エピソード④
(核体の解放……だと?)
静也は先程聞こえた少女の声を思い出していた。
(まさか……核体とは……)
――人間?
その答えが脳裏によぎった時、草薙の行動……様子、全てが繋がった気がした。
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なんとか撤退し、拠点に戻った第六部隊の面々の表情は暗い。
先程の彼ら……謎の敵対勢力の言葉に、皆動揺していたのだ。
それは特曹長である珱栖も例外ではなかったようだ。
現在、部隊員は全員格納庫におり、そこで自然と集まり各自の機体を見つめていた。
「まさか……核体が……? だとしたら我々は……」
珱栖が珍しく小さな声を漏らす。それはそうだろう。
まさか、自分達が乗っている機体のエネルギー源が人間だったなんて、想像できた者等いない。それに、確証もない。
「特曹長、発言許可を」
口を開いたのは紀也だ。彼の表情もまた暗く、少し青ざめている。
「許可しよう、皇一等特士」
「もし……もしなんですが、核体が……自分達の想像している存在だとしたら、その、草薙は……」
言いよどむ彼の言葉を遮ったのは比美子だった。彼女は静かな口調で俯きながら話を始めた。
「例えそうだとしても……奴の犯した罪は変わらないさね。そうでしょう? 特曹長」
「あぁ……やる事は変わらん。だが……草薙を早急に我々で見つけ出さなければならん理由が増えた」
浮かない顔の第六部隊の全員の様子を、整備士達が複雑そうな表情で見つめていた。
(彼らは……核体について知っているのだろうか?)
疑問は尽きない。だが、任務は任務だ。
やるべき事、そして……問いたださなければならない事を確認した五人は、その場で解散し、各自部屋へと戻り休息を取る事にした。
それから数日後の事だった。
紀也の様子がおかしいと、入電があり……そして彼が機体と共に消息を絶ったのは。
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紀也の一件が拍車をかけたのか……それとも他に要因があったのか。
トクセンから次々と、いや、各国の部隊から離反者が次々と出始めた。
彼らは共通して、様子がおかしくなったという情報が入っている。
これに焦り出したのは各国の上層部……そして、核体の開発者である天埜輝門だった。
天才学者として名を馳せ、国民栄誉賞等数々の功績を得た彼は今、核体製造工場内で身体を震わせていた。
「何故バレた……? 完璧だったはずだ……私の研究も、成果も! なのに何故! 何故このような事態に!」
彼の目前には、白銀の髪をした十代半ばの同じ顔をした少女達が培養液の中に浮かんでいる。
彼女達こそ、新たなエネルギー源……核体だ。
元々は、アルビノのとある少女を保護したのがきっかけだった。その少女は生命力が弱く……それを伸ばそうとして、その副産物で造られたのが、彼女を基にした人造人間、クローン体の生命力を使用した人型機動兵器だ。
元来、戦争において兵士の負傷率が課題であると考えていた天埜は、人型機動兵器の開発に熱心だった。
その結果、行きついたのが非人道的行為であったとしても――彼は、彼なりに憂いていたのだ。
世界が、地球が、人々が傷つくこの世の中を……。