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男に戻るためにTS姿でダンジョン配信するのは本末転倒か否か!?  作者: 赤石アクタ
第二章 コラボ配信編

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第十二話 初めての入院

「──へぇ?ダンジョンでそんなことがねぇ?」


「──痛い痛い痛い痛い!!!おま、ばかっ怪我人だぞイカれてんのかヒナぁッ!?!?」


「⋯⋯ははっ⋯⋯♡」


「何ちょっと興奮してんだお前!?」



 やはり俺の幼馴染はイカれている⋯⋯もはやサディストなんて言葉で片付けていいものではないだろう。


 病院のベッドで身動きが取れない俺の負傷部位を的確につんつんしていたヒナは、しばらく反応を楽しむと深いため息を吐いてから椅子へと腰掛けた。



「はぁ⋯⋯怪我しすぎ」


「⋯⋯ごめん」



──ダンジョン攻略組と共に『ダンジョンコア』を討伐したのが二日前。


 俺は丸一日気絶してから病院で一通りの検査を受け、今は入院という形でベッドに縛り付けられていた⋯⋯やはり美少女は儚い存在なのだろう。


 元の俺はホント馬鹿みたいに身体が強かったので、入院どころか怪我をしたことさえほとんど無かった⋯⋯怪我してもすぐ自然治癒したし。


 そのため、怪我で入院なんて経験は当然今回が初めて。最初は少しわくわくすらしていた。


 しかし⋯⋯



「身体、動かしたい⋯⋯」


「馬鹿なの?無茶言わないで」



⋯⋯そんな気分は半日も続かなかった。元来俺はアウトドア派なのだ。



「もう動ける気がするんだけどなぁ⋯⋯」


「なんて落ち着きのない幼馴染なのかしら」



 しかし実際、既にほとんど治療は済んでいたのだ。



「なんか俺が気絶してる間に『回復魔法』をかけてくれたらしい。だから直ぐに動けるようになるらしいんだけど⋯⋯」


「⋯⋯へぇ?」



 どうやらダンジョン攻略組には、そういった専門職の伝手があるらしい。流石は国が運営する配信者チームだ。


『回復魔法』とやらをこの目で見られなかったのは残念だったが、『絶対またお世話になるだろうから焦る必要は無い』とお見舞いに来てくれたダンジョン攻略組の面々も言っていたので、それを信じて次の機会を待つとしよう⋯⋯皆の顔がちょっと引き攣り気味だったのが気になったけど。


 そんなことをぼんやり考えていると、ヒナがじとりとこちらを見つめているのに気がついた。



「⋯⋯?ヒナ?」


「──『回復魔法』をかけられて今の状態ってことは、元はさらに酷かったってこと?」


「⋯⋯」


「⋯⋯」


「⋯⋯はは」


「ふふっ」


「ははははこらこらつつくのはやめなされ痛い痛い痛いごめんなさい!!」



 どうやらヒナは、俺が大怪我をして帰ってきたことでかなり怒っている様子だった⋯⋯まぁそりゃ怒るか。


 しかし、俺としては⋯⋯



「⋯⋯なぁ、ヒナ」


「⋯⋯なに?」


「ボスにトドメ刺したの、俺なんだぜ」


「⋯⋯はぁ」



 得意げな俺の言葉を受けたヒナは呆れたようにため息をついてから、優しく俺の額を小突いた。



「はいはい、頑張ったわね」


「っ⋯⋯ははっ、だろ?」



 ヒナにそう言ってもらえるだけで、『死にかけた甲斐があった』なんて思えてしまうのだった。



「とりあえず、何か食べた方がいいわ。林檎剥いてあげる」


「やったー!」



 ヒナは果物ナイフで器用に林檎の皮を剥いていき、それはあっという間に丸裸の林檎と、綺麗に繋がった一枚の皮へと分離した。



「相変わらず器用だな⋯⋯」


「まあね、ほら食え」


「──ぐえっ!?なぜ皮の方を⋯⋯!?」



 めちゃくちゃキレてるじゃねぇか⋯⋯っ




──────────────────




「──じゃあ私、そろそろ帰るわね。また明日来るから」


「あぁ、ありがとう」


「無茶するのはダメよ?早く身体を治さないと、『次のステップ』に進めないんだから」


「⋯⋯分かってる」



──『次のステップ』


 俺達は総理大臣から提示された『ダンジョン攻略』を果たした。


⋯⋯ボスに関してはどう考えても『事前に説明があってしかるべきだった』と今も思っているが、しかしそれも含めて俺達は『聞く権利』を手に入れたのだ。



──俺の身体に起きた変化を解き明かす。


 まだ何も終わってはいない。むしろようやくスタートラインだ。


 強い決意を持って、俺は幼馴染に頷いた。


⋯⋯それに、考えるべきことも多くある。



「──大丈夫?」


「⋯⋯え?」



 沈んでいた思考を、優しい声が引き裂く。


 慌てて振り向けば、ヒナがこちらを不安げに見つめていた。



「悩み⋯⋯というか、考え事をしているように見えるわ」


「──っ」



 あっさり内心を見透かされたことに、俺は驚いてしまった⋯⋯まさか特に隠してもないことを暴かれるなんて⋯⋯


 しかしそれは、ダンジョンで『誰かさん』に同じことをされた時とは打って変わって、柔らかな安心とこそばゆさを孕むものだった。



「⋯⋯そんなに分かりやすかったか?」


「いいえ。私だから気づいただけ」


「⋯⋯はは」



 確かに、ヒナがその気になれば、彼女に対して隠し事なんてできる訳がないか。


 既に帰り支度を済ませていたはずのヒナは再度俺のそばへと寄り、こちらの言葉を待ってくれている。


 俺は一瞬迷いながらも、結局ずっと考えていた不安をヒナに告げることにした。



「⋯⋯ヒナ」


「ん?」


「──俺のこと、死んだ方がいいって思ったこと、ある?」



⋯⋯彼女の顔を見ることは、できなかった。


 もし肯定されてしまったら、俺はいったいどうするのだろう。


──どう、なってしまうのだろうか。



「⋯⋯あんた、過激さを強さと勘違いしてるタイプの自己啓発本でも読んだの?」


「え?」



 やっとの思いで告げた不安はしかし、心底呆れた様子のヒナに一蹴されてしまった。



「はぁ、カモメはすぐそういうのに影響されるんだから⋯⋯」


「いや、そういうんじゃないけど⋯⋯」


「ないわよ」


「っ⋯⋯」



 ヒナは強く、はっきりと告げた。



「そんなの、考えたこともないわ」


「そっ、か⋯⋯」



──良かった。


 本当に良かったと、俺は思った。



「⋯⋯あんたはどうなの?」


「え?」



 安堵に浸るのも束の間、今度はヒナの方が不安そうに聞いてきた。しかしそれこそ杞憂というものだろう。



「いやいや、俺がヒナにそんなこと思うなんて、ありえないだろ?」


「そうじゃなくて、自分のこと」



 おどけた様子の俺に対して、ヒナは神妙に聞いてくる。



「⋯⋯ないよ」



 しかしやはり、俺の答えは変わらなかった。



「⋯⋯本当に?」


「ヒナがないなら、俺もない」


「⋯⋯そう」



⋯⋯あまり、真っ当な答えではないかもしれない。しかし、だからといって他の答えを提示できる訳でもなかった。



「⋯⋯⋯⋯」



──俺にとってはこれこそが、心からの本心なのだから。

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