアしたものである。
結構RPがヤバいけど、OKOK。
「さ、みんな起きて起きてー!」
トニーをはじめとした、子供たちが目を覚ます。
「おはよう……その、ご主人様?」
トニーが子供らを代表し、わたしに挨拶をする。
「別に君らは使用人でも奴隷でもないし、いいよ。リオンで」
「……そっか。じゃ、リオン様。おはよう」
「うーん、様もいらないんだけど?」
「そういうわけにはいかねーだろ。あんたが頭なんだから」
「まあ君がそうしたいならそうすればいいよ。じゃ、みんなと一緒に、広間に集合でよろしく!」
わたしは彼らを広間に集め、昨夜のうちに用意しておいた「サプライズ」を披露した。
「さあ、みんな。まずはこれを着てみて」
わたしが指差した先には、人数分の新しい服が畳まれていた。
丈夫なデニム生地で作られた、青色のつなぎ(オーバーオール)。
背中には【リオン・リサイクル店】と書いてある。
「リオン様よぉ、これはいったい?」
「お揃いのユニフォーム兼作業着だよ」
「背中のこの、リオン・リサイクル店ってのは?」
「領主であるわたしの名前を明示したほうが、スラムのごろつき連中が、君らに手を出しにくくなるかなーっておもってね」
「……おれらのために、そこまでやってくれるのか?」
「うん。君たちは大事な仲間だから」
元はスラムで拾ったボロ布だが、わたしの【修繕】と【仕様変更】にかかれば、新品の作業着に早変わりである。
「すげぇ……! 新品だ!」
「僕たちの服……?」
「お揃いだー!」
子供たちは歓声を上げ、ボロボロの服を脱ぎ捨てて、新しいつなぎに袖を通した。
今までサイズの合わないボロ布を巻き付けていただけの彼らが、統一された制服を着ると、一気に「チーム」らしく見えるから不思議だ。
みんな、新しい生地の感触を確かめるように、自分の体をペタペタと触ったり、裾を引っ張ったりして目を輝かせている。
「おれも、その、似合ってるかよ?」
「うん! 似合ってるよ」
わたしが言うと、リーダー格の少年トニーが、照れくさそうに、でも誇らしげに胸を張った。
鼻の下を指でこすりながら、ニカっと笑う。
「へへっ……なんか、強くなった気分だぜ」
◇
着替えが済んだところで、わたしは全員を庭に集め、業務説明を開始した。
「さて、仕事の説明をするよ。君たちにやってほしいのは『お宝探しゲーム』だ」
「ゲーム?」
子供たちがきょとんとして首を傾げる。
「そう。この袋とトングを持って、街に落ちている『ゴミ』を集めてきてほしい。鉄くず、壊れた道具、変わった石……なんでもいい」
わたしは彼らに、麻袋とトングを配った。
「ルールは簡単。袋いっぱいにゴミを集めて戻ってくること。集めたゴミの『重さ』と『量』に応じて、夕ご飯のグレードアップと……『お小遣い』もあげちゃうよ!」
子供たちの目の色が劇的に変わる。獲物を狙う肉食獣の目だ。
「お、お金……!?」
「ゴミを拾うだけで、お金がもらえるの!?」
「もちろん。ただし、危ない場所には行かないこと。怪我をしたら減点だ。現場監督の桜香さんの言うことをよく聞くこと。いいね?」
「「はーーい!!」」
元気な返事が響き渡る。
スラムの子供にとって、ゴミ拾いは生活の一部だ。それが「お金」と「ご飯」になるなら、彼らにとってこれほど割のいい仕事はない。
みんな、スタートの合図を今か今かと待って、うずうずしている。
「よし、第一回資源回収作戦、スタート!」
「うおおおおっ! 一番は俺だー!」
「ずるいぞトニー! 待てー!」
子供たちは蜘蛛の子を散らすように、一斉に街へと飛び出していった。
◇
結果から言うと、彼らの成果はわたしの予想を遥かに超えていた。
夕方。
屋敷の裏庭には、子供たちが持ち帰った「戦利品」が山のように積み上げられていた。
「リオン様! 見て見て! 裏路地で壊れた大剣を見つけたよ!」
「私は綺麗なガラス瓶をいっぱい拾ったの!」
「俺なんて、どっかの屋根瓦を拾ってきたぜ!」
彼らはスラムの地理を知り尽くしている。
大人が入れない狭い隙間、誰も見向きもしない瓦礫の山。
彼らはそこから、めぼしい「資源」を根こそぎ回収してきたのだ。
「すごい……これ全部でいくらになるんだ?」
わたしは山積みになったガラクタの山に触れ、【買取(売却)】を発動した。
シュンッ! シュンッ! シュンッ!
ゴミの山が次々と光の粒子になって消えていく。
『買取完了:鉄屑×50kg、銅線×20kg、ガラス片×10kg、その他……計10000RP獲得』
「10000……!?」
わたしは思わずのけぞり、その場に尻餅をつきそうになった。
目玉が飛び出るかと思った。
わたし一人が一日歩き回って稼ぐ額を、彼らはたった数時間で叩き出したのだ。
(これが……人海戦術の力……!)
わたしは震える手で、約束の報酬を用意した。
10人の子供たちに、それぞれ銅貨数枚と、リペアで作った「金平糖」を渡す。
キリカを見つけた時の、探索時に、捨てられていたお菓子や食料などの、ゴミをストックしておいたのだ。
「はい、これは君たちの稼ぎだ。よく頑張ったね」
「す、すげぇ……本物の金だ……」
「キラキラしてて甘い! おいしい!」
カリッ、ポリッ。
小気味よい音を立てて金平糖を噛み砕く音が響く。
子供たちは硬貨を大事そうに握りしめ、金平糖を頬張りながら飛び跳ねて喜んでいる。
彼らにとっては魔法のような体験だろうが、わたしにとっては「安い経費」で莫大な利益を得たことになる。
(……これ、完全にウィンウィンだよね? ブラックじゃないよね?)
多少の罪悪感を感じつつも、みんなの笑顔を見れば正解だったと確信できる。
「リオン様、子供たちがこれほど役に立つとは……計算外でしたわ」
アナが感心したように呟いた。
横では、現場監督として同行していた桜香が、うっとりとした顔で報告に来る。
「リオン様ぁ……♡ 私も頑張りましたよぉ。悪いゴロツキを追い払って、子供たちを守りました。……ご褒美に、頭を撫でてくださいぃ……」
桜香が長い身体を折り曲げ、わたしの前に頭を差し出してくる。
その背後には、ブンブンと激しく振られる幻覚の尻尾が見えるようだ。
頬を赤らめ、瞳を潤ませて、完全に「待て」をしている大型犬である。
わたしは苦笑しながら、その頭をよしよしと撫でた。
「うん、ありがとう桜香。助かったよ」
「んふぅ……♡ 幸せ……♡」
桜香がとろけるような顔で、その場にへたり込んだ。
「……チッ。あの駄犬、仕事にかこつけてリオン様の成分を補給しやがって」
キリカが殺気立った目で剣の柄を握っているが、見なかったことにしよう。
こうして、わたしの領地には「リオン・リサイクル店 少年の部」が結成され、資源とお金が自動的に集まる最強のシステムが完成したのだった。
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