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ノビシロファミリーと禁酒法の町  作者: 鳳凰取 真
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のびしろ2 生涯の相棒来たる!盟友シジュウ登場!

異世界から転生した青年の野比白。

いまだに鏡を持たない彼は、助けたナザリス族の青年から種族を問われる。

フォーリンが言うには自分は長命族という種族らしい…。


「僕は野比白(のびしろ)。シロって呼んでくれ」


「あぁ分かった、ノビシロか。変な名前だな。俺はシジュウってんだ。よろしくな。さぁて。人間族(ヒューマリス)共をぶっ殺しに行くぞ。……ところでお前見たことない見た目だな。どこの種族だ? 」


おまえも僕のことをノビシロって繋げて呼ぶんだな……まぁ良いけどさ。それとシジュウに言われて、僕は初めて自分が人の姿ではないことを知った。


転生は人間から人間にするものなんじゃないらしい。今の僕ってどんな見た目なんだろうか。すると、フォーリンが耳の傍によって囁いてくれる。


「貴方の種族は、長命族(トゥーサン)よ。特徴はピンの伸びた耳に長生きなこと」


耳を触ると、耳毛というには少しフサフサし過ぎている長い耳の感触がある。


目を限界まで左に向けると、辛うじて耳の先を見ることが出来た。


長命族(トゥーサン)だ」


「あぁ、森の奥に住んでるっていう……。ハハッ、高慢でいけ好かない奴らとばかり思ってたけど、お前みたいな長命族(トゥーサン)もいるってことか」


長命族(トゥーサン)はあまり世間ではいい評価を貰っていない種族のようだ。高慢って。


「それとよぉ、さっきからウロチョロしてるそいつはなんだ。妖精? 」


大きなフサフサの手でシジュウはフォーリンを掴もうとすると、フォーリンはその手からするりと抜けて、少しムッとした表情で教えた。


「私はフォーリン。この人の付き人よ。彼がアナタを助けたいって言うからついてきたの」


フォーリンに続いて僕も人間は殺さないことを伝えた。


揉め事に顔を突っ込んでしまったんだ。これ以上事態をこじらせる必要はない。


「次いでに言うと、人間族(ヒューマリス)も殺さない」


「なんだよ。……つぅか、変だぜ。じゃあなんで見ず知らずの俺なんかを助けたんだ? 」


シジュウが真剣な眼差しで僕に聞いた。はじめは別に特別な理由はなかった。


でもこうして不思議な縁が生まれた以上、ここで終わってしまうのは少し寂しい気もした。だから僕はこういった。


「助けたかったんだ。辛かっただろ」


すると、シジュウは少し俯いて低い声で唸るようなため息をつくと顔を上げた。


「じゃあ、なんだ。……お人よしってことでいいか」


「そう受け取って貰って構わない」


「あそう。そんで? お前この帝都じゃ見かけねぇ顔だけど旅でもしてんのか」


僕は困ってフォーリンを見る。


転生者という素性を話してもいいいいけど、信じて貰えるような話し方が出来る気がしなかった。


すると、彼女は僕の前にでて代わりにシジュウに説明をしてくれた。


「えーと、ノビシロは旅人なの。でも通行証とか諸々この町に入った途端鳥に持っていかれちゃって……手持ちも少ししか持っていないの」


手持ちは銀貨三十枚。


先に僕の名誉のために言うけど、誰を裏切って手に入れたわけではない。


「へぇ……ならよぉ、俺のアジトにくるか? ま、汚いけどな」


「いいの?」


ホームレスと一緒に路上生活をすることになるかと思った矢先に、意外な巡り合わせで宿を確保することに成功した。


「え、マジでくんのか? ……変わりものだなぁ、お前。じゃあついて来いよ」


リカメア帝国のコハギアという城下町に僕はいるらしく、僕のいた噴水広場というのはコハギアではかなり有名な場所らしい。


どういう意味で有名かというと、あそこでは毎週日曜日の朝の鐘が鳴る頃に死刑囚の処刑が行わる場所とのことだ。


本当は異世界などではないのでは、と思っている僕の想像を異世界は軽く越えてくる。毎週死刑が行えるほど罪人が多いのもそうだけど、毎週日曜日に子供の起きている時間に死刑をするなんてどんな理由があるのかと思った。


「あ? 死刑になる理由だぁ? 言ったもんがち……つぅのはさすがに言い過ぎだけどよ。だいたいこの町じゃあ偉いヤツが死刑って言ったら死刑になるぞ」


すげえな異世界。


ただ生きているだけで裁判所も拘置状も飛ばして「はい、死刑。即絞首、即斬首」があり得る世界ということだろう。この世界の人たちはよく生きていられるな。


「あ、それとアレだよ、アレ。勝手にビール作っちゃダメなんだ」


「ビール? 」


「あぁ。確か『禁酒法』だとか言ってたな。それ破ったら、一発死刑だ。ま、俺達には関係ねぇ話だがよ」


そんな話をしていると、シジュウは大きな穴の前で止まった。


穴には鉄格子の扉が付けられており、恐らくこの先は公的な場所なのだと察しがつく。


シジュウが公人のようには見えない。


となると不法侵入なのではないかと思われる。


「ようこそ、我がアジトへ。歓迎するぜ」


キィと音を立てて鉄格子の扉を開いた。鍵穴はあるがどうやら錆びれていて機能していないようだ。


「お邪魔します」


奥は真っ暗で何も見えない。


ただたまに、ネズミやコウモリの鳴き声が聞こえてきた。


こんな場所に住まなければならないほど今の彼が切羽詰まった状態なのだと思わされる。


そうしてそんな暗闇の中、シジュウの後を追って下水道の中を歩いていくとシジュウが突然立ち止まった。


そして何も見えない暗闇の中、シジュウは右に曲がった。


長い一本道だと思われた下水道には横道があったのだ。


そして、また少し歩くと顔に布が当たった。どうやら天幕に顔を当てたようだった。


シジュウは天幕をくぐるようにコチラに言うと、天上に吊るしてあったランタンに灯りをともした。


ランタンの光が天幕全体を暖かなオレンジ色の光で照らす。


床にはボロボロの布が何枚か地面がみえないように引かれていた。


「ハハハッ、どうよ。好きなだけ居てくれて良いぜ。暖かい布にランタンの光付きだ」


ボロボロの布の上に寝転がってシジュウはそう笑った。


「いい拠点じゃない! ここならしばらく活動拠点に出来そうね! 」


フォーリンはフォーリンで遠慮がない。


「さぁ、じゃあ早速シジュウが【のびしろ】で手に入れた新しい力を確認しましょ! 」

次回はシジュウが【のびしろ】で手に入れた力をステータスと共に見ていこう。

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