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ノビシロファミリーと禁酒法の町  作者: 鳳凰取 真
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のびしろ23 お茶会の準備2

リーンダート神父も僕の動きで察したのか、一緒にその場から動いてくれた。


少年達からはシカトされて、恋に恋する乙女達には恰好のマトにされる。悪い気はしないけど、本来ここに来たのは剣を受け取りのためだ。


目的を見失わないうちに、移動して早々に神父と稽古を始めなければ。


始めに神父は剣術を初歩から解説をしてくれた。


剣を振るリーンダート神父の腕にはそんな筋肉があるようには見えなかったけど、剣が風を切る音は剣士のそれで、剣術の心得は十分にあるようだ。


けれどリーンダート神父は一番初めに剣を置くように言った。剣術を習いに来たのに一番初めに剣を置くらしい。


「そう、剣術と言ってもまずは足運びから」


「剣術なのに剣握らないんだ……」


「なにをするにもまずは体の使い方から。全身を使って剣を振るんだ。やってみよう」


リーンダート神父の動きに合わせて同じ動きを模倣するような形で隣に立って動いた。剣を持たずに動作だけとなると、ダサいなぁ…と思いつつもとても大事と言われたので一生懸命真似をした。結局僕はその日、骨の剣を貰っただけで剣術については何も教えて貰えなかった。


ゴルフだって初めは下手なりに打たせてくれるのに、リーンダート神父は剣すら握らせてくれないので、僕はその日帰ってから我流で剣を振ることにした。


それから日が暮れるまで僕は剣を振ったけれど、結局縦に剣を振るよりも突きの方が絶対に効率が良いという結論にしかならなかった。


そして夜になって、いい加減一人で剣を振ることにも飽きてきた頃にシジュウが帰ってきた。


「なにしてんだ相棒…」


「お帰り。ちょっと剣の練習をね―――チャー・シュー・メーン……」


現在僕は剣術にもゴルフでいうところのビジネスゾーンがあるんじゃないかと探し中だった。


「ダンスじゃなくてか」


シジュウがニヤニヤしながら僕の剣の練習について文句を言ってきたので、僕は剣を彼に向けた。


「へぇ。やる? 」


「そういや相棒には見せてなかったっけな……悪いが、俺は剣もつええぞ」


そう言ってシジュウは胸元にぶら下げていた赤色の宝石が着いたクロスのアクセサリーを握ると、そのアクセサリーが赤い光を放ち大きな剣に変形した。


「…宝根(ウルズ)なのか? 」


「おうよ。ブラックマーケットで手に入れたのさ。ちと高かったけどな」


ブンッとシジュウがその大きな剣を振るたびに土煙が舞う。シジュウは泥棒だったり違法な運び屋だったり色々と友達と悪いことをしているようだけど、元々の本職は魔物退治だ。


貴族でもない彼がなぜ仕事として魔物退治をしているのかは分からないけれど、本職の持つ武器というのを間近で見せて貰ったのはコレが初めてのことだった。シジュウの宝根は大きな出刃包丁のようで、大きな魚でも一刀両断に出来そうな鋭利な刃を持っていた。


「それ絶対稽古用じゃないだろ」


「なぁに、何事も実践経験だぜ」


僕の骨の剣とシジュウの大きな出刃包丁では間違いなく、触れた瞬間にコチラの剣が砕け散り、僕の体からは血しぶきが舞う。


「…剣は止めておこう。いつも通り拳で」


「良いのか? せっかくだし剣も見てやるよ」


「でもシジュウのそれ我流なんじゃないの」


「おいおい馬鹿言うなよ。シジュウ流は実践の中で生まれた後に世界に轟く最強流派だぜ? その師範代がタダで見てやろうッてんだ。 遠慮する方が無礼な話、そうだろ? 」


「変な癖がつかないかな」


「はは。後で相棒がお礼に金渡してくる光景が目に浮かぶぜ~」


そうして僕はシジュウ流の門下生第一号となった。一体何を教えられるのかと思ったら、一番初めに教えられたのは柔軟運動からだった。


リーンダート神父といいシジュウといい僕に剣術を教える気があるのだろうか。そんなことを思いながらも僕は言われた通りに柔軟をした。そうして体がグニャングニャンになったところでシジュウがようやく剣の振り方を教えてくれた。


「剣に体を預けて、体の全部で圧し潰すんだ。いちっ、にっ、サァァァァアッァン!!! って感じ。やってみな」


そう言いつつシジュウは剣を前に構えた状態から振り上げて、体を剣の上に乗せるようにして刃を地面に叩きつけた。


するとバンッ、というおよそ剣を振っただけではならないような音が鳴り響いた。僕はそれで鞭を振った時になるパチンという音を思い出した。シジュウの出した音はそれらよりも重厚な音だったけれども、同じ原理でなっているような気がした。


鞭の原理と同じだと言うなら、剣先が音速を越えていることになるからソレはおかしい。僕はシジュウの武器を確認することにした。


「ちょっとその宝根の先端見せてくれない? 」


「おっ、相棒まさか一発で気づいたのか? すげえな」


シジュウの大剣の剣先をよく見ると、何やらふさふさとしている。このフサフサが音速を越えて音を出している正体なのだろう。確認する方法はないけれど、これ以外に説明がつかない。


「このフサフサは? 」


「詳しいことは全然知らねえ。けど元はこのウルズも軍の人間が使ってたらしいからな。相棒が知りたいことももしかしたら、軍人が知ってるかも」


宝根を使っているんじゃまったく手本にならないじゃないかと思いつつ、見様見真似でその後もシジュウとの特訓は続いた。


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