表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

エピソード③

 その後も、第六部隊総出での捜索が行われたが、有力な手がかりは未だなく。

 時間だけが過ぎて行き、また他部隊の状況も相まって、困難を極めていた。

 戦況の激化である。

 元々、トクセンの任務は中東圏における過激派組織の鎮圧が主であった。

 だが、そこに来ての草薙の一件は、上層部においても捨て置くわけには行かない事態である。

 故に……。


 ****


(くそ……!)


 与えられた自室にて、静也は洗面台の前にいた。ややグレーかかった短髪と、目の下のクマが視界に入る。

 だが、そんな事は今の彼にはどうでも良かった。


「何故……何もつかめない? 草薙、お前はどこへ行った?」


 焦る気持ちがどうしても抑えきれない。もしかしたら草薙は、既に中東圏から離脱し……どこかであざ笑っているのかもしれない。

 そう考えるだけで、静也の怒りがどんどん大きくなる。

 自分だけ生き残った悔しさ、仲間の無念、そして……裏切られた衝撃。

 

(赦すわけには、行かないんだ……!)


 怒りのぶつけどころを求め、許可を得て置かせてもらったサンドバッグを殴りつけた。何度も何度も。

 そうしていた時、スピーカーからアナウンスが入った。


『第六部隊、コールサインクロウ603より入電! 哨戒中に敵勢力と遭遇! 二機では対応不可との事! 至急、第六部隊員は応援に向かうようにとの指令!』


 静也個人の想いで言えば、哨戒での敵勢力との交戦等どうでもよかった。だが、自衛隊に所属する者として……任務を放棄するわけにもいかない。

 なるべく速足で格納庫に向かうと、静也は自身の機体に乗り込んだ。

 コックピットに座り、起動したその時……ふと、草薙への違和感を覚えた日の事が脳裏にフラッシュバックする。


(なんだ? 俺は何故今、そんな事を?)


《わたしの、こえが、きこえて、るの?》


「なっ!?」


 どこからか聞こえて来た、少女のか細い声に驚く静也だが、その声は気にする事なく話を続ける。


《うれしい、な。しずや、も……わたしに、きづいて、くれたの、ね?》


(俺も……だと!? どういう、事だ……?)


 問いただそうとしたが、通信が入って遮られてしまった。通信主はクロウ601……珱栖からだった。


『各機、準備はいいな? 急いで救援に向かうぞ!』


 承知した旨を伝えると、それぞれ格納庫から射出された。目指すは602と603……ノヲンと紀也の救出だ。


 ****


 救援に向かうと、二機の装甲には数多の傷がついていた。

 そして……敵勢力を確認して……静也は驚いた。

 彼らが使っていたのは、()()の戦車や戦闘機、そして砲台だったのだ。

 時代遅れの武装だ。そもそも、敵対勢力も同じように核体を使用した機動兵器に乗っているはず。


(彼らは何者だ? 何故こんな事を?)


 疑問に思っていたのは、静也だけではない。他の隊員達も同じだった。

 しかも、タチが悪い事に彼らは機動兵器の弱点を突いてきている。それ故の救援要請だったのだと気づいた静也は、隊長である珱栖に通信で尋ねる。


「どうなさいますか? 想定していた敵勢力とは別のようですが」


『これは……撤退を命じる! 各員、聞こえているな? 撤退だ!』


 想定外の敵勢力への攻撃は、任務に含まれていない。上層部に指示と対応を仰がなければ動けないのが自衛隊なのだ。撤退するべく、破損している二機をワイヤーで繋ぎ、引きずって撤退しようとしたその時だった。


『核体を解放せよ! 非人道的な蛮族共よ!』


 謎の敵対勢力が、どういう手段か通信に割り込み、そう声を荒げて告げたのだ――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ