No.42 友の覚悟
今から約12年前、大戦争の終盤
キング「はぁはぁ...もう少しで...ビビア王の力が戻る...もう少し...耐えるんだ...」
傷だらけのキングが息を切らし小さく鼓舞する
裏の世界の王アピ「ん〜。もう時間が無いなぁ。」
小さな少年のようだ。幼い顔立ちに大きな福耳。「悪」とは到底無関係の様な明るい、活発な少年のようにみえる。
アピ「とりあえず。三大都市ぐらいはぶっ壊しておこうかな」
アピが両手を上げると禍々しい黒い玉が3つ形成される。近づいただけで、この世の全てを壊し尽くす事が出来るほど強大な物だと、直感で感じ取れる程の悪意を放ちながら。
シエナ「マリア。許してね。兄さんの事。世界の事を頼んだわよ」
水色の髪が美しい、優しい眼差しのシエナがボソッと呟いた
マリア「シエナ、まさか...!絶対ダメだ!もう少しじゃないか!都市が飛ぶぐらいどうした事か?!シエナを失う方が良くない!」
シエナ「マリア、ダメだよ。私1人の命で、何千、何万の命が救われるなら、それはとても幸せな事でしょ?本質を忘れちゃいけないわよ。うふふ。マリア、ありがとう。大好きだよ」
マリアは何も言えなかった。シエナは正しい事を言っている。マリアがシエナと同じ立場なら、同じ言葉を吐いているだろうと、直感で分かった。
シエナ「終焉魔法 千年永氷」
瞬間、シエナは消えた
アピ「ん?なんだ」
アピはシエナに抱きしめられていた。
シエナ「もう離さないわよ。一緒に1000年間、眠りましょうね、うふふ」
次の瞬間、シエナを中心に大気を含め一気に凍り始めた
終焉魔法 千年永氷・・・千年溶ける事がない氷を生み出す。詠唱者の魂と引き換えに。
スパンダ「あぁ…なんて事だ...辞めてくれっ!シエナ!だめだ!それだけはダメだ!!」
スパンダは足を震わせながら、明らかに動揺し、混乱している
スパンダ「あぁ...…。ロゼっ!!ロゼっ!!シエナを救ってくれ!今ならまだ間に合う!!」
ローズ「スパンダ、ロゼは見ての通り限界を超えてるわ。。意識すらまだ戻らない…」
ピンク髪の女性がロゼを膝に置き答える
スパンダ「あぁ...なんて事だ...!キングっ!キングっ!!シエナの氷を焼き尽くしてくれ!!頼む!頼むよ!!!!シエナを救ってくれっ!シエナを返してくれっ!!!」
キング「スパンダ...すまない...あれは終焉魔法だ。。私の炎で何年掛かる事か.....」
スパンダ「あぁ...なんて事だ...」
スパンダはヨロヨロとシエナの方へ歩き始める!!
ケイ「スパンダ!行くなっ!もう穴が塞がる!シエナは間に合わない!お前も巻き込まれるぞ!!」
白髪のタレ目の老人が制止する
スパンダ「あぁ...もう、良いんだ...誰も助けてくれねぇんだろ。シエナ...待ってろよ...今...お兄ちゃんが助けに行ってやるからよぉぉぉぉっ!」
走り出すスパンダ
次の瞬間。ビビア王の力が戻り、穴が塞がった。
そこに、シエナとスパンダの姿は無かった。
裏の世界へ落ちた事は明白であった。




