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ノビシロファミリーと禁酒法の町  作者: 鳳凰取 真
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のびしろ25 サルートが盟友に?

サルート・ウォーカーはスコーンを腹の中に収め、ナプキンで口を拭った。


お土産を嬉しそうに食べてくれた彼女を見て、僕はホッとするとともに、こうやって人知れず好感度を上げるのだから彼女は彼女で兄に負けないぐらい人たらしなのではと思うのだった。


「とても…美味しかったです」


白い椅子に縮こまるように座って紅茶を飲む姿はリスのようで可愛らしい彼女は、小さい声で、けど聞こえる声でそう伝えてくれた。


「お口にあったようで何よりです」


彼女の照れた声音に釣られて自分も少し気恥ずかしくなり、頭の後ろを掻きながらお礼を返した。


「なぁんやこの雰囲気!? 合コンちがうで、お二人さん! ノビシロ君は早く芸を見せなさい。俺はまだ君のこと認めてないからね? 」


まったく、これっぽっちも本気には見えない。


「分かりました。芸ではないですけど、…ちょっとその前にいくつか質問をしてもいいですか。僕の力でサルートさんの中にあるどんな力が目覚めるかは僕も知らないので、アタリをつけたいんです」


「俺ら話せんことの方が多いで」


「その時は質問を変えます。サルートさん、僕の力【のびしろ】は普段貴女が頑張っていてもうまくいかないことを、上手く出来るようにお手伝いする力です。今どんなことを普段頑張っていらっしゃいますか? 」


「普段ですか? ……最近はお花や乗馬を少々」


「花に馬ですか…ふむ」


今までにも芸術方面の力に目覚めた人は大勢見てきた。彼女もそのパターンだろうか。


「オラシオンは彼女が普段頑張っているのはどんなことだと思いますか? 」


「サルートが普段頑張ってること…? ありすぎて何が伸びんのか分からんな。苦手なことやったらほら、あがり症治したいとかになんのかな」


「捉えようによって魅力なる部分は【のびしろ】の適用範囲外かな。この力はどんなに頑張ってもうまくいかない人に向けた、いわば救済措置みたいなものだから」


「魅力ってお前……ようわかっとるやん」


オラシオンは激しく首を縦に振って同意してきた。彼も彼女のあがり症をどうにかしたいとは思っていないようだ。


「ちょっと兄さん、話を逸らさないでください」


そして彼女もまた同様に、今の自分を受け入れているらしい。となると、いよいよ彼らは【のびしろ】を使わなくてもいい人たちということになる。今までにそんな人間が近くにいなかったから新鮮だけど、彼らは僕の手助けを必要としない人達だ。


「じゃあ…【のびしろ】を使うのは止めた方がいいかも知れないね。いつも頑張っていて、そんな自分を認められる人には僕の力は無用の長物だからね」


「そうは言ってもスーパーパワー手に入れるところ俺は見たいけどな。カスカも力に目覚めてからどえらい活動しとるみたいやし」


ソレはおそらくカスカの中に眠っていた行動力という部分が目覚めたからだろう。


どれだけ才能や能力があっても行動しなければ何も始まらない。


カスカは典型的に行動力のない人間だった。


ソレは彼との手紙のやり取りで彼から伝えられたことだ。


「じゃあこの言葉を覚えておいてほしい。『多く与えられた者は多く求められ、多く任せられた者は更に多く要求される』」


「深いな。なんか」


オラシオンは腕を組んで一人で納得しているようだった。多くを与えられた者というのは君のことだと言ってもきっと、彼は納得しないだろう。


そしてこれから多くを任されるのはサルート、彼女だ。彼女は力がある故に頼られることも多くなるだろう。


僕の力を受けた人間は例外なくそうなる運命にある。


「サルート、君は本当に力が必要? 」


「兄さんがそれを望むなら。私はそうありたいです」


兄の理想を叶えるために、自己の在り方を変えるというその心意気は気に入った。それがどんな心境なのかは知らないけれど、決意は揺るがないようだ。


「分かった。力を使おう」


両手を前に出して構える。手からいつものように光る粒子が見え始め、それが目に届くと相手の持つ成長の余地が、どれぐらいあるかが分かるようになる。


隣に立つオラシオンは当然、眩い光を放つ化け物ではあるのだけれど隣に座るサルートもまた強い光を放っていた。


神とは残酷で、下町にいる人々とは輝きからして違うのが一目で分かった。豊かな学習環境と精神を育む場所が用意されているせいなのか、彼らの成長限界は遥か高みにあるようだ。


「では行きます。……ハァ‼ 」


サルートに【のびしろ】を使うと、彼女はその光を受け入れた後、軽く目を閉じて口元に笑みを作った後、静かに目を開いた。


「もう終わり!? え、こう迫力ないなぁ……。もっと爆発とか体に変化とか分かりやすいヤツ」


「そういう人もいますけど。サルートは違ったんですよ。どうですかサルート。気分は? 」


彼女の顔を伺うと、サルートは鼻をスンスンさせて、


「私…鼻炎だったんですけど、鼻の通りが良くなったみたい…です」と言って鼻でわざとらしく空気を吸った。


信じられない。まさか鼻炎を治せる力があるなんて。


「ホンマか!? 凄い力やんけ……てなわけあるかーい」


同意見だ。【のびしろ】は鼻炎薬じゃない。


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