表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/43

11.拾われた人食い鬼は、溢れ出す「好き」が止められず、主の匂いをスーハーしています【Side:桜香】



【Side:桜香】


 あぁ、いい匂い。

 ひんやりとして、甘くて、どこか懐かしい。

 この小さなお方の身体に抱きついていると、頭の芯が痺れて、ドロドロに溶けてしまいそうです。


 私は、ずっと「出来損ない」でした。


 私の生まれ故郷である「鬼の里」では、「喰らうこと」こそが美徳とされていました。

 力の強い男鬼は、人間を物理的に喰らい、血肉とする。

 妖艶な女鬼は、男を性的に喰らい、精気を搾り取る。

 そうやって他者の命を奪い、己の糧とすることこそが、鬼人族としての「正常」であり「誇り」だったのです。


 けれど、私にはそれができませんでした。

 人間を傷つけるのが怖かった。

 男の人に触れ、その命を啜るなんて、汚らわしくて耐えられなかった。


『情けない。貴様のような臆病者は、鬼の面汚しだ』


 族長である父にそう吐き捨てられ、私は里を追放されました。

 行く当てなどありません。

 角を隠し、人間のふりをして街に紛れ込んでも、私の巨体と溢れ出る妖気は隠しきれず、すぐに正体がバレてしまう。


『化け物だ!』

『人食い鬼だ、殺せ!』


 石を投げられ、罵声を浴びせられ、逃げ惑う日々。

 誰も私を見てくれない。誰も私を受け入れてくれない。


 そうして流れ着いたのが、この世界の最果て――廃棄都市デッドエンドでした。


 ここで私は、自分と同じ「捨てられた子供たち」に出会いました。

 親のいない彼らを放っておけず、私は廃教会に住み着き、不器用ながらも「母親」の真似事を始めました。

 貧しいけれど、子供たちの笑顔は温かかった。

 初めて、自分が生きていてもいい場所を見つけた気がしました。


 でも、血の運命は残酷です。

 鬼としての本能――「喰らいたい」という欲求が、日増しに強くなっていったのです。私も所詮は鬼の女だったのでしょう……。

 そしてそんな本能を無理やり抑え込んでいた私の身体は、行き場のないエネルギーで悲鳴を上げていました。


 内側から灼熱の業火に焼かれるような激痛。

 意識が飛び、視界が赤く染まる。

 このままでは暴走して、愛する子供たちを喰い殺してしまうかもしれない。


 だから私は、一人で死ぬために、この白骨樹海へと入ったのです。

 誰にも迷惑をかけず、ひっそりと灰になろうと。


 それなのに。


「あぁ……リオン様……♡」


 貴方様は、現れました。

 業火の中で焼ける私を恐れることもなく。

 小さな手で、私の醜い角に触れて。

 そして、【修繕】してくださった。


 あの瞬間の衝撃を、どう言葉にすればいいでしょう。

 私の中にわだかまっていたドロドロとした熱が、貴方様の手を通じて、綺麗な光へと変わっていく感覚。

 それは、どんな食事よりも満たされる、極上の快楽でした。


(あぁ、駄目……。もう、離れられない)


 私は貴方様の胸に顔を埋め、大きく息を吸い込みました。


 スーッ、ハァーッ……♡


 フルーツのような甘い香りと、お風呂上がりの石鹸の香りが混じり合って、脳髄をくすぐります。


 リオン様。

 貴方様は、男の子なのですか? それとも女の子?

 いいえ、そんなことは些末な問題です。

 貴方様が貴方様であるなら、性別なんて関係ありません。


 私の熱を鎮められるのは、世界でただ一人、貴方様だけ。

 私の角を触って許されるのも、貴方様だけ。


(好き……。好き、好き、大好き……ッ♡)


 あぁ、どうしよう。

 さっき熱を抜いてもらったばかりなのに、貴方様の匂いを嗅いでいるだけで、また身体の奥が熱くなってきました。

 今度は苦しい熱じゃありません。

 もっと触れてほしい、もっと撫でてほしいという、甘く疼くような熱。


 パタパタパタパタパタッ!

 自分の意思とは関係なく、お尻のあたりの尻尾が激しく振られています。


 いっそこのまま、貴方様を教会に連れ込んで、閉じ込めてしまいたい。

 誰にも渡さない。

 朝も昼も夜も、ずっと抱きしめて、その精気を……。


「……おい。いつまで抱きついているんだ、この発情鬼」


「離れなさい! リオン様が窒息してしまいますわ!」


 背後から、ギャーギャーと邪魔な声が聞こえます。

 銀髪の女と、赤髪の小娘。

 ふふん、負け犬の遠吠えですね。

 今、リオン様の温もりを一番近くで独占しているのは、この私なのですから。


「……離しません。絶対に」


 私はリオン様の細い腰に腕を回し、ギュッと抱きしめました。

 この方は私の命の恩人であり、私の熱の支配者であり……私の、可愛いご主人様。


 拾っていただいたこの命。

 そして、このあふれんばかりの情欲と母性。

 すべて、貴方様に捧げます――♡

【作者からお願いがあります】


少しでも、

「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新がんばれ、応援してる!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】をタップして、

【★★★★★】にしてくださると嬉しいです!


皆様の応援が、作品を書く最高の原動力になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エピソード10で少年って断言してたやん…
鬼なのに尻尾があるの?鬼と言うより牛?
誰もかれも手遅れになってるw つーかこいつら即落ちして忠臣になるのはいいけど、いまいち主の言葉を聞き入れやがらねえ感ありありなのがなあ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ