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男に戻るためにTS姿でダンジョン配信するのは本末転倒か否か!?  作者: 赤石アクタ
第二章 コラボ配信編

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第十三話 偉い人に話を聞こう!

──【リリちゃん】寝起きで魔石取る朝活【魔法少女】──



──よし、取れた。だいぶ魔石も集まってきたし、ここのダンジョンは当たりだったかも?今日は調子良いし、もう少し進もうかな。


 あっ、スーパーチャットありがとうございます。『いつもよりテンション高く見える』⋯⋯?


⋯⋯うーん、たしかにそうかも?実は、最近ちょっと良い出会いがあったんだよね。その人のおかげか、最近は生活リズムも回復してきてるの。この前とか三時に起きれたんだよ?うん、そう。午後三時。


 私、このまま真人間になっちゃうかも?あはは、なわけないか。はぁ⋯⋯



──コメント欄──

『たしかに今日は比較的目が死んでない』

『出会いって俺のことか』

『楽しそうなリリちゃんほんとかわいい』

『出会いについて詳しく』

『生活リズムが回復⋯⋯?』

『カメラもうちょい下からのアングルにできない?』

『もっとヘラって』

『どう聞いても男です本当にありがとうございました』

『マジで強いな』

『この深夜帯で朝活を名乗る勇気』

『起きれてえらい』

『未成年だとしたら明らか不登校だなこいつ』

『今日はだいぶメンタル安定してますね!』

『なにこれ匂わせ?』

『俺も今起きたよ』

『社不がマトモぶってて笑えるwww』

『画面酔いした』

『今日は変身しないんですか?』

『こんな配信より配信中のkuwagata卍samuraiを見よう!!チャンネルは──』




──────────────────




「⋯⋯明らかに目をつけられてるわね」


「最悪だぁ⋯⋯っ!!」



 せめて配信では言うなよ⋯⋯!!


 リリちゃんの配信アーカイブを見ながら、俺とヒナは彼女のリテラシーの低さにドン引きしていた。



「しかもコイツ、配信でも結構『アレ』なんだな」



 以前見た時は流し見だったので気がつかなかったが、配信中もリリちゃんの病み具合はかなりのものだった⋯⋯マジでことある事にヘラっている。



「それも彼女がウケてる理由の一つよ」


「え?病んでるとウケるの?」


「情緒不安定な配信者って、見てて楽しいでしょ?」


「いや全然」



 一切共感できなかったが、しかしヒナが言うということはたしかにそれがウケているのだろうか⋯⋯いやだとしたら嫌な界隈すぎないか⋯⋯?



「あと思いのほかコメント荒れすぎじゃない?」


「リリちゃんは基本的にコメントを読まないし、管理もしてないみたい。反応を返すのはスーパーチャットだけ」


「⋯⋯クールだな」



 ここまで突き抜けているともはやかっこよかった。



「──着いたわ」



 ぼーっとリリちゃんのことを考えていると、いつの間にか電車が駅に着き停車した。止まる際の揺れに合わせて身体も揺れる。美少女は軽いから体幹が弱いのだ。



「──行きましょう、カモメ」


「⋯⋯あぁ」




──────────────────




 ダンジョン攻略組の事務所は比較的駅から近く、電車を降りてしばらく歩くとその建物が見えてくる。


 当然来るのは初めてではないのだが、しかし今日の目的は以前とは違う。


 扉の前に立ち改めて緊張を覚える俺とは対照的に、ヒナは躊躇いなく扉をノックした。



「──どうぞ」



 今日この建物で待っているのはダンジョン攻略組のメンバーではない。



「⋯⋯失礼します」



 部屋の扉を開けた先にいるのは、当然見た事のある人物。



「よく来てくれたね。神里ヒナさんに⋯⋯クーちゃん」



──現日本国首相、内閣総理大臣。



「──いや、剣崎カモメ君と呼んだ方がいいかな?」



 自信に満ち溢れた笑顔を見せる長身の男性が、そこに立っていた。




──────────────────




「──俺の、名前⋯⋯」



──出鼻をくじかれた。


 まさか開口一番に真名を看破されるなんて⋯⋯



「⋯⋯知っていたんですか?」


「確信があった訳では無いけどね。でもその反応を見るに当たりだったみたいだ」



──あぁしかもカマをかけられた⋯⋯っ


 なんでこんな短時間で敗北感を抱かなければならないんだ⋯⋯



──内閣総理大臣。


 スーツの上からでも分かる筋肉質な肉体に加えかなりの高身長、年齢はたしか三十代半ば。異例の若さで総理になった目の前の人物は、野心的な瞳で真っ直ぐにこちらを見定めている。


 テレビなどでは当然見た事があるがしかし、いざ実際に対面してみると、思わず会話のペースを握られてしまうようなオーラがあった。



「紅茶でいいかな?」


「あっ、はいお気遣いなく⋯⋯」



 部屋には俺達以外の人間がいないため仕方ないのかもしれないが、なんと総理大臣自らお茶を用意してくれた。これはかなりレアな体験なのでは⋯⋯?



「す、すみませんわざわざ⋯⋯」


「気にしないでくれ。飲み物を用意するのは得意なんだ」


「は、はい⋯⋯?」



 手際よくカップを置いた総理はソファに腰を下ろし、俺達も向かいに座る。



「──まずは感謝を。ダンジョン攻略組とのコラボ配信を成功させ、また当該ダンジョンのダンジョンコアを討伐。充分すぎる成果だ」


「⋯⋯ありがとうございます」



 言葉の割に、当然のことを語るかのような声色だった。



「トドメを刺したのは君なんだってね?それどころか、ほとんどソロで討伐したとすら聞いているよ。はは、君がいなきゃダンジョン攻略組は全滅していたかもしれない。君がいてくれて本当によかったよ」


「⋯⋯はぁ」



⋯⋯言葉の割に、あまり安堵している様子には見えない⋯⋯政治家ってみんなこうなのか⋯⋯?



「あそこは人の出入りがほとんどないダンジョンだったから、あのままだと拡大してモンスターが溢れる可能性が高かったんだ」


「なるほど⋯⋯」



 たしかにあのダンジョンには冒険者が少なかった。配信用に出入りを制限してるのかとも思ったがそういう訳ではなかったらしい⋯⋯うん、普通にリリちゃんとかいたしな。



「君のおかげで、あのダンジョンは『消滅』した。改めてありがとう、剣崎カモメ君」


「⋯⋯消滅?」



 反応したのはヒナだった。



「『ダンジョンが消滅する』という事象は聞いたことあるかな?」


「あります。でも⋯⋯その原因は未だ分かっていないはずですよね?」


「表向きにはね。実際には法則性がある」


「⋯⋯それって」


「君達の考えている通りだ」



 総理は淡々と告げた。



「──ダンジョンコアを討伐することで、ダンジョンは消滅する」



 彼は言葉を続けながら、ヒナから俺へと目線を移す。



「カモメ君は見たんじゃ⋯⋯あぁ、気絶していたんだったかな?」


「⋯⋯いえ、見ました」


「え?そうだったの?」



 驚いたようにこちらを振り返るヒナに対して、俺は頷き返す。


 言葉の通り、俺はあのダンジョンが消滅する様子を見ていた。


 ダンジョンの外に出たタイミングで、少しだけ意識が回復していた時間があったのだ⋯⋯またすぐに気絶してしまったが。


⋯⋯あの時、俺は──




──『産声を振り撒くもの』討伐直後、ダンジョンの外──




「──ん、ぅ⋯⋯ん⋯⋯?」


「お、新入り。目が覚めたか?」



 あの時、俺はちょうどダンジョンが崩壊する瞬間を目の当たりにした。



「⋯⋯え?ダンジョン、が⋯⋯」


「クーちゃん、寝てていいよ。まだ辛いでしょ?」


「はぁ?これを見逃すなんてありえないだろ?」



 柔らかく告げるヒマワリさんと対照的に、ねこまたさんは少し興奮している様子だった。


 いや、正確には⋯⋯



「⋯⋯見てくださいクーちゃん。これこそが、我々の正しさによる勝利の証明なんです」



 アレスさんも、明らかに興奮していた。



「ははっ、ざまぁみろっての⋯⋯っ!」


「⋯⋯あぁ、これで⋯⋯これこそ、正しい行い⋯⋯」



 ねこまたさんは明らかな敵意と悪意を宿した瞳で、アレスさんはどこか救いを求めるように崩れていくダンジョンを見つめていた。



「⋯⋯クーちゃん、やっぱ寝てなよ」


「⋯⋯⋯⋯」



 小声でこちらを気遣ってくれるヒマワリさんと、無言でダンジョンを見つめるオリヴィアさんは、あまりダンジョンに関心があるようには見えなかった。


 結局、ダンジョンは静かに崩れ、その土地はまるで最初から何事も無かったかのように辻褄が合わされるのだった。




──────────────────




「⋯⋯」



⋯⋯俺はあの時の、そんな彼らの様子がどこか印象に残ったのだ。



「⋯⋯あの、ダンジョン攻略組の皆さんは⋯⋯どうして⋯⋯」


「ん?⋯⋯あぁ」



 色々と悩みながら出力された疑問は、酷く曖昧なものとなってしまった。


 しかし、総理は笑顔を崩さずこちらの意図を汲み取ってくれる。



「彼らにも当然、ダンジョンを攻略する理由がある」


「理由⋯⋯」


「むしろ、理由もないのにダンジョンと関わる方が、よほど不合理だと思わないか?」


「⋯⋯それは⋯⋯」



⋯⋯それは、確かにその通りだろう。



「彼らもそれぞれに抱える思いがあり、結果として私に助力してくれているにすぎないんだよ」


「あのチームは総理が直接選定したと聞きました」


「あぁ、その通りだ⋯⋯本来はもう一人いたんだけどね」


「え?そうなんですか?」



 聞いたことのない話に声を上げると、総理は小さく肯定した。



「⋯⋯方向性が合わなくてね。彼女と道を違えてしまったのは、今でも惜しかったと思っている」


「⋯⋯」



⋯⋯案の定と言うか、そこまで惜しんでいるようには見えなかった。



「というか、ダンジョンコアの討伐が目的なら、どうして配信を?」


「あぁそれについては⋯⋯」



 未だ疑問は尽きず、俺は続けて質問する。



「あまり面白い話じゃないよ。お金のためだ」


「お金⋯⋯」



 総理は少し気恥しそうに答えてくれた。



「ダンジョンの問題に多くの予算を割くことについては、未だに反発が多いからね。できるかぎり自分達で資金を集めておきたいんだ」


「『冒険者制度』を始めとしたダンジョンに対する積極的な対応の数々も、あなたが若くして総理に抜擢された理由の一つだと聞いています」


「はは⋯⋯総理になってからも、大きくは動けていないのが現状だけどね」


「なんか、大変っすね⋯⋯」



⋯⋯ヒナと違って、俺はふわふわとした感想しか言えなかった。



「とにかく、ダンジョン攻略組がコンテンツとして配信を行っているのはそのためだ。資金関係は意外と厳しいんだよ」



 まぁたしかに、資金のためというのは納得の理由⋯⋯ん⋯⋯?



「⋯⋯あれ?でも前にねこまたさんが『経費でゲーム機くらいなら落とせる』って⋯⋯」


「⋯⋯」


「⋯⋯?」


「⋯⋯⋯⋯それについては、後で詳しく聞こう」


「あ゛」



 ごめん、ねこまたさん⋯⋯でも、経費でゲーム機を買うのは流石に──



「──きゃっ⋯⋯!?」


「⋯⋯え?」



 脳内でねこまたさんに懺悔していた俺は、小さく響いた悲鳴に隣を振り返った。



「あっ!?ご、ごめんヒナ!お茶が⋯⋯っ!」



 俺は仲間を売ってしまった動揺からか、手元のカップを倒してしまっていた。それは隣にいたヒナの服に思いっきりかかってしまっている。



「うわやべぇどうしよう!?このままだとヒナが紅茶の良い香りに⋯⋯っ!?」


「落ち着きなさいカモメ、大したことないから」



⋯⋯そしていつも通り、慌てる俺よりもヒナの方が冷静だった。



「動かないで、私が拭こう」


「あっそれは──」



 総理が素早くハンカチを取り出し、ヒナの手を取ろうと──



「──触らないで⋯⋯っ!!」


「──っ」



⋯⋯寸前、ヒナが鋭く叫んだ。



「私に、優しくしないで⋯⋯っ」


「え⋯⋯?」



 ヒナの言葉に総理は動きを止め、困ったようにその場で立ち尽くす。



「あっ⋯⋯」



 反射的に叫んだであろうヒナは、直ぐに自分の発言を自覚し目を見開いた。



「っ⋯⋯あのっ⋯⋯わ、わたしっ──」


「──ヒナは『男性恐怖症』なんです。すみませんでした、本人に悪気はありません」



 動揺した様子のヒナを制して、俺が釈明する。


⋯⋯⋯⋯俺のミスだ。事前に防げたことじゃないか⋯⋯そもそも俺がお茶を零さなければ⋯⋯



「そうか⋯⋯いや、私もすまなかった。気安く女性の身体に触れるなんて⋯⋯私も動揺していたみたいだ」



 幸い、総理は特に不快に思った様子も見せず明るく場を収めてくれた。すぐにハンカチを俺の方に手渡し、手際良くカップを処理してくれる。



「⋯⋯ヒナ、大丈夫か?」


「⋯⋯ごめんなさい、わたしっ⋯⋯」



 ヒナは明確に狼狽しており、謝罪を繰り返す。



「⋯⋯」



⋯⋯今の俺ならば、きっと彼女に触れることもできるのだろうが、しかしとてもそうしようとは思えなかった。




──────────────────




 片付けを終え、お互いがもう一度席に座り直す。



「⋯⋯総理、そろそろカモメの身体についての話を聞かせてくれませんか?」



 先程のことで申し訳なさそうにしながらも、ついにヒナが本題を切り出した。


⋯⋯正直なところ、ここまでの情報量がすごすぎて俺は目的を忘れかけていた⋯⋯ヒナがいてくれてよかった⋯⋯



「もちろんそのつもりだよ。まさに先程話したダンジョンコアこそ、カモメ君に起こった変化に関係しているんだ」


「⋯⋯どういうことですか?」



 総理は少し考えてから、俺をじっと見つめる。



「カモメ君、ダンジョンコアと対峙した時、どう感じたかな?」


「それは⋯⋯」



──既視感。


 あの時俺は、たしかな既視感を感じた。といっても、それはあいつ自身に対してじゃない。



「⋯⋯」



 ここ数日考え、俺は既に答えを出していた。



「俺は恐らく、ダンジョンコアという存在を見た事がある」


「⋯⋯え?」


「ふむ⋯⋯」



 ヒナは驚き、総理は表情を変えない。



「俺を女に変えたモンスター⋯⋯あいつは『ダンジョンコア』だ」



──他のモンスターとは明らかに違う『異質感』


 直感的な話ではあるが、しかしアレがダンジョンコアなのは間違いないだろう。



「ダンジョンコアは電子機器が起動していると出現しない。カモメ君はその時配信をしていなかったということかな?」


「はい、その通りです」



 より正確に言えば、元の俺は配信なんて一度もしたことがなかったが。


 しかし、ここで疑問となるのは⋯⋯



「──どうして俺は、女になったのか」



 あの時、俺は攻撃を食らい肩を貫かれた。


 そして、先日討伐したダンジョンコアは特殊な攻撃方法を用いていた。


 これらのことから、最も考えられる可能性は⋯⋯



「──『あれは攻撃の一種だった』⋯⋯これが俺の予想です」


「⋯⋯」



⋯⋯言いながらも、しかし俺はそこまで自信がある訳では無かった。


 あれが攻撃の一種だったとするならば、たしかに『ダンジョン内のものは持ち出せない』というルールには抵触しないだろう。呪いや魔法では無く『傷』という扱いならば、それはダンジョン内のものと定義されない可能性が高いからだ。



「⋯⋯」



──しかし、俺は攻撃を受けてすぐ女になった訳ではない。変化に気づいたのは翌日だった。


 戦闘中どころか、当日中にすら効果は出なかったのだ。


 ヤツが俺の動揺や、身体能力の低下を狙って俺を女にしたとするならば、これは攻撃として破綻している⋯⋯いや、ダンジョンコアに破綻とか言っても仕方ないのか⋯⋯?



「──その可能性もあるかもしれない」



 沈んでいた思考が、総理の迷いない声に引き上げられる。


 総理は俺の考えを否定こそしなかったが、恐らく彼には正解が分かっていて、それは俺の予想とは違うものだというのが言外に伝わってきた。



「だが私は他の可能性を提唱できる⋯⋯これはダンジョンコアの『特性』に関するものだ」


「特性⋯⋯?」


「⋯⋯ここからの内容は、口外しないでもらいたい」



──守秘義務。


⋯⋯総理に言われると、やはりプレッシャーがすごかった⋯⋯リリちゃんの喫煙なんか目じゃない重圧である。


 しかし、総理は言葉の割に声のボリュームを落とすこともなく、淡々と続けた。



「──ダンジョンコアは人の『願い』に反応するという性質を持つんだ」


「⋯⋯は?」



⋯⋯⋯⋯いや、え?



「反応って、どういう意味ですか⋯⋯?」


「共通しているのは願いを『欲する』ということだ。ただ知りたがる者もいれば、弄ぶ者もいる」



⋯⋯いや、いやいやいや⋯⋯



「もし、かして⋯⋯」



 いやそれだと、それだとさぁ⋯⋯っ



「⋯⋯あぁ、今君の考えている通りだ⋯⋯中には、願いを叶えることができる者も──」


「──ちょっと待ったあぁッ!!!」



 ヒナと総理の会話に、俺は持てる全てを込めた声量で待ったをかけた。



「ど、どうしたのカモメ⋯⋯?」


「カモメ君⋯⋯?」



 二人とも驚いた様子で俺を振り返るが、こちらはそれどころではない。



「⋯⋯それだと⋯⋯それだとさぁ⋯⋯っ」



 今の話の流れだと⋯⋯流れだとさぁ⋯⋯っ!



「──俺に女体化願望があったみたいになっちゃうだろうがあぁァッ!!!!」

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